その他 | ナノ






喜ぶと思うんだ。
君が嬉しいのなら、俺も嬉しくなるよ。





お菓子が貰える日なのー!と元気に叫んでいるあれはサイケだ。
何か勘違いしているに違いないが、それを正す元気もなかった。
あいつの悪戯なんてものは多分この世の終わりに近い物があるんじゃないかと俺は思う。
自分なりに一生懸命菓子を作る。
でも自分が作る菓子は和系で、気がつけば餅をついていた。
餅で許してもらえるのだろうか。
多分嫌いじゃないと思う。
だってあいつは雪見大福が旨かった!と頬を緩めていたから、餅自体は平気なのだと思う。
しかし、餅オンリーじゃなかった。
餅の中にアイスが入っているのだ。
アイスを作るにはかなりの時間が掛かったような気がする。
却下だ。
餅、餅だからもう和菓子系で行くしかない。
アンコは平気なのだろうか?平気だったら御汁粉とかでもいいと思う。
ダメだったら…そう考えると震えてしまう。
俺は大好きだ。
何か他に良いものを。餅を捏ねながら頭を働かす。
何か、何かいいものは無いのか。
あ、そうだ。臨也に聞いてみよう。


「臨也、サイケの好みの物はなんだ。餅で」
「え?餅限定なの?」
「ああ。俺が作れる菓子系のものが餅しかなくてな」
「…ふぅん。餅か…餅…黄粉餅とかどうかな?あれならきっとあいつも食べれるんじゃない?」
「黄粉餅…か。よし、それだ。助かった」


邪魔したな。と電話を切る。
とりあえず、サイケが来るまでにはまだ時間がある。
近場のスーパーで黄粉を買おう。
砂糖大目に入れれば甘くなるはずだ。
あ、ついでにアイスも買っておこう。
不味かったらこちらを食わせればいい。
あ、ついでに、あれも、これも。と手にして家に帰った。


「津軽ーなんか御餅があったから食べちゃったけどいいよね?」


ただいま。の言葉を言う前に聞きなれた声がした。


「サ、イケ?」
「うん。サイケだよー」


部屋の中へ入って姿を確認すれば、やっぱりサイケで。
まだ時間には余裕があったはずなのに。と驚く。


「なんで?」
「だって寂しかったから」
「そうか」
「あのね、オレ御餅食べるのは醤油と砂糖で食べるのが一番好きだよ」
「…あ、そうだったのか。じゃあ黄粉は要らないよな」
「黄粉も好き!!」
「ん。良かった」


ニコニコとしながら自分が作った餅を体内に納めていく姿を見たら、どうでも良くなった。
黄粉を別の皿へ入れて、サイケへ渡す。
有難う。とニコニコしながら受け取るサイケに自分までニコリと微笑んでしまう。
サイケの前の席に座り自分も餅を食べる。
醤油砂糖も黄粉も美味しいな。と思いながら口へ運んでいたら、口周りが黄粉塗れのサイケが口を開いた。


「あのね、津軽。おかしいらないからイタズラさせて?」


一瞬期間が止まったかと思った。
何を言っているのか解らず、菓子ならいっぱい買ってきた!と主張をする。


「お菓子も美味しいけど、オレが一番甘くて美味しいって思うのは津軽なんだよ」


ねえ、良いよね?なんて可愛らしい顔で有無も言わさぬオーラを纏うのは止めて欲しい。
お前のその笑顔に逆らえる訳がないのだから。
君が幸せだと言うのなら俺も幸せだよ。
差し出すのは自分なのだ。
それも悪くないかと目蓋を閉じた。






「召し上がれ」






津軽は甘いね
そうか
津軽がいれば何もいらないや
……
津軽、ねぇ津軽
どうした?
津軽、大好き
ああ、俺もだよ







- ナノ -