四人組
「あっちぃーな」
「ああ」
「………」
暑さを遮るように太陽に手をかざして空を仰いだ。気まずさに耐え切れなくて、溜息の一つでも漏らしたかった。
俺は今サスケと二人で下校している。いつもならナルトやシカマルも一緒だけど、今日はナルトが担任に呼び出しをくらい、シカマルが生徒会の仕事をするらしくて俺達が先に帰ることになったのだ。
思えば俺、サスケと二人で帰るの初めてじゃねぇか?ナルトやシカマルとは二人で帰ったことがある。それはサスケにも言えることだ。
何を話せばいいんだ。つか普段何話してたっけ。
続く無言の空気が重くてもはや苦痛なのに、サスケは清々しい顔で何も気にした風はない。
このまま無言が続いて、つまんない奴と思われたら嫌だと思った。だから持ってる知恵を振り絞った。
「思えば俺とおまえで帰るの初めてだな」
「そうだな」
「………」
続かねぇ!
びっくりする程会話が続かない。俺が悪いんだろうか。それともサスケに会話する気がないのか。暑さと焦りから汗が頬を伝った。
「あっ、サスケくーん」
その時、サクラとイノの演技がかった高い声が後ろから聞こえた。駆けて来ているのだろうパタパタと足音が聞こえ、俺も何度かこの光景に遭遇しているので、別段驚きもせず足を止め振り返った。
「サスケくん!私たちと一緒に帰ろうよ」
「そうそう。キバなんてほっといて」
「あぁ!?なんかってなんだよ!」
「駅前にね美味しいケーキ屋さんが出来たんだってぇ〜」
けっ! どうせ俺はお呼びじゃねぇわな。
俺の存在を完全にスルーする二人に舌打ちをした。
早く帰ってアカマルを撫で回そうと決めた俺は、帰宅路に足を向き直した 。
「じゃあな、サス――」
「甘いものは好きじゃないし、お前等と帰るつもりもない」
俺と帰っても気まずいだけだし、てっきりサスケは二人と帰るものかと思っていたから、サスケのハッキリとした拒否の言葉に拍子抜けした。
「えーサスケくぅん」
「でもそんなサスケくんもクールでステキ」
俺だったら好きな奴にそこまでハッキリ拒否られればめげそうだが、サクラとイノは違ったらしく、惚けた顔でサスケを見つめていた。
「行くぞ、キバ」
「え…ああ」
踵を返したサスケに遅れないよう後に続いた。
「いいのかよ?俺のことなら気にしないでいいぜ?」
「お前といるほうがいい」
「え?」
「腹へった」
「あ、お、おう。マクド寄っか」
「ああ」
思いがけないサスケの言葉にドキッとした。ああやばい、これは嬉しいかもしれない。
何だか振り回されっぱなしな気がしたが、ふわふわした気持ちに免じて、サスケの要求を飲み込むことにした。
日差しが強くなったのか、さっきよりもあつい。
「キバァー!サスケェー!」
大声で俺達の名を喚き散らしながら、遠くから駆けてくるナルトとシカマルのに俺達の足は再び止められた。
「でけぇ声で呼ぶなっつの…」
呆れたように呟いたサスケにちらりと視線を寄越すと、ふわりと笑ってナルト達を見ていた。
さっきまではあんなに二人きりが辛かったのに。なんでだ………すこし残念…?