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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -
「おお〜!!!」

『すごい…本物の金だ……』


三日間続いた宴を終えた翌朝、「黄金を取りに行くぞ!!」と言ったルフィの言葉に目を輝かせた皆が向かったのは、なんと大きな蛇の口の中。さすがに蛇の体内へと入る度胸のない私と、ダイアルを手に入れたいウソップ、遺跡を見て回りたいというロビンさん。そして、一応見張りにと残ったゾロさん以外の面々が中に入って戻ってきた時、持っていた白い布の袋にパンパンに詰め込まれていたのは、美しく輝く本物の黄金だ。


『すごい…』

「だろ!?見つけてきてやるって言ったもんな!!」


ほれ!と黄金を見せてくるルフィ。そんな彼につい笑っていると、「逃げる準備をしましょう」というナミの声におう!とみんなが頷き返す。


「私と…あと名前は先に船に戻って船を出せるように準備しておくから、ロビンが来たら戻ってきてよね」

「はァい!ナミさん!!」


「行きましょう、名前」とナミとともに歩き出せば、「気をつけろよー!」とチョッパーに声をかけられる。それに手を振りつつナミの隣に並ぶと、目を輝かせたナミが明るい声を出す。


「んふふふふっ!あれだけの黄金があれば、私達もついに貧乏旅から抜け出せるわ…!!」


嬉しそうな彼女につい笑ってしまう。「良かったね」と声を掛けた私に、「ええ!」と頷いたナミ。けれど、ふと何かに気づいてように視線を私の頭へと向けたナミは申し訳なさそうに目を細めた。


「…怪我、痛むんじゃない?」

『え…?…あ……ううん、今は平気。チョッパーが痛み止めもくれてるから、』

「そう……ごめんね、あの時、助けることが出来なくて」


謝る彼女に首を振る。
サンジさんもナミも、どうしてこんなに優しいのだろう。でも!と言いたげに顔を上げたナミに、柔らかく笑んでみせれば、少しだけ驚いたように目を丸くした彼女が、足を止める。


『ありがとう、ナミ』

「え、」

『ルフィには伝えたんだけど……まだ、他のみんなには言ってなかったなって。…私を、こんなに素敵な場所に連れてきてくれて、不思議で、怖くて、でもとっても楽しい冒険を見せてくれて、本当に…ありがとう』


笑ってそう言った私に、ナミの瞳が泣きそうに揺れる。きゅっと唇を引き結んで、落ちそうになった涙を堪えたナミは、次の瞬間、眩しいくらいの笑みで「どういたしまして!」と笑ってくれた。

それから、コニスさんの待つ船に着き、ナミの手伝いをしながら、なんとか船を出す準備を終え、みんなを待っていると、「おーい!!!」とルフィたちが揃って走って来たことに気づく。そんな彼らの後ろには、なぜか空島の人達がいて、追いかけるようにやってくる彼らに首をかしげていると、乗り込んできたルフィが「逃げるぞ!!」とナミに声をかけた。


「ちょっと!!なんで追われてるのよ!?」

「黄金奪ってるやつ見つけたら、そりゃ追うだろ」

「そういう事じゃない!!!ったくもー…さあ!船を出すわよ!!!」


ナミの号令で動き出した船。「下に向かって全速前進だ!!!」と声を上げるルフィはいつの間にか船首の上へ。ほんとに目まぐるしい人達だと笑っていると、パラリラパラリラとラッパの音をさせて隣を走る船からコニスさんが声をあげる。


「まずは下層の“白海”に出ます!」

「おう」


彼女とパガヤさんの案内に従い、白海に出たメリー号。追っ手が見えなくなると、「黄金!!」「黄金!!」「黄金!!」と騒ぎ出したみんなは、美しく輝く宝の山にそれぞれの欲しい物を思い浮かべている。


「ちょっと、待って待ってあんた達。お宝の山分けは、まずここを降りてからよ!あんたらの好き放題買い物したら何も身にならなそう…」


「本を買ってください!」と寄ってきたチョッパーの頬を抑えながらそう言ったナミ。宴が終わっても賑やかなだなあと感心していると、「みなさん!前方をご覧下さい!見えました!」というコニスさんの声に全員で前を向く。


「“雲の果て(クラウド・エンド)”です!」

「へー!あそこから降りられるのかーっ!!」


見えてきたのは、来た時にみた門と同じような作りの出口。「降りちまうのかー、俺たち」と残念そうに零すルフィに、「いざ降りるとなると…確かに名残り惜しいな」とサンジさんが白い海を見渡す。

最初で最後の冒険の景色を目に焼き付けようと、白い海を見つめていると、クラウド・エンドの入口をくぐり抜けたメリー号を、船を降りたコニスさんとパガヤさんが走って追いかけてくる。
「帆をたたんで船体にしがみついてください!!」というパガヤさんの指示に従い、みんなが帆を畳んでいると、そこへやってきた一羽のサウスバード。どうやら置いていこうとしていたら彼らに、「おれを忘れるな」と怒っているらしい。


「さて…キャプテン、次の島へのログもバッチリ!!」

「んんそうだ!!ここを降りたらまた、新しい冒険が!!!始まるんだ!!!


野郎ども、そんじゃあ………!!


青海へ、帰るぞォ!!!」

「「「「「おお!!!」」」」」


船長の声に、一味の声が上がったその時、


「みなさん!落下中お気をつけて!!」

「……落下中??」


コニスさんの言葉に首をかしげたその瞬間、不意に身体を包んだ浮遊感。目を丸くしたときには、すでに、船は下へ。


『え、ええええええええええ!!?』

「ぎゃああああああああああああぁぁぁ!!!」


重力に従って落ちていくメリー号。突然の落下に全員が悲鳴をあげる中、バフっ!!という音ともに雲から現れた巨大なタコ。八本の足でメリー号を捕らえてきたタコにゾロさんが刀を抜こうとしたのだけれど、


「おいみろ、すげーぞコレ!!」


ルフィの声に皆が船の外へ視線を向ける。
どうして急に減速を。着地でうった膝を擦りながら立ち上がれば、船を覆うように足を伸ばしているタコに気づき目を見張った。


『なにこれ……バルーンみたい……』

「な!な!すげーだろ!!?」


船が減速したのは、どうやらタコのおかげらしい。頭を風船のように膨らませたタコ。彼のおかげで7000メートルの落下を防ぐことが出来たのだ。ありがとう、タコさんと内心でお礼を言いながら、タコを見上げていると、ふと鼓膜を揺らした美しい音、これは。


カラァーン カラァーン カラァーン


空に鳴り響く美しい鐘の音。まるでこの船を見送るかのように響き渡るその音に、全員が声もなく空を見上げる。


「…やっぱり綺麗ね…」

『はい…』


零されたロビンさんの声に思わず頷き返して目を合わせると、ロビンさんはとても嬉しそうに笑ってくれたのだった。
空島 25

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