説明しよう!
マグノリアの街を守っているヒーローは、魔獣戦隊フェアリーファイブ。
ほとんど学生だけで活動している為に、どうしても都合が付かない時があるが、基本事件が起きれば駆けつける。ちなみにメンバーに選ばれた時点で、彼らに拒否権はない。
各自、色と動物をモチーフにしている。何故かグリーンは人語を話す猫で、主人公のレッドが不在。
試験前は殺気だっているので容赦できない。庶民派ヒーロー。現在、表だって動いているのは妖精学園の生徒(と、猫)。
主な活動は幅広く、悪の組織から万引き小僧まで、とにかく悪をせん滅する。悪が滅びるまでヒーローに自由はない(つまり永遠に自由はない)

cast
レッド…不在
アイスウルフ(ブルー)…グレイ
サンダーパンサー(イエロー)…ラクサス
スターラビット(ピンク)…ルーシィ
ウィングキャット(グリーン)…ハッピー
司令官…エルザ

※以上、ナツ休み2010「ヒーロー参上」参照。



☆前回までのお話☆※続いてません
悪の秘密結社、幽鬼の支配者(ファントムロード)に捕らわれてしまったナツを助けるべく、イエロー達はアジトへと乗り込んだ。
大量に現れた幽兵(シェイド)を倒しながら進んだ先に待っていたのは、幽鬼の支配者の幹部エレメント4。
ナツを人質にされ、迂闊に手を出せなくなったイエロー達。隙をつかれたイエローは変身を解かれてしまい、ナツはイエローの正体を知ってしまった。




27話「大きらい!」


「パンサーが、ラクサス……?」

ナツの瞳が、大きく見開かれた。瞳は揺れ、声が震えるている。
ラクサスが顔をそむけるが、そんな行動は無意味だ。ナツの顔がくしゃりと歪む。

「ウソ、ついてたのか?ラクサス、オレにウソついてたのか?」

ナツは、ラクサスを兄のように慕い、イエローに憧れていた。だから、イエローにはラクサスの話を、ラクサスにはイエローの話しをしていたのだ。
ラクサスはナツから視線をそらしたまま動けずにいる。そんなラクサスに、ナツの瞳から涙が零れた。

「ラクサスなんか……だ」

最後の方は聞き取れないほどに小さい。
しかし、状況を見守っていたピンクはナツが何を言ったのか察し、止めようと口を開いた。

「ナツ!」

しかし、ナツの耳にはピンクの声は届かず、ナツは涙をぼろぼろとこぼしながら、声を張り上げた。

「ラクサスなんか大きらいだ!」

ナツの声が響き渡り、その場に静寂が訪れる。聞こえるのは、嗚咽を漏らすナツの声。
そして、ナツの声に、不愉快な笑い声が交じった。

「おやおや、可哀そうに」

声の主は、幽鬼の支配者の首領ジョゼ。

「こんなにも可愛らしいお子様の心を傷つけるとは……正義のヒーローとはずいぶん残酷なのですね」

ジョゼはナツへと歩み寄ると、ナツの顎を掴み、顔を上げさせる。
涙で潤ませるナツの瞳は弱々しく、サディスト気質のジョゼの加虐心を煽った。ジョゼは、低く笑みを浮かべるとナツを抱きかかえる。

「気に入りましたよ。ただの子どもならすぐに帰してさしあげたが、この子には素質がありそうです」

「なんの素質よ、変態!」

ピンクが鳥肌を立てながら突っ込むと、ジョゼは眉を寄せて、ピンクの近くにいるブルーへと視線を向けた。

「変態はそちらでしょう」

ピンクはブルーへと振り返り、ヘルメットの中の顔を引きつらせた。

「こっちも変態ィィィィ!?」

ブルーは、下着一枚にヘルメット姿。その上、ヘルメットの被り口から赤い液体が漏れていた。それはとめどなく流れ、下着までも汚している。

「ちょっとデジャブ!ていうか、キモイ!」

「ごぼぼごべご……ごげぇっ!」

溺れているような声がブルーから漏れる。予想などたてる必要もないだろう、ヘルメット内に溜まってしまった血が口を塞いでいるのだ。
その場に膝をついて咽るブルーに、ピンクが短く悲鳴を上げ、ジョゼは手で口元を覆った。

「汚らわしいですね」

「ひ、否定できない……」

ピンクはがくりと肩を落とした。
ブルーが変態なのは元からだが、今は戦況がよくない。イエローはナツの言葉に衝撃を受けたまま身動きすらせず、ブルーに至っては戦闘不能。戦えるのはピンクだけなのに対して、幽鬼の支配者側には幹部4人と首領。絶体絶命だ。
一人戦闘の構えをつくるピンクの腕輪から、高い機械音が鳴り響く。腕輪は変身以外にも仲間や本部との連絡にも使用できる万能道具だ。
ピンクが腕輪を操作すると、本部からの通信が入ってきた。

『スターラビット、撤退しろ』

声の主は司令官のエルザで、突然の指示にピンクは眉を寄せた。

「ダメ。まだ、ナツを助けてないのよ」

『状況は分かっている。だから、撤退だと言っているんだ』

「あたし一人でも……」

『撤退しろ!!』

声を荒げるエルザに、ピンクはびくりと体を震わせた。
ピンク自身も分かっているのだ、一番戦闘力のあるイエローが戦意喪失な上に、敵に戦闘員の数さえも劣っている。一人では無理だ。

「……分かった」

『すまない。全員無事に帰ってきてくれ』

通信が切れ、ピンクはジョゼを睨みつける。その腕の中にいるナツを見つめ、振り切るようにブルーに振り返った。

「撤退命令よ」

「ま、待てよ……ナツはどうする気だ」

ヘルメットの中の血が抜けたのだろう、息苦しそうだが言葉は話せている。
咎めるブルーの声に、ピンクは耐えるように拳を強く握りしめた。

「一時撤退して体勢を整えるの。これは、司令官の命令よ」

「逃げられるとでも?」

嘲笑するジョゼを、ピンクが睨みつける。

「一時撤退だって言ってるでしょ!」

ピンクは腰に装備していた鍵の一つを、前に突きだす。

「開け、処女宮の扉!バルゴ!」

床から飛び出してきたのはメイドの姿をした少女。両手首には鎖の切れた手錠がはめられている。

「お任せください、姫」

「脱出ルートをおねが……いいいいいい!?」

バルゴがピンクの目の前の床を掘りながら潜ると、すぐに陥没が起きた。ピンク達三名のいた場所の床が抜けおち、落下していく。
ピンクとブルーの悲鳴が響き渡り、次第にそれは聞こえなくなっていった。

「逃げられたか」

苦々しく呟いたジョゼは、腕の中のナツへと視線を落とすと表情を緩めた。

「今夜は楽しめそうですね」




20110813



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