洋菓子店FAIRY TAILポッキーの日






私服に着替えたルーシィは、片付け中の厨房へと顔を出した。

「お先ー……って、ナツだけ?」

残っていたのはナツだけだ。
グレイやエルザは少し前に帰り、先ほどまで一緒に片づけていたラクサスはマカロフに呼ばれて抜けているのだ。

「ルーシィ、帰んのか?」

「うん。そうだ、がんばってるナツにこれあげる」

ルーシィは鞄を漁り、取り出した物をナツへと差し出した。





「おぉ。おかえり」

暫くしてラクサスが戻ってきた。
すでにナツ一人で片づけは終えていて、厨房内を見渡したラクサスは作業台に寄りかかっているナツへと視線を向けた。

「悪いな、一人でやらせて」

「気にすんなよ。そうだ、ラクサスも食うか?」

ナツは作業台に置いていた物を手に取った。菓子の箱で、チョコのかかった棒状の菓子。有名なそれは、先ほどルーシィが差し入れてくれたのだ。
差し出される箱に、ラクサスは手を伸ばして一つ指でつまんだ。

「そういや、今日はポッキーの日だったな」

「何だそれ」

ナツが不思議そうに目を瞬かせる。

「菓子会社の策略だ。数字の一をこの菓子に見立ててんだよ」

「あー。今日は十一月十一日か」

納得したように頷くナツに、ラクサスはつまんでいる菓子に視線を落とした。基本のミルクチョコレートがかかっているものではなく、ピンク色。いちご味だ。
ナツの髪の色の様なそれに目を細めた。

「食わねぇのか?」

菓子を見つめたまま固まってしまったラクサスにナツが顔を覗き込んだ。見上げてくる猫目に視線を移し、ラクサスはゆっくりと口を開いた。

「ポッキーゲームって知ってるか」

「そんなのあるのか?」

首をかしげるナツに、ラクサスは口元に笑みを浮かべると、手にしていた菓子をナツの口へと突っ込んだ。

「んぐ、」

状況が把握できずにいるナツに、ラクサスは顔を寄せた。思わず身体をのけ反らせるナツの身体を捕え、ナツが咥えている菓子の逆端を咥える。
至近距離で視線が交わる中、ラクサスはナツに迫るように少しずつ菓子を齧っていく。
軽い音と同時に菓子は削られ、菓子で繋がっている唇同士が徐々に近づく。息がかかる程に近づくと、ナツは耐えられなくなり咥えている部分を齧って顔をそらせた。
しかし、すぐにラクサスの手がナツの顎にかかった。逃れない様に掴まれ、ナツは息をつめた。ラクサスの顔が間近に迫っていたのだ。

「ん、」

逃れる暇もなく、ラクサスの唇がナツの唇に重なった。
体温を分けるように暫く触れていた唇がゆっくりと離される。互いの瞳に映る己が見えるほどに近い距離。
瞳を見つめていたナツは拗ねたように口を尖らせた。

「今のがゲームかよ」

「ああ。……俺がするのはお前だけだけどな」

驚いて目を見開くナツに再び唇を重ねた。触れたのは一瞬だけで、軽い音を立てて離れた熱。

「甘いな」

「ば、バカじゃねぇの」

震える声は、悪態というにはあまりにも愛らしすぎる。
ナツは、持っていた菓子の箱をラクサスへと押し付けた。

「まだあるけど、どうすんだよ」

視線をそらすナツの顔は赤く、耳まで染まっていた。ラクサスは、喉で笑いながら、菓子を一つ手に取った。

「決まってんだろ」

箱の中には、まだ半分以上も菓子は残っていた。


20101111

こんなんしかaaaa/////



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