3分の1スイーツ
父親を探すためにマグノリアへと訪れ、elementsのメンバーに加わってから数日。住む場所は、elementsのメンバーが暮らしている宿舎替わりのマンションに、共に住む事になった。
ラクサスやグレイとは打ち解けてはいないが、ミストガンは優しく接してくれる。その分ナツも楽だった。
今日は、ナツを加えた新生elementsに取材の申し入れがあり、それを受ける事になった。ナツの初仕事という事になる。
「週刊ソーサラーだよ」
車での移動中、何の取材なのかと問うたナツに、運転をしながらロキが答える。
週刊ソーサラーは有名な芸能雑誌なのだが、芸能に全く関心のない生活を送っていたナツには、存在さえも知らなかった。
首をかしげるナツに、隣に座っていたミストガンが、今まで読んでいた雑誌を差し出す。
「これが、その雑誌だ。インタビュー記事も載っているから、読んでおくといい」
「サンキュー!」
取材などされた事がないから少々不安があったのだ。
受け取った雑誌を眺めるナツを、ミストガンが見守っている。それに、ナツの前に座っていたグレイが振り返った。
「珍しいよな。あんたが雑誌読むなんて」
「たまにだが読んでいる」
疑うようなグレイの目にミストガンは不快そうに眉を寄せる。二人のやり取りに、ミストガンの前に座っていてラクサスが喉で笑った。
「少なくとも、移動中に読むなんて事は今までなかったろ」
過去を振り返っても、ミストガンが車内で書物に目を通す事はなかった。それは自身も分かっている。
「誰の為に用意したんだかなぁ」
揶揄する様な物言いに、ミストガンが無言で睨みつける。
車内に重い空気が流れ、運転中であるロキも気が気でなく、車内に備えてなる鏡越しにちらちらと見る。話題を変えようと考えをめぐらすが、ロキが口を開く前にナツが、あ、と声をもらした。
それにすぐに反応したのは、空気に耐えかねていたロキだ。
「どうかした?」
鏡越しに映るナツが雑誌から顔を上げる。
「これ、すげぇ美味そう!」
涎を垂らしそうな勢いで、ロキに雑誌を向けるが、運転中のロキが雑誌を見られるはずがない。
「どれだ?」
困っているロキの代わりに、ミストガンが顔を寄せる。雑誌を覗きこめば、そこにはケーキの写真。取材を受けたアイドルの、お気入りの洋菓子店が紹介しているのだ。
「ケーキ、好きなのか?」
「おぉ。だって、美味いだろ」
好みにもよるだろう。甘いものが嫌いな者もいるのだから。
雑誌へと視線を戻したナツは、ケーキの写真に見入っている。その横顔から見える幼さに、ミストガンはくすりと笑みをこぼした。
「ナツ、よかったら一緒に行かないか?」
顔を上げたナツがきょとんとする。
「君を見ていたら、私も食べたくなってしまった。付き合ってくれるなら、ご馳走する」
ナツは一瞬で瞳を輝かせ、雑誌を放る勢いで、ミストガンに迫った。
「いいのか?!」
「男が一人でケーキ屋というのも少し気恥ずかしいだろう。君が一緒なら入りやすい」
もし犬なら尻尾を振っているだろう。身体全体で喜びを表すナツに、鏡越しで見ていたロキが噴き出した。
「よかったじゃないか。今日は仕事で無理だから、明日にでも行ってきなよ」
ロキの言葉に頷いて、ナツはミストガンに満面の笑みを浮かべる。
「お前、いい奴だな!」
車内という狭い場所で、背後で男女が仲良くしている。それが、片方が付き合いの長い仲間で、もう片方は、嫌悪さえ抱いている新入り。グレイとラクサスに苛立ちを生ませるのは簡単だった。
「軽い女」
「ガキ」
二人の小さな悪態にナツが口元を歪める。言い返そうとしたが、それを止めるようにミストガンがナツの頭を撫でた。
「気にするな」
ナツが照れたように表情を緩める。
「平気だ。ミストガンが居てくれるし」
悪意はないのだろうが、ナツの言葉はラクサスとグレイの機嫌を更に悪くした。それを感じ取ったロキが慌てて口を開く。
「ほら、もう着くよ」
ロキの言葉に、四人の意識がそれた。ナツは思い出したように雑誌を開き取材記事に目を通していく。
ロキの言う通り、数分足らずで場所に取材場所へと着いた。週刊ソーサラーの出版社が所有しているスタジオが入っているビル。
ビル内のスタジオへと入れば、ナツは見知った顔を見つけた。elementsに入った時に化粧などを施した男だ。
「エビの奴だ!」
ナツが指させば、男がそれに気付いて振り返った。目が合うと、ナツは慌ててミストガンの背へと隠れる。
「キャンサーがどうした?」
「キャンサーって言うのか。あいつ、化粧とかしてくんだよ」
「私達の専属ヘアメイクだから、仕方がない」
ナツはミストガンからそっと顔を覗かせる。こちらを窺っているキャンサーと目が合い、ナツは顔を強張らせた。一瞬彼の目が光った気がしたのだ。
「今!あいつの目光ったよな!」
しがみ付いて来るナツにミストガンが戸惑っていると、それを見ていたラクサスが舌打ちをもらした。
「そのくらいで騒ぐんじゃねぇ。大体女だろうが、お前は」
女なら化粧ぐらい進んでするものだろう。
ラクサスの厳しい目に、ナツは言葉を詰まらせた。実際は男でも、周囲には女という事になっているのだ。何も言い返せない。
ナツが顔を俯かせると、ミストガンは首をひねってナツを見下ろす。
「ナツ、少しずつ慣れていけばいい」
ナツの年齢では、化粧をした事がなくても仕方がない。今時では珍しいかもしれないが。
諭す様なミストガンの言葉に、ナツは渋々といった様子でミストガンの背から離れた。
今回の仕事は、雑誌の表紙もelementsが飾るので、その撮影も兼ねていた。
撮影を終え、そのまま取材に入る。今回の取材目的である新入りのナツを真ん中に、四人掛けのソファに腰掛けた。
目の前に、今回の取材を担当する記者の男が腰かける。
「よろしくお願いします」
記者が、マネージャーであるロキを含めたメンバーに名刺を手渡す。
初めてもらった名刺を物珍しそうに眺めながら、ナツは記されている名を読み上げた。
「フレディっていうのか」
ナツの隣に座っていたグレイが、名刺を確認してすぐに今回の担当記者であるフレディへと視線を向ける。
「ジェイソンはどうしたんだ?毎回あいつだったろ」
elementsが結成されて今に至るまでは、週刊ソーサラーでの取材は、ずっとジェイソンという記者が行ってきた。数年とはいえ付き合いが長い分気が楽だったのだが、今回は全く身に覚えのない記者だ。
「今回は譲ってもらったんですよ。新しいメンバーというのが気になったんで」
グレイの問いに答えたフレディの視線は、ちらちらとナツへと向けられる。
ミストガンは、ナツが楽しそうに眺めている名刺を取った。ようやく名刺から注意がそれたナツに、ミストガンはフレディへと視線を向ける。
「初めてください」
ミストガンの言葉に急かされる様に、フレディは、小型の録音機を取り出した。電源を入れ、ようやく取材の形となった。
取材の内容は、新メンバーとして加入したナツに対してのものばかりだ。ナツが余計な事を口にしない様にと、側で立っているロキが度々補助している。
ロキが顔を引きつらせる事もあったが順調に進んでいき、時間の経過から終盤に入った頃、記者の目がラクサスへと向いた。
「ラクサスさん、最近お祖父さまとの仲はどうですか?」
フレディが口にした瞬間、その場の空気が凍った。暫く誰も言葉を発しない、沈黙が支配し、ナツが首をかしげる。
「ラクサスの、じいちゃん?」
「ナツさん、有名なのに知らないんですか?」
フレディが意外そうに声をもらし、続ける。
「妖精の尻尾の社長は、ラクサスさんのお祖父さんなんですよ」
ナツはフレディの言葉を脳内で繰り返し、理解すると、勢いよくラクサスへと振り返った。
「お前、じっちゃんの孫だったのか!」
elementsのメンバーと加わると同時に、プロダクションである所属する事になる。その際、ナツは社長と対面していた。妖精の尻尾の社長は、マカロフ・ドレアー。齢八十八の老人男性で、ナツが女装して活動している事も承知している。
フレディがする、マカロフとラクサスの話しを、ナツは興味心身に聞き入る。マカロフが、現役で俳優として活動していた事があり、名優と呼ばれるほどだった事など。
それだけなら良かったのだが、ラクサスの話しに入り、グレイとミストガンは内心舌打ちした。
「elementsの人気が出たのは、マカロフ・ドレアーの後押しがあるからじゃないかという話もありましたね」
ナツの興味を引いた事が楽しいのか、記者の口は達者になっていく。当人が目の前にいるという事を忘れているのではないかと取れるほどの内容だ。
グレイとミストガンが、記者の口を何とかして封じようと口を開いたが、声を発する前にナツがミストガンに振り返った。
「そういうもんなのか?」
芸能という世界に足を踏み入れて数日。それどころか、そう言った事に興味がなかったナツには全く知り得ない事だ。
不思議そうにするナツに、ミストガンは口を開いた。
「周囲がどう思うかは別だからな。実際とは異なっていても」
最後を強調しながら、ミストガンはフレディへと視線を向ける。
特に芸能界などと言った特殊な世界は、報道が人の興味を引くように大げさに話しを広げる事もある。
フレディがミストガンの厳しい視線にたじろぐ。
「よく分かんねぇ」
難しい顔をしながら、ナツはラクサスをじろじろと見やる。その視線を鬱陶しそうにしていたラクサスに、ナツは顔を前に戻しながら呟いた。
「変だよな……ラクサスはラクサスなのに」
その言葉に、ラクサスは誘われる様にナツへと視線を向けた。ナツは不満そうに口を尖らせていたが、ラクサスの視線を感じて、再び振り返る。
「何?」
何か変な事でも言ってしまったのか。少し不安げに眉を寄せるナツに、ラクサスは顔をそむけると、舌打ちをもらした。
一番端に座っていたから、外側へと顔をそむけてしまえば表情は読めない。しかし、付き合いが長い二人には分かるのだろう。ミストガンは口元に笑みを浮かべ、グレイは盛大に噴き出した。
状況が掴めずにきょとんとしているのは、新入りであるナツと、記者であるフレディだ。
「あいつ、怒ってんのか?」
ミストガンに振り返る。まずい事を行ってしまったのかと、不安そうに問うてくるナツに、ミストガンは首を横に振るった。
「逆だ」
「逆?」
「ラクサスは怒っていないという事だ」
ラクサスは、変わらずに顔をそらしたままで表情は読み取れないままだ。そんなラクサスをちらりと見て、ナツは、ふーんと相槌を漏らした。
その後、取材を終えたメンバーは、宿舎であるマンションへと帰宅した。
「ハッピー、ただいまー」
自室へと戻れば、ベッドで寝転がっていたハッピーが、ナツの帰宅で身体を起こした。
撫でてくれとばかりに身体を擦りつけてくるハッピーを抱き上げると、ナツは背中からベッドに倒れる。
腕の中ではハッピーが喉を鳴らしている。それをどこか遠くで感じながら、数時間ほど前までの取材を思い返した。
「あいつ、変だったよな」
ラクサスの事だ。取材で、マカロフの話しになってから様子がおかしかった。
ナツの言葉に、ハッピーがピクリと反応しただけで、何も返しては来ない。ナツは天井を見つめたまま目を閉じた。
「ムカつく奴だけど、仲間だし……ちょっと、気になるな」
身体を預けているベッドと、腕の中の温もりが心地良かったのだろう。ナツの意識は薄れていった。
暫く経って、ナツは目を開いた。耳元で鳴くハッピーの声と、扉の叩く音。ナツは、間近にあるハッピーから視線をそらして時計を見る。
「寝てたのか」
時計が、帰宅してから一時間は経っている事を教えていた。目を閉じて一瞬だと感じたのは、錯覚だったのだ。
ぼうっとしていると、扉の叩く音が激しくなった。苛立ちさえ伝わって来そうなそれに、ナツは慌てて扉へと向かう。
「……遅ぇんだよ。さっさとしろ」
扉を開けて目に入ったのは、不機嫌なラクサスの顔。そして開口一番が、それだ。
予想外の訪問者に呆然と見上げていると、ラクサスは手に持っていた物をナツへと押し付けた。
がさりと音を立ててナツの手へと移された。袋に入っているそれを覗きこめば、箱状の物。
何かと無言で問えば、ラクサスは視線をそらす。
「勘違いすんなよ。それは、ファンから送られて来たもんだ」
だから何だ。
ナツが言葉を返さずにいると、ラクサスは舌打ちをもらした。
「俺は甘いもんが嫌いなんだよ。てめぇが片づけとけ」
「はぁ?何だよ、それ……」
ラクサスは、用事は済んだとばかりに扉をしめた。残ったのは、乱暴に閉められた扉が発した音と、手の中の物。
ナツは、耳を刺激した騒音に顔をしかめながら、手の中のものへと視線を落とす。袋から取り出せば、箱からは微かに甘い香りが漂ってきた。何より、箱だけでも中身が何なのか想像がつく。
「ケーキだ!」
箱を開ければ、予想通りケーキで、小さな物が四つほど収まっていた。
「これ、食っていいって事だよな?」
片づけろと言ったのだ、そう捉えても問題ないはずだ。
ナツはベッドを背もたれに座ると、早々にケーキに手を伸ばした。苺が飾ってあるものや、チョコレート。色とりどりの果物が盛られているタルトレット。
ナツは手づかみで手に取ると、豪快にかぶりついた。
「ぅ、んめー!!」
口の中に広がるクリームやチョコレートの甘味。とろけるカスタードと果物の相性も見事だ。三個をあっという間に平らげて、最後の一つを手に掴んだ。
「あ?これって雑誌に載ってたやつだよな」
最後の一つはチーズケーキ。ケーキ自体には飾りっ気がないのだが、ガラスの容器に入っている。レモンの様な形をしたそれには、見覚えがあった。取材前に見た雑誌に掲載されていたケーキだ。箱を見れば、店名が書かれている。うろ覚えだが、店の名前も間違いないだろう。
一緒に入っていた使い捨てのスプーンで、ケーキを口へと運んで行く。
「んまい!……へへ、あいつ良い奴だなー」
ケーキで腹を満たしたナツは、満悦でベッドに寄りかかった。明日はミストガンと共にケーキ屋へと行く約束だったが、それは別だ。
至福そうにぼうっとしていると、再び扉が叩く音が響く。ナツは立ち上がって機嫌良く、来訪者を出迎えた。
「お、今度はミストガンか」
部屋の前に立っていたのはミストガンだ。
ナツの言葉に一瞬引っかかりを感じながらも、ミストガンが口を開く。
「明日の事なんだが……ナツ、何か食べていたのか?」
ミストガンの口元が柔らかく緩んだ。首をかしげるナツに、ミストガンは己の口元を指で指し示す。
「付いている」
つられる様に口元に触れてみれば、指にはクリームが付いた。ケーキにかぶりついた時に、付いたのだ。恥ずかしそうに口元を拭いながら、ナツは口を開いた。
「ラクサスがケーキくれてさ、それ食ってた」
「ラクサスが?」
「おお。ファンから貰ったけど甘いもん嫌いだからって」
ラクサスの名が出た事に目を見開いたミストガンだったが、次第に表情は顰められた。それに気づいたナツが、あ、と声を漏らす。
「ミストガンも食いたかったか?」
ケーキ屋に行く約束をしていたぐらいだ、食べたかったに違いない。だが、眉を下げるナツに対して、ミストガンは表情を緩めることはない。
「いや、私は遠慮しておく」
「あ、そうだよな。明日、一緒に行くんだもんな!」
にっとと嬉しそうに笑みを浮かべるナツから、ミストガンは視線をそらした。
「……すまない。その約束はなかった事にしてくれ」
「へ?何で」
「そんな気分になれない」
困惑するナツから逃れるように、ミストガンは部屋の扉を閉めた。
己で閉じたにも関わらず、扉の閉まる音は嫌に冷たく感じた。扉が閉じる寸前に目にしたナツの困惑した表情。それから逃れるように、ミストガンはその場から離れた。
コーヒーでも飲んで落ち着かせようとリビングに向かえば、運が悪いのか、ラクサスと出くわした。ラクサスの手にはカップがあり、珈琲の香りが漂ってくる。
二人の視線が交わったのは一瞬で、互いにすぐ視線を外した。
「ラクサス」
すれ違ったところで呼びとめる。ラクサスが足を止めたのを感じながら、ミストガンは口を開いた。
「ファンからケーキが届いたそうだな」
「それが何だ」
ミストガンが口を閉ざすと、ラクサスは首だけで振り返った。
「まさか、食いたかったとでも言うわけじゃねぇだろ?」
返事を返さないミストガンに、ラクサスは喉で笑った。
「お前が、あんな甘ったるいもんを進んで食ってるとこなんざ、見た事がねぇからな」
ラクサスの言う通り、ミストガンが自ら甘味を求めた事はない。嫌いなわけでも好きなわけでもないのだ。
ラクサスは、リビングを出て行こうと足を進めながらも、続ける。
「それとも、俺がファンから物を受けとったのが意外だったのか……俺には関係ないがな」
扉の開閉の音が響く。
人の気配がなくなったのを感じて、ミストガンは溜め息をついた。
「性質が悪いな」
ラクサスは甘いものは好みではない。食べられない事はないだろうが、自らが口にする事はないのだ。その事は、公式に発表している。
ラクサスのファンでなくとも、ファンが好みを把握していないわけがないから、送られてくる事が考えづらい。それに加え、基本食べ物は事務所で止めていて本人が口にする事はない。
ラクサスがファンからの贈り物を受け取る事自体も、有り得ないといえるほどに珍しい事なのだ。
「わざわざ買いに行ったのか……」
ラクサスが、一人でケーキ屋に赴き、ケーキを購入。何とも想像しえない事だが、おそらく間違いではないのだろう。
ミストガンは、脳内で考えを巡らせながら、ようやく動き出した。足を動かしてカップが納められている棚に手を伸ばす。
棚には色違いのカップが並んでいる。その内の緑色のマグカップを手に取った。残された青と桃色。青はグレイの、桃色はナツの専用だ。今は使用中で置かれていないが黄色はラクサス。
共に暮らすメンバー専用にと、ロキが買ってきたのだ。今まで三色だったそこに、数日前新しく桃色が増えた。
それを見つめながら、ミストガンは溜め息をついた。
「まるで、過保護な兄か」
ナツの素直な性格が好ましく、年下のせいもあってか兄弟の気分になっていた。ナツがメンバーに打ち解けていくのはいい事なのだが、何故だかおもしろくないと思う自分がいたのだ。
「ナツには、すまない事をしたな」
今は会う気にはなれないが、明日になったら、もう一度ケーキ屋に誘ってみよう。きっと、笑顔で頷いてくれる。
そう明日を想像しながら、ミストガンはカップにコーヒーを注いだ。
2011,01,30