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「サスケは何味にすんの?」

普段から全裸でうろつく水月が夏の暑さに耐え切れないのは分かっていたことで、アイスが食べたい、食べなきゃ歩けない。と駄々をこねてその場に座り込み、頑なに動こうとしない水月を放っておくわけにはいかず、軽い溜息と共にアイスを食べることを承諾したのはつい先程のこと。

甘味屋に着いてから水月は爛々と目を輝かせこれまでにないくらい生き生きとしている。
どうせなら皆で食べようと提案したのは重吾で、甘いものが苦手な俺も、纏わり付く暑さと、すぐそこの甘味屋は甘さ控え目で有名だぞ、というカリンの言葉に背中を押され、アイスを食べることになった。

「僕はどうしようかな。バニラにしようかな。いや、チョコもいいよね」

水月は頬杖をつきながら、カリンよりもずっと女みたいにあれこれ悩み、嬉々そうにメニュー表に視線をさ迷わせていた。



アイスといえば、昔はよくイタチと行きつけの甘味屋で食べていた。
「今日のおやつは外で食べてらっしゃい」と母さんに小銭を渡された時はいつもそこの甘味屋に行っていた。
食べるのが遅かった俺は、半分食べた頃にはアイスが溶けて指がどろどろになっていた。ポタポタ落ちるアイスを見てイタチは眉を下げて、仕方ないな。と笑って、清潔なハンカチで俺の手や口元を拭いてくれた。
食い意地ははってるくせに、胃袋が小さい俺はすぐに腹いっぱいになって、どろどろのアイスをイタチに差し出していた。イタチはまた仕方ないな。と笑って、美味しくもない俺のアイスの残りを食べるのだった。だから俺は甘えて何度でも残して、イタチに不味いアイスを差し出した。
俺はいつもバニラを、イタチは抹茶を頼んでいた。俺は抹茶が苦手だった。子供の俺に抹茶は苦かった。
一度味見さしてもらった時、苦さに舌を出してしかめっ面をした俺にイタチは「サスケが大きくなったら美味く感じるさ」と頭を撫でてくれた。それに大きく頷き、俺は笑った。俺が大きくなったら、一緒に抹茶アイスを食べようね。と。



「店員さーん」
「はーい」

ようやく決まったらしい水月が間延びした声を上げ、それに気付いた店員がそそくさと伝票を持って現れた。

「ご注文を承ります」
「ウチはストロベリーアイス」
「俺はバニラで」
「僕はねーオリジナルスイートパフェDX一つ」
「パフェかよっ。水月お前一人で食えんのか?」
「なにカリン、欲しいの?あげないよ?」
「いらねぇよカス!」
「ほんとカリンと二人で一つのもの食べるとか無理だから。ごめんね」
「いらねぇっつってんだろ!」
「あのお客様…以上でよろしいですか?」
「いや、あと一人。…サスケは?」

喧嘩をおっぱじめる二人をよそに重吾が気遣うように視線を寄越した。
俺は無言でメニュー表の中の一つを指差した。



「はい、ではご注文を繰り返させて頂きます。」
「オリジナルスイートパフェDXがお一つ、ストロベリーアイスがお一つ、バニラアイスがお一つ、抹茶アイスがお一つ、でよろしいですね」
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