覚えのない真実





無事にアラケオル基地で帝国軍の殲滅に成功したノクト達、やっとレガリアを取り戻せたと安堵したのだった。

レガリアに乗る為見つけた場所に戻ろうとした時…なにかゾクゾクと寒気を感じブルーは勢いよく振り返った。
すると歩いてきた地面の一部が闇に覆われてボコボコと波打っている。異変に気付いたブルーは杖を構えた



『何か来る』

「シガイか!?」

「いや、もう朝日が昇るからシガイは出てこれないはずだ」





全員が武器を構えると先程よりも闇が広がり、ズルズルと何かが浮き出てくる。目を凝らすと見えてくる形を認識するとブルーは目を見開いた




『…!なん、で』




見間違いであって欲しかった、浮き出てきた物は人の形を保っていて金髪の長い髪を一つに結い、エメラルドグリーンの瞳をしている。夢の中の校長室で出会った人物と瓜二つだった。
ブルーは1歩2歩とゆっくりと後ずさり、ごくりと生唾を飲み込む。金髪の男は完全に闇から出てくると口元をニヤリと歪めた





「よお、やっと会えた」

『…貴方は』

「どうして、って顔だな」

「おいブルー、こいつの事知ってんのか」

『…多分敵だと思う、後は夢の中で一度会ったくらい』

「夢の中でだと?」

「いったいどういう事…!?」

『私も良く分から…っ!』

「話してる暇なんかあんのか!?ああ!?」



金髪の男が武器召喚を行うと勢いよくこちら目掛けて剣が振われる。5人は散り散りになり避けるがガキンッ!と大きな音が鳴ったと思うと剣が振り下ろされた場所には黒く大きな穴が空いていた。



「あいつ武器召喚を…!」

「武器召喚って俺達以外出来ないはずじゃ」

「ノクト上だ!」

「くっそ!」




状況が飲み込めず混乱する中、上空から激しい機械音が聞こえると帝国軍の戦隊が現れ入口が大きく開く。
帝国兵の大群が出てくると地上に向かってどんどん降りてきてこちらに向かって攻撃し始めるが、帝国兵はブルーを狙わず他の4人を狙って攻撃してきていた。応戦しようとするブルーの背後をあの金髪の男が剣を振りかざし襲う



「お前の相手は俺だろうが!」

『っ、プロテゴ!』


「っくそ、ブルー!イグニスなんか打開策ねーか!」

「今考えているが帝国兵の数が多い!少し時間をくれないか」

「んなこと言ったってこのままじゃブルーが…!」

「ノクト!よそ見すんな!」




帝国兵の攻撃が止まず中々ブルーの助けに行けないことに、ノクトはもどかしさを感じていた。
ちらりと横目で見るとブルーは保護呪文で襲い掛かる攻撃から身を守っている、間合いを詰められるとブルーが劣勢なのは一目瞭然だった。



「守ってばかりで何もしてこないのか?なあ」

『っ、貴方と戦う理由がないでしょう!』

「お前が覚えていないだけで…俺にはある!」

『ぐっ…っあ!』



バリンっ!とガラスが弾けるような音がすると勢いよくプロテゴを破られる、その拍子に杖まで飛ばされると後ろに吹っ飛ばされた上に壁に背中を打ちつけその場にぐしゃりと落ちた。一瞬息が出来なくなったと思うと酷く咳き込んだ




『ゲホッ、ゲホッ…!』

「…お前、まだ何も思い出せないのか」

『…ど、いう…』

「仕方ねぇな、教えてやるよ…」



どうせそのうちお前は死ぬんだ、金髪の男はそう呟いてゆっくりと手を上げると今まで動いていた魔道兵の動きが止まる。隙を見てプロンプトが魔道兵に反撃しようとすると 大声で 動くな、と声を張り上げた



「一人でも動けばコイツを殺す」

「…っ、くそ!」

「くくっ、いいねぇ…この追い詰めてる感じ」


ゆっくりと歩いてブルーの前まで行くと横たわっているブルーの首筋に剣を向ける。


「何も知らずに死ぬのは味気ないだろう?だから教えてやる」


ブルーの首筋がプツッと切れ、血が首を伝うとピリッとした痛みに顔を歪める。



「昔、クリスタルに選ばれた双子がいた。この話は知ってんだろ」

『…っ、ぅ…』

「この双子は帝国軍に連れ去られそうになり、防げないと思った双子の母親が自分の命をかけて転送魔法で逃がそうとしたのさ。だが逃す直前に帝国兵に殺された…転送は失敗に終わった筈だった」

『…筈…?』

「そうさ、帝国兵が気付いた時には双子の姿は無く残っていたのはその両親の亡骸だけ…。逃がされたと思った矢先、双子の片割れが発見された。その場所は帝国軍の本拠地ジグナタス要塞の一室でだ」

『…転送の位置までは操作できなかったのね』

「ああ、要塞で発見された片割れは帝国軍の支配下に置かれ、実験や研究に使われた…いくら泣いても叫んでも止まない実験を繰り返されてもその子は助けを待った、だがルシスは双子を見放したんだ。繰り返される実験に耐えきれずクリスタルから見放された片割れはシガイとなり、帝国はもう1人の双子の行方を探した…時間をかけてでもな」


金髪の彼の手がカタカタと震えている。怒りなのか、それとも悲しみなのか…ブルーは表情が見えなく彼の心理は分からなかった


「そしてやっと見つかった、探し続けて見つけた場所はどこだったと思う?誰も予想をしていなかった…なぜなら片割れがいた場所は異世界だったからだ!」

『…!』

「片割れが辿り着いた先は魔法の国…闇の帝王の元へと飛ばされ、偉大な力を持っている事素質を見抜いた帝王はソイツを自身の分身にしようと実験を繰り返した…」

『…闇の、帝王…って』

「帝王の血液を何度も流し込み、何度も実験を繰り返す…もう少しで完成する筈だった自分と同じ力、脅威を持った分身が!…ダンブルドアが現れるまではな」

『ま、って…そんな、そんなありえない』

「ありえない?じゃあお前の両親はどこへ行った、幼い頃の記憶は全てあるのか?」

『…うそだ、嘘だ』

「嘘じゃねぇ、ダンブルドアがお前の存在を知って帝王の元からお前を攫い保護してお前を育てたのさ」

『だって、両親は事故で死んだって…!』

「両親の顔を見たことはあるのか?ダンブルドアがお前の昔の記憶を全て消し去ったとしたら?実験に使われていた事も、この国に昔いた事も忘れているだけだとしたら?」

『…ちが、う…違う、違う、違う…!』



全てを受け入れられず、何も信じられないブルーは耳を両手で塞ぎ縮こまる。
取り乱し、絶望の表情に変わるブルーを見て金髪の男はニヤリと笑い、ブルーの首元に当てていた剣を強く握りしめた


「いい御身分だな、俺は散々実験に使われ…くる日もくる日も助けを求めていたのにお前は…知らない世界で記憶を無くしのうのうと暮らしてたんだもんなぁ、思い出さなかったら幸せだったろうなぁ」


はははっ、と嘲笑うように声を出す…自重なのかはたまたブルーに向けてなのか彼の笑いは止まらなかった


「それもここで終わりだ、お前は死んでこいつらも殺し全て終わる。俺のルシスへの復讐は達成される!」


「…っ、ブルー!!」


金髪の男は剣を大きく振りかぶりブルーの首元目掛けて大きく振りかぶる。ノクトが声を張り上げシフトをしようとした時だった、刀がブルーの首を切る事は無く大きな音を立てて目の前で止まる…プロテゴの呪文だった。
なんの詠唱も無しに魔法が出された事に金髪の男は驚き目を見開いて顔を上げると同時に目の前にブルーの掌が出されると身体が大きく後ろに吹っ飛んで行った

ブルーはゆらりと立ち上がると物凄い速さで銀髪の男の子元へ飛び攻撃魔法を繰り出す。先程とは全く違う彼女の動きに男は気分を高揚させていた


「ははっ!やっと覚醒したか?お前はいくら足掻いても、良い人ぶってもあの闇の帝王と同じなんだよ!お前に人は…守れない!」

『…プロテゴ・トタラム』


男が手を振り上げると今まで大人しくしていた魔導兵が一斉に動き出しノクト達に銃口を向け始める。
どう見ても防ぎ切れる数じゃない、そう顔をしかめ4人は衝撃に備え目を強く閉じる。
パンっ!と発砲の音が鳴り痛みに構えるが身体に異変は来ず、ゆっくりと目を開けると鉛玉は空中で止まりそのまま地面へと音を立てて落ちて行った



「これは…!」

「…ブルーの力だ!」

「ブルー!」

「グラディオ頼む!」

「任せとけ!」



急いで#名前の#の方を見ると片手を此方に向け、もう片方は金髪の男へ向けられ魔法で攻撃を防いでいる。目は虚ろになっていて呼びかけても反応を示さない、正気を失って暴走しているようだった。
嫌な予感がノクトを襲い急いでブルーの元に駆けつけようと今のうちに魔導兵を薙ぎ倒し一掃する。
魔導兵が全て倒れた事を確認すると2人が戦っているであろう場所に走って向かった


「っ、ブルー!」

「っは、もう片付けたのか…」



駆けつけた先は2人の戦いで瓦礫だらけになっており、金髪の男もブルーも傷だらけになっていた。



「お前っ、ブルーと双子なんじゃねぇのかよ」

「だったらなんだ?」

「双子なら、お互いの幸せを望んでやれよ…!」

「はっ、ルシスの王子風情が…お前に何がわかる」

「双子の存在は誰にも知らされて居なかった…内密だったから当たり前だが、だからこそレギス様も捜索に動けなかったのではないのか」

「綺麗事ばかり並べてどうする。だが自業自得だな…最後は家臣に裏切られて死んだんだからな」

「っ、テメェ!」

「ノクトやめろ!」

「怒れよ、もっと憎め!俺はお前達の国を滅ぼした敵だぞ。殺すなら今だ」




さぁ、ほら早くやれよ!と彼は声を張り上げる。
イグニスが弁明し、グラディオはノクトへ落ち着けと言葉を掛けた。動かない4人を置いてブルーはゆっくりと手を前にかざすと呪文を唱えようとする…掌は緑色の光を放ち、恐ろしい力を感じゾクっ、とノクトの背筋を寒気と恐怖が襲い彼女を止めなければと判断した。



「待てブルー…やめろ!」

『…アバダ―』



ゆっくりと呪文を唱えようとした、その時呪文を遮るかのように白髪の男が目の前に現れブルーへと攻撃をした。あまりにも一瞬の出来事で目で追う事が出来ず肉を切る音が響くとブルーは腹部を横一文字へ切り裂かれ血がぼたぼたと流れている、そのまま前へとふらつくと意識を失い倒れそうになるが間一髪でイグニスとプロンプトがブルーの身体を支えた


「久しぶりだ、ノクティス」

「レイヴス…てめぇ…!」

「雷神の啓示を受けたか、それが何を意味するかも分からずに」

「おい!」

「動くなよ。お前達も…おい無事かエメラルド」

「助けに入らなくても良かったのによォ…なんの用だ」

「お前だけに任せたら全員殺しかねないからな…それに選ばれし王たる男がこうも無力で愚かだとは」

「じゃあアンタは何やってんだよ、なんで帝国軍でルーナまで狙って…!」

「敵の将軍に何を聞いている」



レイヴスがノクトの首を掴み、そのまま後ろへと跳ね返す。
グラディオが前へと出て盾になろうとするともう一つの影が前へと出た


「ブルーっ、お前…!」

『…やめろ』


ブルーはぽたぽたと腹部から血を流したまま前に出て2人を守ろうと手をかざす、魔法を唱えようとするが手は震え身体はもう限界だった。


「瀕死の仲間に守って貰わないと生きる事すらままならんか」

「…調子乗ってんなよ」


ノクトは手でブルーを静止すると前に出て武器召喚をする。
今にもレイヴスと剣を交えそうな勢いだった


「ここで死ぬなら、それが世界の運命だ」


お互いに剣を構え見つめ合う。一方踏み出して走り出そうとした時ー誰かがその空気を壊したのだった


「はい、そこまでにしとこう…そっちは大丈夫?」

「…アーデン」

「はは、助けに来たよ」

「何言ってんだ」

「軍を帰らせるって事」

「テメェ、ふざけてんのか?」

「まさか。だって…今このまま戦ったらこの子、死んじゃうよ?」



いきなり現れたアーデンはおちゃらけた様に会話を始める。
彼が指さした先は今にも倒れそうなブルーがいた、彼女は今こうして立っているがいつまた倒れるか分からない…重症だった。




「まったくもう、エメラルドもやりすぎ」

「その傷は俺がやったんじゃねェよ」

「でも殺そうとしてたでしょ?」

「…チッ」

「次会うのは海の向こう?うちもあそこの水神様に用があってさ、ね?」

「…」

「早く行かないと、手遅れになっちゃうよ?王様」

「…くそ、行くぞ」

「それじゃあ良い旅を、王様」

『…逃げるの?』

「…はい?」



アーデンは手をひらひらとさせると踵を返して撤退しようとする。その行動にブルーはまるで挑発するかの様に声を掛けた


『今ここで、全員殺せば良い話なのにそうしない…逃げてるのはそっちでしょ?』

「…傷が深いのに良く喋れるねぇ」

『私は今、ここで殺りあってもいい…逃げてるのはどっち?』

「面白いねぇキミ、でも…メインディッシュは最後にとって置かないと…ね」



ブルーの挑発には乗らず、2人を連れて消えて行くアーデン達。完全に見えなくなると側にいたブルーがふらりと傾き、その場に崩れ落ちた


「っ、ブルー、ブルーしっかりしろ!」

「早く回復しないと!」

「おいブルー!」


ノクトが急いで駆け寄り身体を起こして呼びかけるが瞳は閉ざされたまま顔色は青白く、相変わらず腹部からは血が流れている。プロンプトが回復アイテムをブルーに使用するが傷は完全には塞がらないままだった。



「なんで、傷が治らない…!」

「くそ、なんでだよ!どうして!」

「ここでは治療が限られる。急いでレスタルムに戻って手当をするしかない」

「早く戻ろう、ノクト!」

「…分かった」



グラディオがブルーを横抱きにし、4人は急いで駆け寄りレガリアへと乗り込むとアラケオル基地を後にする。
久々に乗ったレガリアは静けさに満ちていて…ブルーが目を覚ます事は無く、あまり良いとは言えないラジオを聞く事しか出来なかった。










(ブルー、双子だったんだね)
(似てなかったから二卵性ってやつかもな)
(本当は…ルシス生まれだったなんて…)
(本人も覚えていないからな、)
(クリスタルに選ばれたって言ってたよな)
(ああ…)
(思い出せない本人が1番辛い筈だ。今は俺達が支えてやらないと)
(…そうだな)






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