なんかきゅんとした【N/首/静臨/完】 | ナノ

来神



あ、間違った。
臨也はノートを書いていた手がピタッと止まった。いわゆる写し間違いってやつだ。今は現代文の時間で『お門違い』ってのを『お問違い』と書いてしまった。簡単なミスだ。すぐに書き直そうと筆箱を探っていた時、またしても、動きがピタッと止まった。

あ、忘れた。
どんなに探しても、白い固まりが見つからない。消しゴムを忘れた。それは重要な問題だ。凄く困る。だって考えてもみろ。仲が良くもない前後のやつに「消しゴム貸して」なんて言えない。とゆーか言いたくない。それにシャーペンの後ろについてる、あの小さい消しゴムを使うのも嫌だ。あれは使うものじゃないと思う。そうだ、あれは飾りのような。だから使いたくない。けれど誰かに借りるのは絶対嫌だ。言っておくが、間違った部分をシャーペンでぐちゃぐちゃに消して、横に正しい文字をかくなんて論外だ。ありえない。汚いのは困る。だが放っておくのもよろしくない。せめて前後、左右に新羅か門田がいれば。そう臨也の考えが浮かんだ時、ゴロゴロと目の前に何かが転がってきた。

(………これは……消しゴム?)

不自然な形をしている。いうなれば、普通のサイズの消しゴムを無理矢理半分にひきちぎったような、そんな形。
驚いた臨也がたどたどしく視線を隣の席の静雄の方に向ける。静雄は臨也を見ることなく、ただノートをとっている。

「何?シズちゃん」

かろうじて小さい声で呼び掛ける。静雄は未だに臨也に視線を向けることなく、目線は黒板に向いたまま

「やるよ。二つあるから」

(嘘つけ)

臨也は顔を歪めた。どうみても不自然なこの消しゴムは静雄の手元にあるこれまた不自然な消しゴムとくっつけると、ピッタリあいそうだ。

臨也は不服そうに、黙って消しゴムを使うことにした。

(シズちゃんのくせにこんなの)

消えていく文字を見て、思わず口元がゆるんでいく。

(むかつくけど)

あとで礼の一つでも言ってやろう、と臨也は消しゴムをぎゅっと握り締めた。

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