待ち人





昼食後、ナツはリビングのソファで寝そべっていた。冷房で心地良い気温を感じながら、快適に身を休める。

「気持ちーな、これ」

向こうの世界には無い冷房機器。一度この快適さを知ってしまうと手放すのが惜しくなる。元の世界に戻る時に持ち帰りたいものだが向こうには電気がなかったのだと気付き諦めた。
気持ちよさそうにソファでくつろぐナツに、影がかかる。食後の片付けを終えたイグニールだ。

「デザートにアイス作ったんだ。食べるか?」

「食う!」

表情を輝かせて起きあがるナツに、イグニールはアイスを盛ったガラスの器を手渡す。ひんやりと冷たさが手に伝わる。まさに、至れり尽くせりだ。
ナツが幸せそうにアイスを口にしていると、イグニールが点いていたテレビへと視線を向けた。画面には、浴衣を着た女性が映っている。それを眺めながら口を開いた。

「そろそろ、妖精神社で祭りがあるな」

「祭り!?」

ナツの反応に、イグニールが笑みを浮かべた。

「浴衣出しておくから行っておいで」

「父ちゃんは行かねぇのか?」

ナツの言葉にイグニールは笑顔のままで表情を固まらせた。ナツが首をかしげると、イグニールの表情は暗いものに変わる。

「父ちゃん、仕事になっちゃったんだよ。本当は夏休みだったんだけどね」

長期の休みをとっていたのだが、イグニールが休みに入る前に家を出ていった“ナツ”。それを心配して仕事どころではなかったのだ。無断欠勤も有り、それも含めて休日を返上になってしまった。
ナツが悪いわけではないのだが、申し訳ない気持ちにはなる。

「わ、悪い……」

しょんぼりとするナツの頭をイグニールの手が撫でた。

「お前が悪いわけじゃないよ。それに、祭りは友達と行った方が楽しいだろ。ラクサスやグレイ達を誘って行ってきなさい」

イグニールの言葉に頷いた。それが一週間前だ。

祭り当日、浴衣を着せてもらったナツはラクサスの部屋へと訪れていた。ベッドに寝転がり、マンガ雑誌に目を通す。

「そういや、グレイが驚いてたぞ」

夏休み中に終わらせる論文だとかで、ノートパソコンと向かっているラクサス。ナツの言葉に、文字を綴っている画面から視線を移した。

「何がだ」

凭れかかった椅子が軋む音を立てた。それに反応したナツが漫画から視線を上げ、グレイの言葉を思い出しながら口を開いた。

「毎回誘っても来ないのに、今回は来るのかって」

ラクサスは何かあるごとに誘ってくる“ナツ”に、ガキだけで行けと断っていたのだ。理由は子守が御免だからだ。
それが今回は同行するというのだから、どういう風の吹きまわしかとグレイは納得できなかったのだろう。

「何で行かないんだ?」

「今回だって行きたいわけじゃねぇんだよ。お前を一人にしておけねぇだけだ」

ラクサスはパソコンへと視線を戻すとキーを叩き始める。
漫画に視線を戻したナツは顔を歪めた。先ほどまで楽しく読んでいた漫画なのに何故か集中できない。それと同時に動悸が激しくなっている。

「なぁ、ラクサス。何か暑くねぇか?この部屋」

論文を終えたのか一旦切り上げたのか、パソコンを閉じたラクサスは椅子ごとナツへと身体を向けた。

「そんなもん付けてるからだろ」

真夏にもかかわらず、ナツの首には常にマフラーが巻いてある。イグニールに貰ったものだから常に身に付けておきたいのだという説明は、ラクサスもナツから幾度となくされているが、見ている方は暑苦しくて堪ったものではない。

「“ナツ”はそんなもん付けてねぇぞ」

言い返そうと口を開くナツに、畳みかけるようにラクサスは続けた。

「それがお前にとって大切なもんだってのは分かるが、ここにいる間は外してろ。預かってやる」

手を差し出すラクサスに、ナツはマフラーに手をかけるとゆっくりとした動作で外した。渋々といった様子でラクサスに手渡す。

「ラクサスだから預けるんだからな。絶対失くすなよ」

信じているから預けても平気だと思える。真っすぐに見つめてくるナツの瞳からそれを感じ取り、ラクサスは頷くとマフラーを机の引き出しの中にしまい込んだ。
マフラーのしまわれた引き出しを未練がましく凝視するナツに、ラクサスは立ちあがると歩み寄った。

「立て」

言われるがままに立つナツ。その格好にラクサスは顔をしかめた。
部屋を訪ねてくる前にイグニールに着せてもらった浴衣が、ベッドでくつろいでいる間に大分着崩れてしまっている。

「お前、イグニールに何も言われなかったのか」

そう問うた後に思い直した。
“ナツ”は毎年のように浴衣を着ていたはずだ。その度に着せていたイグニールも知っているのだから、今さら注意などするはずもない。

「そういや、浴衣がぐしゃぐしゃになったらラクサスに直してもらえって言ってた」

息子の変化に、念の為用心しているのかもしれない。そう納得して、ラクサスはナツの浴衣に手をかけた。

「面倒くせぇから、一日ぐらいは大人しくしてろよ」

大して難しい事ではないのだが、他人の服装を正す事自体が面倒だ。ラクサスが着崩れを直しているのを眺めていたナツは、頷いたのだった。

グレイ達との待ち合わせは、夕方に妖精神社の石段前。時間が迫って来た頃、ナツはラクサスと共に待ち合わせ場所へと向かった。
妖精神社の祭りはマグノリアで大きな行事。その規模の大きさで、遠く離れた街からも足を運ぶ者がいるほどだ。
神社に向かうまでの間で浴衣を着た女性を多く見かける。ナツは、きょろきょろと興味深げに視線を彷徨わせる。

「うまいもんあるかなぁ」

涎を垂らしそうなナツにラクサスは小さく息をついた。
子どもにとっての祭りなど屋台が目的の様なものだろう。身近な子どもの代表がナツのせいか、ラクサスには偏った先入観ができていた。

「人込みで逸れるなよ」

ラクサスの忠告に、ナツは子ども扱いするなと怒ったのだが、ラクサスのその心配は現実になってしまった。
グレイとルーシィ、エルザと合流できてまだ数分足らずだ。桜色だけが消えていた。

「クソガキ」

顔をゆがめるラクサス。表情には焦りが浮かんでおり、その大げさな反応にグレイ達は首をかしげた。
ナツは高校二年だ。迷子になったからといってこれ程までに狼狽する事もないだろう。しかし、それは“ナツ”の場合だ。

「そうだ、ナツ携帯持ってたでしょ」

ルーシィが取り出した自らの携帯。ナツに連絡を取ろうと試みるが繋がらなかった。それはそうだろう。旅に出ている“ナツ”は携帯を置いて行ってしまったし、代わりであるナツは携帯の扱いは出来ないから持たせていないのだ。

「あいつは携帯使えねぇんだよ」

「そんなわけねぇだろ。俺達あいつのメルアドも知ってんだぜ」

「それは“ナツ”の話しだろ」

話しが通じない事に苛立ちを感じ、うっかり口をついてしまった。三人の訝しむ様な視線にラクサスは舌打ちした。
確かに人込みではぐれたからと行って動揺し過ぎていた。いくらナツが異世界から来たからといっても気を揉む必要はないのだ。そう考え、冷静さを取り戻そうとするが、気持ちが落ち着かない。
黙り込んでしまったラクサスに、エルザが口を開いた。

「確かにナツの様子はおかしかった。もしかしたら具合が悪かったのかもしれないな」

「そういえばテンション高かったわね」

「熱でもあったのか?」

三人が顔を見合わせると頷いた。

「急いで探そう」

四人で別れて捜し始めた。見つけたら即携帯で連絡を取る様にする。
こういう時程に、祭りの規模の大きさを恨めしく思う事はない。

「どこだ、ナツ!」

ラクサスは、気持ちを振りきる様に駆けだした。
出会って半月足らず。それでも目の前から消えただけで、こんなにも胸が騒ぐ。
そんな事“ナツ”に対して思った事などなかった――――







「……ここどこだ?」

ナツは神社の裏手にまで足を踏み入れてしまっていた。
グレイ達と合流した後すぐだ、見せ物小屋などという看板を目にしたナツは好奇心に駆られてラクサス達から離れた。その後すぐに元の場所へと戻ろうとしたが、間違えて裏に迷い込んでしまったのだ。
屋台などで賑わいを見せている方とは違い、裏に入ってしまえば明かりもなく薄暗い。夜目に慣れなければ、足元も危ないだろう。

「やべーな。怒られちまう」

逸れるなと注意を受けたのに、それから数十分での失態だ。殴られる覚悟ぐらいは持っておこう。そう決心して歩き始めたナツの耳に、人声が聞こえた。

「お、ちょうどいいや。ラクサスの居場所知ってるかな」

大勢人が集まる場所で、特定の人物を知る者に会える確率は限りなく低いだろう。さらに現在の居場所を知っているとなると、まずない。
深く考えない楽観的なナツは、人声のする方へと足を向けていった。

「本当に助かるよー」

少年と青年の二人組だ。青年が、少年の肩を叩いて笑っている。仲がよさそうに見えるが少年の方は身体を震わせていた。しかし、ナツに状況判断などできるわけがない。

「お前、いい奴なのか?」

ひょいっと顔を覗かせたナツに二人の視線が集まる。青年が少年にかけた言葉から、少年が良い人間だと解釈したのだ。
ナツの言葉に青年が噴き出した。

「そうそう、こいつ良い奴なんだよ。困ってる俺に金貸してくれてよ……な?」

少年は、青年の言葉に必死に頷いている。
ナツはへぇと感心したように声を漏らした。

「じゃぁ、俺も助けてくれ!」

びくりと体を震わせた少年にナツが顔を覗く。真っすぐに向けられる目に、強張っていた少年の表情が緩んだ。

「ラクサスがどこにいるのか教えてくれ」

「……らくさす?」

「おお。逸れちまってさ。絶対怒ってるから早く見つけねぇと」

遅くなればその分怒られるのだと顔を歪めるナツに、少年は眉を下げた。

「あの、僕、その人知らないから」

ごめん。
謝罪の言葉を述べる少年にナツは頭をがりがりとかいた。知らないのなら仕方がない。まずナツが聞いたのが間違いなのだが。
ナツは傍観していた青年へと視線を向けた。

「お前、知らねぇか?」

首をかしげると珍しい桜色の髪がゆれる。男で見るには珍しい浴衣、その襟から覗く肌。
それを舐める様に見ていた青年が、人のよさそうな笑みを浮かべた。

「ああ、ラクサスか」

「お前、知ってんのか!」

ナツの嬉しそうな反応に、青年は肯定するかのように笑みを深めた。

「連れて行ってやるよ」

青年はナツの手を握ると、強引ともとれるような力でナツを引きずっていく。それに付いて行くようにナツが必死に足を動かす。

「あ、あの!」

青年の意図に怪しんだ少年が止めようと声をかけるが、青年に睨まれるとすぐに俯いてしまった。それ以降目を合わそうともしない。その間にナツを連れた青年が、更に奥まった方へと足を進めていった。

「お前ラクサスの仲間だったのか。だから良い奴なんだな!」

にっと笑みを浮かべるナツに青年は笑みを深めた。逃さぬようにと握りしめる手に力を込めると、賑やかな音から更に遠ざかっていった。

「なぁ、まだラクサスのとこに着かないのか?」

歩いているのに一向に人の気配が見られない。眉を寄せるナツに、青年は振り向いた。

「その前に、浴衣の着崩れを直そうか」

その言葉で、ナツは自分の格好に気付いた。一度ラクサスに直してもらった浴衣が動き回っていたせいで乱れている。
ナツ自身では大して気にする程度でもないのだが、面倒だと言っていたラクサスを思い出すと、戻る前に直した方が良いのかもしれない。

「お前直せんのか?」

伺うように見上げてくるナツに青年は頷いた。目の前にある古い祭殿へとナツの手を引き、石段にナツを座らせると、顔を近づけた。
間近に迫った青年の顔にナツは思わずのけ反らせた。その反応を喉で笑って、青年はナツの浴衣の帯に手をかける。

「お、おい、直してくれるんじゃねぇのか?」

浴衣の帯を外されれば浴衣は大きく肌蹴、健康そうな肌が露わになった。ここまでの状況下で危機感を感じないわけがない。
ナツは青年の手を払い睨みつけた。

「騙したのか?」

青年は息がかかるほどに顔を近づけた。

「連れて行ってやるとは言ったけど、ラクサスって奴の所とは言ってねぇだろ」

青年の言うとおり、はっきりとラクサスの友人だとも、連れていくとも言ってはいない。

「てめ……!?」

一発でも殴らなくては気が済まない。
しかし、ナツの手は自由が利かなかった。外された帯で、両手を縛られていたのだ。会話をしている隙に行ったのだろう妙に手慣れている。

「こんなもん燃やし……て、魔法が使えねぇ!!」

「魔法って、何の冗談だよ。時間稼ぎでもしてるつもりか?」

嘲笑う青年にナツは歯ぎしりをした。
こちらの世界に来てから魔法を使う機会などなかったから失念していた。魔法のない世界で魔法が使えないのは当たり前だった。それに加え、どれだけ力を入れても帯が解ける気配はない。
焦りを見せるナツの肌を青年の手が伝う。途端鳥肌が立った。ひっと短く悲鳴を上げるナツの反応に、青年は喉を鳴らす。

「優しくしてやるよ」

ぶちっと何かが切れる音がし、それに青年が顔を上げたと同時だった。

「使えんのは手だけじゃねぇんだ、よ!!!」

ナツは思い切り頭突きをかました。その衝撃で、よろける青年。
ナツは立ちあがると身体を捻り、勢いを付けて足を振りあげた。青年が体勢を整え始めた時には遅い、ナツの足が青年の頭部に直撃し、青年の身体は軽く吹っ飛んだ。
魔法が使えなくても肉弾戦も得意とするナツの身のこなしは、この世界の同世代の人間に比べれば遥かに上。
倒れている青年へと視線を向けて、ナツはべっと舌を出した。

「つまんねぇ嘘つくんじゃねぇ!」

とりあえず危機は脱したものの、人前に出るには気が引けるような格好だ。

「これも取れねぇし、何とかしねぇと……」

両手を拘束された状態の両手。帯を噛んで引っ張ってみるが、うまく解けない。躍起になって帯と格闘していると、地を踏みしめる音が聞こえた。足音が近づいて来る。
青年の仲間かもしれないと身構えたナツだったが、影から現れた姿に力を抜いた。

「なんだ、ラクサスかよ」

慌てた様に走り寄ってきたのはラクサスだった。
ナツが、帯を外してもらおうと両手を前に出す。ラクサスはその姿に身体を強張らせた。羽織っているだけの浴衣と、拘束されている両手。
動きを止めたラクサスの顔を覗かせたナツは、その行動を後悔した。

「ラクサス……?」

ナツの声が震える。
怒ったラクサスの表情は何度も見た事がある。それこそ両方の世界で。しかし、今のラクサスの表情はどれにも当てはまらない。冷たい表情のその目の奥には、かつてないほどの怒りが見える。
声を荒げるでもなく盛大に顔を顰めるわけでもない。無表情で、言葉を発しないのだ。纏っている痛いほどの雰囲気に、ナツはごくりと喉を鳴らした。

「あのさ、悪い……俺、逸れちまって」

ラクサスはナツの言葉など聞いていないようで、視線を彷徨わせた。遠くで転がっている青年を見つけ、その目が細められる。

「あれが、やったんだな」

冷たい声にぞくりと冷たいものが走った。どんなに鈍くとも、これに気付かない者はいないだろう。直感で、不味い状況だと分かる。
ナツは、青年へと足を向けるラクサスを止める様にしがみ付いた。

「な、何でそんなに怒ってんだよ。逸れたのは、悪かったから……ごめん」

ラクサスは気持ちを落ち着かせるように深く息を吐きだすと、身体を震わせるナツに手を伸ばした。顔を上げさせるように、頬を両手で包み込む。

「何も、されてねぇんだな?」

ナツの目が大きく見開かれた。
先ほどまでとは違うラクサスの表情。苦しそうに眉を寄せ、見つめてくる目に滲む不安に満ちた色。
ナツが頷くと、ラクサスはナツの身体を抱きしめた。捕える様に強く抱き込むと、耳元で囁く。

「二度と離れんな……ちゃんと、俺の目の届くところに居ろ」

体温に触れたからか、それともラクサスの言葉にか。ナツの瞳に涙が浮かんだ。
胸が煩いほどに鳴る。それが同調するかのようにラクサスからも聞こえるのだ。

――――ダメだ、苦しい。

ナツが顔を上げたと同時に、その空気を壊す様に軽快な音が流れた。携帯の呼び出し音だ。
ラクサスはナツの身体を放すと、携帯を取り出して通話ボタンを押す。少し会話を交わした後、途中でナツへと視線を向けた。

「グレイ達だ。どうする、このまま帰るか?」

ナツは瞬きを繰り返すと、言葉の意味を理解して大きく首をふるった。

「帰らねぇよ!まだ何も食ってねぇじゃねぇか!」

むっと口元を歪めるその姿に噴き出して、ラクサスは頷いた。

「ああ、平気だ。今からそっちに行く」

ラクサスは携帯を閉じると、ナツへと視線を向けた。

「浴衣、直すぞ」

ラクサスに浴衣を直してもらったナツは、合流場所に向かっていた。その途中、ふと頭を過った疑問。

「そういや、何で俺があそこに居るって分かったんだ?」

何故ラクサスがあんな神社の奥まった場所まで来たのか。そう問うとあっさり答えが返ってきた。それは、最初に青年と共にいた少年のおかげだった。
彼は青年に恐喝されていたらしいのだが、それ以上の悪い噂が青年にはあった。今回ナツが犠牲になりそうになった事だ。人気のない場所へと連れ込んでの性的暴行。その被害は男女関わらず多数に及んでいた。
少年は、ナツを助けたかったのだが怖くて逆らえない。そこでナツが口にしたラクサスという名前が今回役に立ったのだ。ナツを捜しまわっていたラクサスがグレイ達と一度合流した時、偶然にもその時少年が居合わせた。
グレイ達に名を呼ばれているラクサスが、ナツの探していた人物だと知り、事のあらましと、向かっていった方を教えてくれたのだった。

「なぁ、そいつどこにいるんだ?礼言わねぇと」

「礼なら十分したろ」

青年をぶん殴った事だ。当分目を覚ます事もないだろうし、途中で会った警備員にも告げたから今頃は捕まっているだろう。
そうかと納得したナツは、弾かれた様にラクサスを見上げた。いきなり手を握られたのだ。

「また逸れたら困るんだよ」

それにはナツも何も言い返せなく、グレイ達と合流した後も、ラクサスの言う通り手を繋いで祭りを周った。
屋台の食べ物にも満足し、イグニールの土産も買えて楽しんでいたナツだったが、祭りの間中ラクサスの顔だけはまともに見る事が出来なかった。

祭りの最後にと、帰り際に皆で引いたおみくじ。ナツのおみくじに記されていた。

―――――運命にあらがう事は出来ず、過ぎ去るのを待つのみ。待ち人…すぐ側に。されど長くはない。




2010,09,06
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