拍手 ナルサス | ナノ

ちくり、何度めかの胸の痛み。ちくり、ちくり、ちくり――まるで小さな針で心臓を刺されているかのような痛み。止まない、止まない、止むことはない。この痛みはアンタが人のものになったその日から止むことはない。きっとこの先も続く。この関係が続くまで。もしも終わりがあるとするなら、そう、飽きがくるまで。アンタの飽きがくるまでじゃない、俺の飽きがくるまでだ。いつしかそうアンタに言ったことがあった。そしたらアンタはなら飽きられないようにしねぇとな、って人懐っこい顔でくしゃりと笑った。ちくり。思い出してはまた胸が痛んだ。分かっている。最初に飽きがくるのはアンタの方。だってこの関係はアンタにとっての気まぐれにすぎないのだから。それもそうだろ?だってアンタには妻も子もいるのだから。生徒である俺はただの暇つぶし道具、なんて。そんな風に扱ってくれたなら、どれくらい楽であっただろうか。どうせアンタの頭の中はいつだって妻子のことでいっぱいでしかないくせに、暇つぶし程度の俺に優しくする。やめて、目尻が熱くなる。これ以上惨めにさせるな。狡い、狡い狡い狡い狡い狡い狡い。アンタは狡い。

ほんとは知ってる。狡いのは俺だと。アンタの優しさにつけこんで、甘えてるんだ。甘えてるんだよ。醜いんだ、汚いんだ、狡いんだ。ねぇ、早く突き放して。

ナルト



「どうしたの」

ふいに聞こえた疑問の言葉。急になんだ、どうしたなんてこっちが聞きたい。そういった風に隣に腰掛ける担任であり、俺と世間でいう不倫関係を続けている男――うずまきナルトを睨みつける。睨む俺の視線とばっちりヤツの視線が絡まると、ナルトはまた苦笑を浮かべた。何だ、その顔は。

「うん、泣きそうだったからさ」

「は?」

素早く出た反論の言葉。我ながらナイスだ。もしあと少しでも返事が遅れていたら、頬には雫が伝っていただろう。

「あれ?違った?」

遠慮なしに顔を覗き込んでくるナルトに、あからさまに不機嫌な表情を表にしてそっぽをむく。ふん、と馬鹿にした笑みも忘れずに。可愛くない態度なんてこと自覚している。けどいいでしょ?アンタは俺に女々しい可愛さなんて求めちゃいない。

「そんなのいいから……早く」

そう誘うように口元に笑みを浮かべれば、ナルトはその目に興奮の色を移し、ゆっくり俺を押し倒す。ゆっくりゆっくりゆっくり触れる。大切なものに触れるかのように。やめて。俺はそんな対象じゃないだろ?乱暴にして、痛くして、壊して。





(ねぇ、キスマークなんていらないから、身体に貴方を刻み付けて)