ショタイザシズ | ナノ







このマンションに引っ越してきたのは父親の仕事関係で。
丁度行きたかった高校と近かった為了承したのだ。
お隣に挨拶に行けば左側の人は老夫婦。
右側に住んでいるのは折原さんといううちの親よりは少し若い夫婦と1人の子供。
その子供の名前は臨也と言うらしい。
このあたりには子供が居なくていつも一人で遊んでるから
たまには遊んでやってくれといわれた。
そう言われても自分は高校一年で俺よりも弟の幽(中2)の方が少しばかり近いのでは?と思ったのだ。
しかし何故か学校から帰ればマンションの下に臨也が居て俺を見れば走って寄ってくる。

「シズちゃんおかえり!!」
「ただいま」

その笑顔はとても可愛らしい。
これといって何もしていないのだが幽より俺に懐いた。
寧ろ幽に対しては少し敵対心的なものが見えるのが謎である。
彼の両親は共働きで二人とも帰ってくるのが遅い事が多い。
それ故俺の家でご飯を食べたりする事が多かった。
一人増えたくらいどうって事ないわ、と母が笑う。
時には俺が臨也の家でご飯を作ってやる事もあった。
チャーハンくらいしか出来なかったがそれでもおいしいと言って食べてくれるので嬉しかったのも事実。
もっといろんな種類の料理を覚えようと思える程に嬉しかったのだ。


そんな日々が続いて半年経ったころにある事件が起きた。
それはいつも通りの学校帰りで少し寒くなっていた以外は変わりなかった。
いつも通りの臨也のおかえり!に俺も笑顔でただいまと答えた。
そこまではいつもと同じだった。
急に指を掴まれてコッチにきてほしい!といつもの笑顔で言われたら嫌だとも言えずについていく。
そこはマンションの敷地内にある小さな公園で
滑り台とブランコと馬の形をしたスプリング遊具2つがあるだけだ。
夕方前だというのに子供一人居ない寂しい公園である。

「しずちゃんブランコにすわってよ!」
「あ?…ああ」

言われるままにブランコに腰をおろし目の前に居る臨也を見る。
ブランコに座ったからと言っても身長の差は同じくらいにしかならなかった。

「あのね…シズちゃんおれね」

もじもじと身体を揺らす臨也を見て様子がおかしい。
なんだ?トイレか?と言おうとすれば両肩を掴まれた。
その顔は真剣で、そして少し赤くなっていた。
でもそれは夕焼けのせいだと思ったのだが、どうやらそれだけではないのだと思い知らされる。

「あのねシズちゃん!!おれ!おれ!!」
「どうした?イザヤ少し落ち着けよ」
「おちつくからめつぶって?」
「あーわかった」

ゆっくりと目蓋を閉じたら肩に置かれていた手に力が入ったのが解った。
いつまで閉じてたらいいのかと聞こうと口をあけようとしたら
むにり…と唇に何かが当たった。
驚き目蓋を上げればそこには視界いっぱいの臨也の顔が。
そのまま固まっていれば臨也が離れていき、やっぱりもじもじしながら俺に告げる。

「おれシズちゃんのこと愛しちゃったんだ!!だからおおきくなったらけっこんしようね!!」

じゃ!と手をあげて軽快にスキップしながら帰っていく。
それを見ながらどんどん顔に熱が上がってくるのが解り顔を伏せた。

「チクショー…あの糞餓鬼がぁ…」

顔の熱が引けばなんとか立ち上がり早く公園から立ち去ろうと元来た道を歩く。
視線を感じて見上げればそこは俺の部屋の隣からで
ヒラヒラと手を振る臨也がいた。
また顔に熱が集まるのがわかる。
ちくしょうちくしょう!と睨み付ければ、それに怯んだ様子もなく投げキスなんてものを飛ばしてきた。
…これがただの勘違いであればいいのにと思う。
家に帰りすぐに唇をゴシゴシと擦り口の中も濯ぐ。
冷蔵庫からしずお!と書かれた牛乳を取り出しパックのまま飲んでいたら母親に話かけられた。
それは真剣な声をしていたので母親が座っていたソファーの前にまで行き、話しを聞いたのだが
それが間違いだった。


「ねぇ静雄、貴方…臨也くんと一緒に住んでみない?」


誰か嘘だと言ってくれ。
俺が何をした。
嗚呼視界が揺らぐ何も見えない。
母親の声が遠のく。


俺はそのまま意識を手放したのだ。





いっしょにくらしましょ!





おれしずちゃんとくらすからママたちはきにしないでかいがいにでも行っておいでよ!
しずちゃんがいるからさみしくないよ!














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