荘園に新人がやってくる度、みんなの関心は一点へ集中する。どんな人物でどんな性格をしていて、自分達の力になってくれるのかを推し量ろうと必死になる。今日、荘園にやってきた彼は、黒い祭服に身を包み、赤い瞳に警戒の色を滲ませて唇を固く結んだまま黙りこくっている。荘園にやってきて日の立っている医師が気を使い、この荘園のことや悪趣味なゲームについて分かりやすいように説明している。そして一通り話終わったのか、分からないことはないかしら?と問うているようだった。その投げかけに固く閉ざしていた口を開いた。

「神父をしているなまえです。大体のことは理解出来たけれど、できるだけ僕のことは放っておいて頂けるとありがたい」

ああ、また対人恐怖症の人間が来てしまったのか?と医師と占い師の表情が一瞬曇る。その表情さえも見逃していない、とでも言いたげに瞳をこちらに向けてくる神父にただ驚く。聖職者にも人間と関わることが億劫な人間がいるんだな、と思う反面、本当に聖職者なのだろうかとかすかな疑問さえ浮かんでしまう。ともあれ今後ゲームを共にする仲間なのだからと占い師は律儀に挨拶を交わし、感情の乗っていないよろしくを伝える。占い師の言葉に神父は軽く頭を下げ、呟く。

「あまり僕の前で思ってもいないことを言わないほうがいい。後悔することになるよ」

では、と言い残し、神父は先ほど医師に伝えられた自室へと歩いていく。神父の後ろ姿が遠くなってから医師は遠慮がちに話しかけてきた。

「神父と名乗っていたけれど、まだ若いわよね。それに…」
「ああ、人間が嫌いな割によく観察しているようだね。僕も注意して見ておこう」

占い師の言葉に医師はほっと息をつき「頼むわね」と言い残して、自身が気にかけている女の子の方へ向かった。占い師は先ほどまで話していた神父の扱い方についてうんと頭を悩ませた。見透かしたような言葉や、浮世離れしている雰囲気、占い師はそういう人間が苦手であり、できることなら関わりたくない、と思ってしまうのだった。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -