来神
とんとん
授業真っ只中、肩を叩かれ振り返ると新羅から小さなメモ用紙のような紙を渡された。
「臨也から」
小声で伝えられたことだったが、口の動きで何を言ってるのか理解できた。
前に向き直ると、臨也がこちらを見て、いつものあの胡散臭い顔で笑っていた。
小さなメモを開くと、そこには臨也の字で綺麗に
《お腹すいたぁ》
と書かれていた。
凄くどうでもいい内容にイラッとしたが、授業も暇だったし、なにより返事を返さないのは気分が悪いから、ノートの端を小さく破り、返事を殴り書いた。
《知るか》
新羅に渡すと、先生の目を盗んで隣の席のやつにメモを、正しくはノートの切れ端だが、それを渡していた。臨也に回して、ときちんと伝えて。
とんとん
時間もたたない内にまた新羅からメモを渡された。今度は新羅は何も言わなかったけど分かってる。臨也からだ。
《冷たいなあ。折角の俺からのラブレターだよ?あれ照れた?照れたでしょ?図星?アハハハッ(≧∇≦)》
文字と共にそえられた顔文字にイラッとしてメモ用紙をくしゃくしゃにしていた。実際顔が熱くなってしまったのが悔しい。
《殺す》
メモを見た臨也がニヤニヤしているのが見える。むかつく。静雄が窓の外に目をやった時、また肩を叩かれた。
とんとん
《こっちから見えたよー?赤くなってたねぇ。恥ずかしいねぇ》
《殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す》
とんとん
《そんなに同じ漢字ばっか書いてて疲れない?てか最後らへん文字潰れてるしww》
《よし、チャイム鳴った時がお前の最後だ》
とんとん
いい加減イライラしてきた新羅に渡されたメモを詫びる気なく受け取る。
《シズちゃんはほんとに分かりやすいね。流石単細胞。でもさ》
最後まで文を目に通した時、丁度チャイムが鳴り響く。グチグチと小言を漏らす新羅を無視して、臨也の方に足を向けた。
「おい、臨也」
「お、シズちゃん。楽しかったね、またしようか」
「ん、ああ…それよりこれの『でも』の続きって?」
メモを広げ、《でもね》と書かれた文字を指さす。すると臨也はニコッと笑顔を浮かべると「知りたい?」と首を小さく傾げた。それに黙って頷けば臨也が内緒話でもするかのように、静雄の耳にこそっと顔を近付けた。
「そーゆーとこ嫌いじゃないよ」
どくん、何かが小さく跳ねた。
握ったメモがくしゃくしゃに