※ギャグ前提でご覧下さい こちらの話と何となくリンクしてます。読まなくても大丈夫です。 苦労が絶えないこの頃です サスケ君が猫を拾ってきた。 あれほど犬猫人は拾ってきちゃ駄目だと厳重に注意したことを、目の前の青年は忘れているのだろうか。 いや、それはないと言ってもいいだろう。だって彼は後ろめたそうに小猫を腕に抱いて、それはまるで子供がおもちゃをねだるような上目遣いでこちらを見ているのだ。全くそんなものどこで覚えてきたのか、困ったなぁという風に小さく息をはいてみせた。 「……サスケ君、君ね」 「駄目か…?」 小言を言おうと発した言葉は、彼に見事に遮られた。 彼は狡いと思う。いつもは、興味なさげに人をパシリ扱いしたり、ドスのきいた声でおどしてみたりと全く可愛げがないというのに、今は猫飼ってほしさに上目遣いで聞いたこともない甘えた声を出しておねだりするなんて。ツンデレとはよく言ったものだ。ギャップとは恐ろしい。思わずイエスと言ってしまいそうになる、が言わない。だってサスケ君、どうせ面倒見るの僕なんでしょ。 にゃあ、 サスケ君の腕で小さく体をまるめる子猫の鳴き声で、サスケ君に返事をしてなかったことを思い出した。 ごほん、と咳ばらいを一つして再びサスケ君と視線をあわせる。 「あのね、サスケ君。駄目なものは駄目なんだよ」 「っ…ちゃんと世話する」 「だめ。そういって結局僕が世話をするハメになるんだから」 「ううん、絶対迷惑かけねぇから」 「そんなこと言ったってここでは飼えないよ。第一ね、猫だろうと生き物を飼うっていうのはそんなに簡単なことじゃないんだよ?サスケ君猫を飼う知識はあるのかい?半端な考えで猫を飼うのはかえってその猫に可哀相だとは思わない?」 「……」 ああ、不機嫌になってしまった。言い過ぎだったかと罪悪感はあるが、後悔はしてない。こうでも言わないと彼は飼うと言い張るに決まってる。 すっかりいじけてしまったサスケ君は、俯いて猫と戯れている。指でサスケ君が猫の顎の辺りを撫でれば、嬉しそうに猫がにゃあ、と鳴いた。嗚呼、飼わないと言ってるのに人に馴れせてどうするんだ。もう飼わないと言ったし、話すことはないはずなのにサスケ君はこうして僕の部屋から出て行こうとはしない。つまり、まだ僕の口からイエスがでるのを待っているのだ。 「……サスケ君」 「………昨日はグリンピース食べれた」 「…は?」 「おとついは自分で縄結べるようになった」 「……うん?」 「先週は一人で起きれるようになった」 「……はあ」 「先月は一人でトイレにも行けるようになったのに!」 僕はこめかみに手を添えて立ちくらみで倒れそうなのを堪えた。つまり、この、目の前の餓鬼は、最近頑張っていたからご褒美に猫を飼えと。 子供じゃあるまいし。呆れて溜息さえもでなかった。グリンピースが食べれるようになったのも、衣服の大蛇丸様譲りのあの縄を結べるようになったのも、寝起きが悪いサスケ君が一人で起きれるようになったのも、夜中トイレに一人で行くのが怖くてわざわざ僕を起こしていたのに、一人で夜中トイレに行けるようになったのも、そりゃあまあ凄い進展だが、当たり前のことじゃないか。 だから?とでも言って軽く流したいけど、それだと千鳥でも流されかねない。流石にそれはまずいので、慎重に言葉を選ばなければならない。 「そうだね、君はここに来てから成長したと思うよ」 「っ…じゃあ…!」 「でもそんなの君ぐらいの歳の子なら皆できるんじゃないかな?」 「…う……でも、縄持ってるのは俺だけだ。皆は持ってねぇから苦労を知らねぇんだ」 「それは、そうだけど…」 思わず言葉をつまらしてしまった僕にサスケ君は勝った、とでもいうかのようにニヤリと腹立たしい笑みを浮かべた。いやいや、だから何だっていうんだい。勝っちゃいないし、飼う気もない。面倒くさい、もう寝てしまいたい。明日は朝早いんだよ。君には甘い大蛇丸様だから、君はゆっくり寝ていられるけど僕にはちょっとしたおつかいがあるんだよ。 「てゆーか君、何でそんなに猫飼いたがってるんだい。猫好きだっけ?」 「…………嫌いじゃない」 歯切れの悪いサスケ君がそっと猫に視線をおろすものだから、つられて僕も猫を見る。 そういえば今初めてちゃんと猫を見たかもしれない。真っ黒な毛に全身を包まれた子猫は、猫の中では綺麗な方なのかもしれない。人慣れしているのか、抱かれていることに抵抗しないこの猫は時折みゃあ、と甘えた声をだして、サスケ君の手の平へとすりよっている。世渡り上手だよ、全く。 「………はぁー…」 「頼むカブト、カブトさん、カブト様」 「呼び方変えても意味ないからね」 「チッ、クソが」 「聞こえてるんだけど」 どうしてこう、年上に対する配慮がないんだこの餓鬼は。今日何度目かの溜息をついた時、サスケ君に思い切り足を踏まれた。なにこれ、飼わす気あるのかこの子。再びでそうになる溜息をぐっと堪えれば、代わりに欠伸が一つでた。 何かサスケ君を断念させるいい案はないかと考えた時、嗚呼あの人を使えばいいじゃないかと案外簡単にひらめいた。 「サスケ君」 「……んだよ、メガネ」 「……君猫飼う気ないでしょ」 「あるっつのバカ」 「…はあ…そう。でもねサスケ君」 「だから何だよ」 「大蛇丸様の好物は生きた子猫なんだよ」 「…………!」 瞳を丸くさせ、この世の終わりのような表情を浮かべるサスケ君に噴き出しそうになるのを死ぬ気で堪えた。さぁ、どうするサスケ君。流石にサスケ君も大蛇丸様は生きた子猫を食べるほど非情な方じゃないと見破るかな。サスケ君の口から紡がれる言葉を今か今かと期待が膨らむ。しばしの沈黙のあと、ゆっくりとサスケ君の口が動く。まるでどこかの映画のワンシーンみたいにスロモーションだった。 「……飼うのやめる」 「…………そう、それは残念だな。大丈夫、猫は僕がきちんと安全な場所へ逃がしておいてあげるから」 「………うん」 「にゃあー」 …………勝った! サスケ君から預かった猫を腕に抱いた時、爪を思い切り立てられ痛かった。 ─PS, 何がしたかったのかは分かりません。 ただオカンメガネと我が儘サスケが書きたいと思いました。すみません。 |