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「………ヒマだな、コリャ」


ゴロリと転がったルフィさんに小さく笑う。そんな彼にサンジさんは呆れた声を漏らしている。

いざと言う時動きやすいようにと湖畔にキャンプを張ることにしたのだけれど、あまり動くことの出来ない私は食料を探しに森へと入っていったゾロさんやチョッパーを見送る役に。てっきりルフィさんも彼らのように森に入るのかと思いきや、なぜか動こうとしない彼に、木箱を机にして何やら作業をしているナミさんが不思議そうに声をかけた。


「?ルフィ?あんたは森に行かないわけ?」

「行かねえ」

「珍しいわね。どういう風の吹き回し?」

「次は、ちゃんと“守れる”ように、名前の近くにいる」


ポカンとした顔でナミさんとサンジさんが固まる。同じような顔でルフィさんを見つめると、にししっと笑った彼に頭を撫でられる。
ああ、そっか。ルフィさんは約束を守ろうとしてくれているのか。
途端にふわりと胸を覆った温かさ。口元を緩めてルフィさんを見つめると、はあっと大きく息を吐いたサンジさんが「じゃあ、水の確保でもやってくれ」と彼に仕事を頼んだのだ。


ごろごろと転げ回るルフィさんには、じっとただ待つだけの仕事は退屈なのだろう。「私が代わりにやるので、ルフィさんは森へ行ってもいいんですよ?」と提案してみたものの、彼は頑としてここから離れる気はないらしい。転がるルフィさんに笑っていると、「サンジ!!いろいろ取ってきた」とチョッパーとゾロさんが森から現れる。


「クルミにアロエ、バナナ、ニンニク」

「ねずみにカエル」

「よし、シチューにぶち込め」


ん?今、なにかおかしか単語が混じってたような。顔を上げてサンジさん達の方を見れば、「ちょっと待て!!」とナミさんが抗議をしている。そんな彼女に鼻の下を伸ばしたサンジさんは「だよね~うっかりしてた…ニンニクはイヤ?」と少し見当違いな返しをしている。普通はねずみとカエルが嫌だと思うのでは。
騒がしく、けれど楽しそうな様子に自然と頬を緩めていると、「名前!」とアロエとニンニクを持ったチョッパーが駆け寄ってきた。


「ほら!アロエとニンニクだ!!火傷薬と消毒薬に使えるんだぞ!!」

『へえ…チョッパーは物知りだね』

「えへへ…俺は医者だからな!!」


「これで名前や空の騎士の傷も早く良くなるよ」と笑うチョッパーに「ありがとう」と返していると、なぜかじっと向けられる視線。チラリとそちらを見ると、不満そうに唇を尖らせたルフィさんがいて、転がり回ることをいつの間にか辞めていた彼はゆっくりと私たちへと歩み寄ってきた。


「……ズリぃ」

『え?』

「なんでチョッパーだけ、“チョッパー”なんだよ」


ルフィさんの声にハタと目を瞬かせると、更に眉根を寄せたルフィさんがずいっと顔を近づけてくる。


「大体、名前の喋り方はたにんぎょーぎで、俺は悲しいぞ!」

『たにんぎょーぎ…』


たにんぎょーぎ、他人行儀。もしかして、敬語のことだろうか。
「そう言えばそうね」となぜか話に加わってきたナミさん。「別に敬語じゃなくていいのよ」と言う彼女に「いえ、それは…」と首を降れば、ルフィさんがムッと唇をへの字に曲げる。


『…えーっと…私の国では、年上の人や、立場的に上の人に敬語を使うのが普通なので…』

「…名前はいくつなんだよ?」

『…19ですけど…』


「「「「「「え」」」」」」と7人が7人とも同じような反応で固まる。何か変なことを言っただろうかと首を傾げると、「あんた…私より年上だったの…??」というナミさんの言葉に、今度は私が「え」と固まった。。


『うそ…ナミさんって…』

「18よ。…ちなみに言うと、ゾロとサンジくんはあんたと同い年」

『え!うそ!?』


ぎょっと目を丸くしてゾロさんとサンジさんの2人を見れば、二人も信じられないというように目を丸くしている。「…ちなみに他のみんなは…?」と恐る恐るといかければ、ルフィさんとウソップさんが17歳、そしてロビンさんは28歳と教えられ、この三人まだ納得出来るなと一人頷いていれば、怪訝そうにナミさんが眉根を寄せた。


「てっきり16、7くらいだと思ってたわ…」

『私も、ナミさんは大人っぽいから年上だと思ってました…』


ちなみに、ゾロさんやサンジさんも。
この世界の人達はどうにもみんな大人っぽいように思える。ロビンさんは年相応の落ち着きだと納得できるけれど、ゾロさんやサンジさんはどうしてああも、落ち着きがあるのだろうか。やはり環境の問題なのかもしれない。日本という平和な国でぬくぬく育ってきた私と二人では何もかも違うのだろう。
未だに「嘘でしょ」と言いたげな顔しているナミさんに苦く笑っていると、「なんだよ!じゃあやっぱり敬語いらねえじゃん!!」と気づいたように声を上げだルフィさん。え、と目の前の彼を見ると、にっと嬉しそうな笑みを向けられ、眩しさに目を細める。


「名前の方が年上なら、けーご使う必要ねえじゃん!!!」

『いや、でも、私は船に乗せて貰ってる身で、それに、ルフィさんは船長だし、』

「あー、もう!律儀というか、頑固というか!ルフィがいいって言ってんだから、もういいでしょ!やめなさいよ、その硬っ苦しい話し方!」


硬っ苦しいって。いや、確かにそう聞こえるかもしれないけれど。「ちなみに、私にも使わないでよね」とサラリと付け足したナミさんに、え、と驚いていると、「おお!だったら俺も気軽にウソップでいいぜ!」と今度はウソップさんが。ちょっと待って、この流れだと、


「なら、俺も…」

『ま、待ってください!さすがに、その…一気には無理です…混乱しそう……』


ウソップさんに続いて手をあげようとするサンジさん。そんな彼の言葉を遮って慌てて首を振ると、「もう全員にタメ口ききゃあいいじゃねえか」とゾロさんに言われ大袈裟に首を振った。


『む、無理です…!!ナミさんならまだしも、ゾロさんやサンジさんにタメ口とか…無理ですっ!!!』

「いや、なんでだよ」

『……お、恐れ多い気がして……』


肩を縮こませてそう言った私に、「やっぱり年上には見えないわね」とナミさんが呆れたように息を吐く。そんな私たちのやり取りを見ていたロビンさんはくすりと微笑むと、「とりあえずは、船長さんたちで“慣れたら”いいんじゃないかしら」と言うものだから、どうやら私の“ルフィさん”呼びはこれで終わりらしい。


「“ナミさん”って呼んでも返事しないからね」


「あんた達も呼び捨てじゃなければ返事しちゃダメよ」というナミさんの呼びかけに「「はーい」」とお行儀よく返事をしたウソップさんとルフィさん。そんな2人の姿に苦く笑う私に、ナミさんはにこりと少し意地悪く笑うのだった。
空島 14

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