BOFTの間違った解釈





収穫祭の途中でラクサスと雷神衆の乱入。それと共にバトルオブフェアリーテイル開幕の宣言。
目を覚ましたナツがラクサスに向かって、地を蹴った。

「落ちつけよ。ナツ」

炎で纏った拳で殴りかかる瞬間、ラクサスの瞳が細められる。

「え?」

ラクサスが小さく呟いたのに気が取られて、ナツは反応が遅れてしまった。
ラクサスが前へ出した手から発せられた雷がナツへと直撃し、その衝撃でナツの身体は吹っ飛んでしまった。

――――てめぇは、しばらく寝てろ

ラクサスの言葉が何度も頭をめぐる。

石像にされた者たちも術が解除されて無事に済んだが、ラクサスが新たに神鳴殿を発動させた。
術式の中から出られないナツは身動きが取れない。

「祭りだってのに、寝てられるわけねぇだろ」

ナツは術式の結界に手を当てる。
見えない壁がある様で、それはまるで己の心を見せんとするラクサスの様だ。
だが、レビィが術式の解読をしているのだ、必ず解除してくれるだろう。術式から出る事が出来れば、ラクサスの元へと行ける。
ナツは震える拳を術式に打ちつけた。響く拳とは逆に術式はびくともしない。
ナツは、すり寄せる様に額をあてた。

「お前が何したいのか分かんねぇよ。ラクサス」

くしゃりと顔を歪めたナツの切ない声。
それは誰にも聞かれることなく、かき消えた。

それでも、暴走したお前は、俺が必ず止める。お前の心も、ギルドと共にあると信じているから。







思念体でギルドを訪れたラクサス。思念体を消したラクサスは、閉じた目を開いた。
バトルオブフェアリーテイルを始める前に、強制的に眠らせたはずのナツは、何事もなかったかのように目を覚ましていた。

「目ぇ覚めんのが早かったな」

静寂な教会にラクサスの声が響く。
怒りをあらわにしていたナツ。何度も大怪我を負った様には見えないような、衰える事を知らない威勢。
ラクサスは少し前に起った事件を思い出して拳を握りしめた。
幽鬼の支配者との抗争で、ナツは今まで見せないような傷を負っていた。ギルドを破壊され、また涙を流したのだろう事はラクサスでなくとも想像が付く。
生ぬるいギルドのままでは、ナツは更に傷つく事になるだろう。それを黙っているわけにはいかなかった。

「大人しく寝てりゃよかったのになぁ、ナツ」

術式のルールに当てはまらないはずのナツが、何故か術式から出られないでいた。それでも、この場を見つけ出したナツが駆け付けるだろうと、ラクサスには妙な確信が持てた。
その時には一戦交えなければならないのだろう。
何故大人しく寝ていてくれなかったのか。

「手加減なんて慣れてねぇからな」

少し眠らせる程度にと手加減を考えたのが間違いだった。むしろ滅竜魔導士であるナツに対してなら手加減する必要などなかったのだ。そうすれば、全てが終わるまで目を覚まさなかったかもしれない。
ナツが目を覚ました時には全てが終わっている。妖精の尻尾のマスターの座を得て、弱者を全て排除し、新しいギルドを作り出す。
その予定だったのだ。

「まぁいい……止めようなんざ考えるなよ、ナツ」

これから作るのは、お前の為のギルドなんだ。




2010,08,15〜2010,09,07
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