※続いてないから分からない人のための、微妙なあらすじ。
幼い頃に、手術のために外国へと行ってしまったラクサス。そして、高校二年になった頃、ラクサスが帰国した。幼馴染であるナツとグレイとも再会。ナツの父イグニールからも許可を貰い、ラクサスはナツと同居する事に。
幼い頃とは見違えるほどに強くなったラクサス「これからは、俺がお前を守る」宣言。幼い頃は身体の弱いラクサスをナツが守っていたのに、逆になってしまい、戸惑うナツ。ラクサスの同居で、隣家に住むグレイも焦り始めた。
幼馴染三人の恋愛模様は、秋の空よりも変わりやすい!二人の想いには気付かないナツの気持ちはどちらに傾く!
幼馴染の青春ラブストーリー(続いてはいないよー)



19日目「知った想い」





最終下校時間が間近の教室は、薄暗い。明かりも点いてければ誰か人がいても見過ごしてしまいそうだ。
ルーシィは教室内に居る人影を見つけて近寄った。

「まだ帰らないの?ナツ」

暗い教室に、ただ一人席についていたのはナツ。彼には似つかわしくない状況だ。席に座るナツは顔を俯かせていて、その姿に違和感を抱いてしまう。

「どうしたのよ。ラクサスはとっくに帰ったんでしょ?早く帰らないと心配するわよ」

ルーシィの言葉にナツの身体が揺れた。俯いていた顔がゆっくりと上げられる。やっと確認できたナツの顔、その表情にルーシィは眉を寄せた。

「ナツ?何で泣いて、」

「ルーシィ、どうしたらいいんだ」

震える声。ルーシィとナツが知りあってまだ一年かそこらだが、こんなナツの姿をルーシィは見た事がなかった。ルーシィだけではなく、おそらく他の者だって見た事などないだろう。
動揺して声もかけられないルーシィの服をナツの手が掴んだ。

「どうしよう、俺……」

服を掴んでいる手が震えている。ナツは顔を俯かせると、絞り出すように声を吐きだした。

「俺、ラクサスが、好きだ」

胸が締め付けられた。本を読んでいるわけでもない、自分がその言葉をもらっているわけでもない。それでもルーシィは、ナツの言葉に目頭が熱くなっていた。
じわりと浮かんでくる涙を拭って、ルーシィはナツを包むように抱きしめた。腕の中ではナツが嗚咽を漏らす。
辛いのだろう、苦しいのだろう。今まで恋愛から無縁だったナツが、初めて経験した感情。戸惑って、どう対処していいのか分からないのだ。

「大丈夫。あたしはナツの味方だから」

「ルーシィ……何で、泣いてんだよ」

ナツが顔を上げれば、ルーシィがナツに負けない程に涙で頬を濡らしていた。それにナツがくしゃりと顔を歪めるが、ルーシィは柔らかく笑みを浮かべただけだった。

その会話を、偶然通りかかったグレイが聞いていた事にナツとルーシィは気が付かなかった。
グレイは暗い廊下を走りぬける。
グレイは幼い頃からナツに想いを寄せていた。ラクサスがナツに好意を持っていたのは知っていた。だからグレイは、ラクサスが外国へ行った事を喜んだ。これで、ナツに一番近いのは自分なのだと思ったから。グレイの想いは恋愛よりも、暗い独占欲に近いものがあっただろう。
グレイは、はっきりとは告げなくとも態度で表したつもりだった。それでもナツが想いに気が付く事はない。それが、十年経って戻ってきた幼馴染にあっさり持っていかれるのだ。

「クソ……ッ」

十年もの間は自分がナツを守ってきたに、ナツが惹かれるのはラクサスだ。

「……何で、俺じゃねぇんだ!」

グレイの心の様に、空には暗雲が立ち込めていた。




20100816

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