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里を出て行こうとしたサスケくんに「行かないで、何でもするから」とみっともなく泣き崩れた私に、サスケくんは頷いてくれた。それは同情からくるものだったかもしれない。
どこにも行かないから泣くな、と涙を指で拭ってくれたサスケくんの悲痛な表情を今でも忘れないない。彼の方がずっと泣いてしまいそうだった。

それがサスケくんが私に見せた最後の感情だった。



彼が里を抜けようとしたあの日から二年がたった。サスケくんは第七班の一員として、ずっと私の隣に居た。
ただ変わってしまったことは、サスケくんが力に執着しなくなったことだ。
里抜けする以前のサスケくんは、兄への復讐心に身を奮い立たせ、ナルトの急成長に焦り、戸惑い、嫉妬し、あんなにも苛立っていたのに、今は…
ナルトが新しい技を見出だし、自慢げに私達に披露しても「すごいな」と一言、賞賛の言葉を述べるだけだった。しかも笑みさえ浮かべて。
そんなサスケくんが私は怖かった。
まだ復讐心にギラギラしていたサスケくんの方が人間らしかった。
今のサスケくんから、人間らしさを感じることは出来ずにいた。

全部、私の所為なのだろうか。

いつか私がサスケくんが消えてしまいそうで不安だと漏らした時、なら一緒に住もうとサスケくんが提案してくれた。それから同棲し始めた私達だが、その時サスケくんが言った「これでサクラはいつも俺を見張ってられるから、安心だろ」という言葉が今も頭の隅でガンガン鳴り響いている。
私がサスケくんを支配してしまっている。



今日も忍務後、真っ直ぐ帰宅したサスケくんが、先に家で私の帰りを待っていた。

「おかえり、サクラ」

彼は笑った。

「ただいま」

サスケくん、と言いかけて、止めた。目の前にいる人は本当にサスケくんなのだろうか。私が恋したサスケくんなのだろうか。もしかして私は、サスケくんを、彼の生きる糧であった復讐を奪うことで殺してしまったのではないだろうか。

「サクラ」

呼ばれて顔を上げると、サスケくんの顔が私を見下ろしていた。私を見る困ったような表情は無防備だった。
すっと手が伸びてきて、以前よりずっとごつごつした男の人の手で頬を拭われ、そこで初めて泣いていたことに気付いた。

「泣くな、サクラ」
「ごめんね。…ごめん、サスケくん」
「俺が傍にいるとつらいか?」

自嘲気味に浮かんだ笑みに、頭を思い切り殴られたような衝撃を覚えた。

「ちがうっ!…そうじゃ…そうじゃないの」
「不安、なの…ただ不安で」

何が?何に?
そんなの分からない。

「俺はお前の前からいなくならない。だから、泣くなサクラ」
「ごめん、ね…ごめんなさい」

優しいサスケくんは私に同情する。
心臓を私に預けるように、その身に抱き寄せてくれた。
「これでサクラはいつも俺を見張ってられるから、安心だろ」
侵食する言葉は私を蝕む。やがて私の息の音を止めるだろう。
大蛇丸の呪印より、サスケくんのお兄さんより、私の方がずっとサスケくんを縛り続けてる。
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