勢いよく開いたドアから押し入っていたのは、数人のファインダーだった。
そしてそのファインダーたちは口を揃えて叫んだ。
「テナルアさん!!新しい適合者が現れました!!至急室長室に!!」
テナルアは16歳以下のエクソシストのお世話係という一面もあった。
しかし、大抵子供大好きな楸が面倒を見ているのでテナルア自身はほぼ何もしていない。
―きっと、そんなテナルアが呼ばれるって事は…
叶依はその【適合者】が16歳以下であることを悟った。
テナルアと叶依が室長室に入ると、深紅の髪がチラリと見えた。
「おぉ、来たか、テナルア。」
「てめぇが呼び出したんだろうよ、幽葉。」
【永谷幽葉】とは現黒の教団室長であり、テナルアの幼馴染みでもある。
昔から姉と弟みたいな関係であり、教団内では2人は付き合っている等と噂する者もいた。
幽葉はテナルアに駆け寄り、小さな声で「あとは頼んだよ」と呟き、テナルアに書類を渡して室長室を去って行った。
テナルアと叶依は書類とにらめっこしながら部屋の奥へと進むと、深紅の髪の少女がイノセンスの原石をぼんやりと眺めていた。
「えと、君かな?適合者ってのは…アビス・レヴィアスちゃん?」
テナルアはその少女の名前であろうモノを読み上げると、少女は振り返ってただ一言
「―…はい。」
その一言だけが、叶依には凄く寂しそうに聞こえていた。
そして、深紅の髪の少女―…アビスは、とても寂しそうに、とても静かに、ほんの少しだけ笑った。
それが、
この出会いが、
すべての始まりで有ることをこの時の叶依は知るよしも無かった。