サイツガ | ナノ





「つがちゃんつがちゃんつがちゃんつがちゃんつがちゃんつがちゃんつがちゃんつがちゃんすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすき」


彼から零れ落ちる言葉は麻薬のように甘く苦い。
彼は隣に座っている金髪で和服に身を包んだ男の肩にこてりと頭を傾け零し続けた。
どれもこれも彼の言葉は彼が愛してやまない彼にしか発っさない愛の言葉。
見知らぬ者が聞けば異様な呪いの言葉であろう。
それでも気にすることなく金髪の彼はキセルを口元に運び、軽く息を吸い、白い煙を吐き出す。


先程から愛の言葉を吐き出している彼、サイケの目には世界はとてもカラフルで痛いくらいの色をしていた。
例えばシマウマならばピンクとオレンジだったり、ビルや街並みは12色では言い合わすことが出来ないくらいの色で出来ていた。勿論人間もとてもカラフルであった。
その中で2人だけ違う奴が居た。
一人は今隣で座っている彼、津軽である。
彼だけはちゃんとした色で認識できたのだ。
後もう一人はサイケ本人と良く似た奴が居るらしいのだがそいつだけは真っ黒で認識が出来ないのである。音声も何を言っているのか解らず宇宙人と出会ったらこんな感じなんだろうなぁ…と会う度にサイケは思うのだ。
真っ黒で見えないのになんで自分と同じ形なのか解るのかと問われれば、彼の隣にいる津軽には普通に見えているからである。
サイケの世界に黒が入るのは自分そっくりな人間1人と自分の髪くらいだ。
それ以外はとてもカラフルで目に悪い色をしている世界なのである。

「つがちゃんすきあいしてるつがちゃんがいればおれはなにもいらないよ」


彼にとって津軽は唯一の自分と同じ肌の色に近いモノを持ち、嫌がらずに全てを受け入れてくれる存在なのだ。


「つがちゃんがいうならおれはいのちすらすてられるんだ…だからいらなくなったらいってね?おれはきえるよ」


ぎゅっと津軽の腕に抱き付き俯く。
ことりととキセルを置き、その手でサイケの頭を優しく撫で言葉を落とす。



「俺は手前が居なけりゃあ生きていけねぇからよ…手前も俺が要らなくなったら言ってくれ…死ぬから」


その言葉を聞いた彼は驚いたように顔を上げ、腕ではなく胸へと飛びつき背に手を回す。
それに答えるかのように彼、津軽もサイケの背に手回したのである。




「津軽がいるだけで世界はこんなにも美しい」



顔を上げ津軽の唇に軽く口付けを落とす。
それを抵抗もなく受け入れれば何度も何度も軽い口付けをされ、口が離れた僅かな瞬間にあの甘くて苦い麻薬のような言葉を零す。

それは拾い集めるのが困難な程の量を尽きることなく零し落とすのだ。



世界は美しい


かれがいるだけでおれもふつうだとおもえるの







- ナノ -