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- ナノ -
「ウソップ!!サンジ君!!名前!!!」

「その声はナミ!無事だったみてェだな、一安心だ」

「名前とサンジくんは無事なの!?」


駆け寄ってきたナミが心配そうに尋ねてくる。「二人とも生きてるぞ!!」と返したおれに、ナミがほっと息を吐いた。

ナミと名前ともにウェイバーで脱出しようとした時、まさか名前ウェイバーから飛び降りるなんて思いもしなかった。俺やナミよりも臆病で、戦いや人が傷つくことに慣れていない名前。そんな彼女は、ウェイバーから降りると、一直線に敵の攻撃を受けようとしているサンジの元へ駆け寄ったのだ。
ナミと名前を助けるために、命を張ろうとしたサンジのためにも、名前を連れ戻したかった。けれど、ここでウェイバーを止めては、今度はナミまで危険な目に遭わせてしまうと思った俺は、ウェイバーのアクセルを緩めることができなかった。
ナミが島雲に落ちていくのを確認しながら、ウソップアーアアーを使い、エネルが居なくなったのを見計らって倒れる二人の元へ駆け寄ると、庇うように名前を抱き締めるサンジがいて、二人とも意識はない。とにかく二人を連れて逃げなければと、なんとか二人を抱えて飛び降りると、運良く島雲に落ちたことに深い息を吐く。


「名前もサンジくんも息がある…良かった……。でも、見た感じ二人ともさっきの“アレ”を食らったとは思えないんだけど…」

「そうなんだよ!」


顔から落ちたせいで、頭が島雲にめり込んでしまった俺を引き抜いてくれたナミがどこか不思議そうに呟く。ウェイバーで飛び出す瞬間、エネルから放たれたのはかなり強烈な一発だったけれど、サンジは多少傷は増えているものの、“アレ”を受けたとは思えないほど傷が少ない。名前に至っては、サンジに庇われていたせいか、雷によるダメージは見たところほとんど無さそうだ。
一体何があったのかとナミと二人で首をかしげだ時、


「っう………ここァ…」

「!サンジくん!!」


サンジの目が薄らと開かれる。「気がついたのか!」と喜びの声をあげると、ハッと何かを思い出しように起き上がったサンジががっと俺の肩を掴んでくる。


「名前ちゃんは!!?」


鬼気迫る勢いでそう聞いてきたサンジに一瞬圧倒されながらも、「あ、ああ、名前も無事だ」とナミの腕に抱かれている名前を指し示すと、そんな名前の姿を確認したサンジは、珍しく、まるで泣きそうな表情を見せ、「良かった、」と絞り出したような声で呟いた。


「ねえサンジくん、あの時一体何があったの…?」

「お前ら、エネルのスゲェ攻撃を食らってたよな?そのわりにはダメージが少なそうに見えるんだが…」

「ああ、俺も自分で驚いてる」


ナミと俺の質問に自分の身体を見下ろしたサンジ。この様子だと、どうやらサンジ自身も、自分がどうしてこんなにもダメージを受けていないのか分かっていないようだ。


「あの時、名前ちゃんと一緒にエネルの雷に打たれると思った。実際に攻撃を食らったところまでは覚えてる。けど、そのあとの事は正直曖昧だ」

「…エネルが、手を抜いたとか?」

「そんな甘いやつなわけないでしょ。空島を落とそうとしてんのよ?」


呆れたようにそう言ったナミに、それもそうかと更に首を捻る。そんな俺を他所に、未だに意識を失ったままの名前をサンジに任せて立ち上がったナミは「とにかく先ずは移動しましょう」とウェイバーを起こす。
あの黄金の舟で何が起きたのかは気になるが、今はそれよりも、助かる方法を考える方が懸命だ。
ナミの言葉に頷いて、ウェイバーに乗り込もうとしたのだけれど、


「ウソップ、てめェは走れ」

「はあ!!?」


名前を抱えたサンジが乗ったせいで定員オーバーとなったウェイバー。しれっとした顔で走れ。なんて言ってくるサンジに、「ふざけんな!」と抗議しようとしたけれど、「行くわよ!」とアクセルを回したナミのせいで、講義をいう間もなく遠のいていくウェイバー。


「ま、待ってくれー!!!」


小さくなっていく三人の姿を慌てて追いかけると、「早くしろー!ウソップー!!」とウェイバーの上からのうのうと声をかけてくるサンジに、「元気ならお前は一緒に走れ!!!」と叫んだのは、聞こえない振りをされた。



***



「晴れろおおおおおおおお!!!!」


うおぉぉおおおおお、というルフィの声が聞こえる気がする。空一面を覆っていた雲が来て、どんよりと淀んでいた空が青く美しく晴れ渡る。


「うおおおーっ!ルフィうおおお!!」


やっぱりアイツらいつだってスゲェ。曇り空を、青空に変えやがった!!両手を広げて喜びの声を上げると、未だに目を覚ましていなかったチョッパーと名前の瞼が小さく動いた。


「……、あれ……俺……なんで……?」

『…こ、…こは…?』

「チョッパー!名前!良かった!!目ェ覚めたか!!!」


青空と一緒に目を覚ました二人に、その場にいた全員がほっと胸を撫で下ろしたその時、


「届けええええええええええええ!!!」



カラァー・・ン!!!



空に鳴り響いたその音がなんなのかを、俺たちは聞くまでもなく知っていた。
空島 22

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