はぁー。

大きく息を吐いてベッドに寝転んだ。そのまま伸びをして、時計を見る。


「げ」


ベッドサイドに置いてあるデジタル時計は『AM3:06』と表示されていた。まじでか。明日が土曜日でよかった。


「ってか疲れた…」


小雪から借りたリボーンという漫画を読み始めたはいいものの、まったく進まない。読み始めたのが9時過ぎだと言うのにまだ8冊目の途中までしか読めてない。むしろ良く頑張った方だと思う。もう読む気はしないが。

早い話が、飽きた。というか疲れた。

だって意味がわからないんだもん。なんで撃たれて死んでまた生き返るの。パンツ一丁で。赤ん坊が殺し屋とか、マフィアとか、変でしょ。ダイナマイト持ち歩いてる中学生とか不良の風紀委員長とか野球少年なくせにふつうに剣を振り回してたりとか10年後と入れ替わる牛とかパイナップル頭とか。色々おかしいっつの。
ツッコミ気質の私にとってはいちいち突っ込まずにはいられない漫画だった。超疲れたわ…。そう考えると主人公の沢田綱吉とは似たようなものを感じる。気も合うんじゃないだろうか。ツッコミ的な意味で。ってどうでもいいわ。


「ってか結局、ジオのことあんま出てきてないし…」


かろうじてシルエットぐらいは出てきたものの、それ以外の要素はまったく出てこなかった。あ、でも始めの方にあった家系図に名前は出てたっけ。でもそれだけだし。どういうことよ。

ただ、なにもわからなかったわけじゃない。
マフィア。ボンゴレファミリー。初代ボス。歴代最強。

それが、この漫画の中の『ジョット』だ。

ジオは漫画の中のキャラクターだ。わかってる。だから、この漫画に書かれていることこそ真実なのだ。

彼は、この世界の住人ではない。

分かり切っていたこと。今更動揺も驚きもない。

それなのに、そのはずなのに。私は、その当たり前のことを、受け入れることが出来ないでいる。


『天音』


私を呼ぶ声も、顔も、空気も。あいつを取り巻くすべてが、ここに存在していることを証明していて、ここで、生きていて。
こんな、紙面の中の、伝説のように伝えられている人と同一人物だなんて、どうしても思うことが出来ないのだ。

今ここに居るジオは、ボンゴレのボスなのだろうか。それとも、もう引退をしてしまって静かに暮らしていたのだろうか。


「なんでだろ……」


以前の私だったら、こんな意味の分からないことで頭を悩ませたりすることなんてなかっただろうに。どうして、こんな。


「主人公が、ジオの、来孫」


ジオの遺伝子を持った、血の繋がった、子孫。


「あいつ、一体どんな人と結婚したんだろ」


いや、これからするのか。
どちらにせよ、私にはどうでもいいことだ。

原因のわからない胸のモヤモヤとした感覚を不快に思いながら、私はベッドに突っ伏した。







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