幸せのピノ





幸せのピノ2個入りを引き当てたナツ。6個入りに一つでもあれば運がいいのに、2個も入っていたとなれば、ナツの機嫌をよくするに十分過ぎる。
イグニールの膝に座りながら、ピックで刺した星形のピノをイグニールの口元に差し出す。

「父ちゃん、あーん」

イグニールは頬を緩ませながら、ピノを口で受け取った。
溶けて混じるチョコとバニラの甘さが口の中に広がる。目の前では、同じようにナツが星形のピノを口に放り込んだ。
幸せに笑みを浮かべる。口の中のアイスがなくなって、ナツはイグニールを見上げた。

「なぁ、父ちゃん」

「ん?」

イグニールの手がナツの頭を撫でる。髪をすくように手を動かすと、ナツは気持ち良さそうに目を閉じた。

「父ちゃんは、なんてお願いしたんだ?」

ナツが言っているのは願いのピノの事。運良く星形のピノが入っていたら、願いが叶うというジンクスがあるのだ。
イグニールはナツを愛しそうに見つめながら口を開く。

「ナツとずっと一緒に居られますように。父ちゃんは、そうお願いしたんだよ」

いつか大人になって、大事な人を見つけるまで。それまでは、少しでも長く、可愛い息子と時間を共にしたい。
イグニールの言葉にナツは満面の笑みを浮かべた。

「じゃあ、お願い叶うな!」

身体を反転させてイグニールと向き合うように座る。

「へへっオレも父ちゃんと同じことお願いしたんだ」

甘えるように抱きついてくるナツに、腕を回す。
子供特有の高い体温を感じながら、イグニールは瞳を閉じた。

「父ちゃんとずっと一緒にいような。ナツ」

「うん!」

いつか自分の元から離れていく事は分かっている。それでも、今のこの満たされた気持ちは、永遠に消えることはないだろう。




20110117

二個入ってた時はびっくりすた


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