つ、疲れた…。
あれなんか最近にもこんな風に感じたこと……。いいや思い出すのも疲れる…。
なんで疲れてるかってね、あのね、最近ジオが漫画のキャラってことばっかり頭の中にあってね、大事なこと忘れてたのよ。
ジオが超美形の外人さんだってことに。
店員さんがごっそり持ってきた服をジオが一通り試着して、しかも何気に気に入ったのも多かったらしいんだけど(やはりプロは違うなと言われた時に殴らなかった私を誰か褒めてください)、顔を隠してると印象が分かりづらいっていう店員さんの言葉に何故か納得しちゃった私は、ちょっとならいいかなーとか思っちゃった私は、「ちょっとはずしてみなよ」とか言っちゃって、ジョットがサングラスとマスクを外した。瞬間。
周囲が色めきたった。
周りの女性客とか近寄るまいとしていた女性店員さんとか、ぶっちゃけ男の人の視線も、一気にジオに集まった。その一瞬の反応がちょっと怖かった。まじびくってした。
そしたらあらよあらよと女性店員さんがジオに寄ってきてこのジャケットとかどうですかとかこのスラックス似合いますよとか…。あんたら他にも客いんだぞ仕事しろよ。とは言えなかった。口出しできなかった。ジオはにこにこと綺麗な微笑みで軽くあしらっていたようにも見えたけど、女の子たちはめげずに話しかけまくってた。最終的にジオにヘルプの視線を送られるまで近づくことさえしなかった。だって女の子怖いんだもん…。服を大量に買ってお金払って店舗が見えなくなるまでずっと視線向けられてたよ…。ジオには甘いそれが私にはものすごく鋭い視線だったよ…。
あの中にジオに気付く人がいなくてよかったと思う。もし、もしもあそこに小雪と同じタイプの人が今頃どうなってたんだろう…。うわ考えたくもない。
「日本の女性もなかなか積極的だな」
「イタリア人ってのはあれだけの人数を前にしても笑顔で対応できるもんなのね。尊敬するわ」
「やきもちか?」
「はっはっは寝言は布団の中で言え」
こっちはいい迷惑だっつーの。急いで出てきたからサングラスとマスク忘れてちゃうし。超目立つんだけど…!それ以前にばれたらどうすんのよ…!
「すまないな」
「は?」
「服。結構しただろう」
ああそっちね…。別に今更。
「それなりの生活させてやるって初めに約束したし当たり前でしょ。気にすることないわよ。無一文のくせにいっちょ前に遠慮なんかしないの」
「……お前は本当に容赦ないな」
「はいはい。可愛くなくて悪かったわね」
「そうは言ってないだろう」
「そう言ってるようなもんなの。もういいからさっさと終わらそ。これ以上目立ちたくないし」
ジオがまだ何か言いたそうにしていたのを無理やり遮って、早足に進む。ジオは納得のいかないような顔をして私の後をついた。
「天音」
「なによ」
「俺は天音のこと可愛いと思っている」
「あっそ、どうもありがとう」
「嘘じゃない」
「はいはい。私もジオのことかっこいいと思ってるわよ」
外見だけねと言えば、やっぱり容赦ないなとジオは笑った。
「天音」
「なによしつこいわね」
「耳が赤いようだが?」
「っ死ね」