調香師に腕をひっぱられながら食堂へ連れていかれる。たまにはみんなで食べなきゃ、ときらきらした瞳で言い寄られ、断りを入れる隙もなかったのだ。数えるほどしか決まった時間に食堂へ来ることのない神父が調香師に連れられて現れたことで、物珍しいものをみるような目で見られる。その視線に耐えられなくなり、きゅうと胃が痛みを訴える。調香師はそんな視線に気づいていないようで、にこりと笑みを浮かべて「今日のメニューはなにかしらね」と楽しそうにしていた。一番端の席に座ると、調香師も隣の席に腰をかけ、少し広く感覚の空いている椅子を神父の方へ近づける。
「なまえさんも私も、声が小さいから」
口元に手を添えて小さく笑いを溢す調香師の言葉に思わず笑ってしまう。
「前の席いいかな」
突然降ってきた聞き覚えのある声に神父は少しだけ眉を寄せるが、調香師は気付いていないようで、声を掛けてきた占い師に挨拶をしている。
「イライさん、今日はなまえさんもみんなとごはんを食べにきてるのよ」
「僕が誘っても無視されるのに、ウィラが誘うと案外簡単に来てくれるものなんだね」
そうなの?と小首を傾げる調香師に、占い師は困ったような表情を作り、わざと肩を落としてみせる。
「なまえと僕だって結構、仲いいはずなのにな」
含みのある言い方をする占い師の視線を感じて、ふいと顔を背けてしまう。
「なまえさんってイライさんには素直じゃないのね」
調香師は神父の方を見遣り、くすりと笑う。苦手なんだと言ってしまえば調香師が気まずい気持ちになってしまうのだろう。目の前で楽しそうに笑っている彼女をそんな気分にはさせたくなかった神父は黙って口を噤むことしか出来なかった。そんな神父の態度に占い師は面白くない、とでも言いたげな表情を浮かべていた。しかし、それは一瞬で次の瞬間にはいつもと同じ、人好きのする笑みを浮かべて談笑を楽しんでいるのだった。