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食欲がない。一人になると憂鬱なことを考えてしまいそうで、一人近所の公園に出かけた。淡いオレンジ色をした夕日がこちらを見ており、早く夜になればいいのにと目を反らした。
時間が時間だからか、公園には人一人おらず、ベンチはどこも空席で好きなところに自由に座ることができた。
公園で遊ぶ歳でもないので、することがない。
アイスの一つでも買っておけばよかったか。ああ、金持ってないんだった。自問自答をすれば、余計虚しくなるのを感じた。
温い風は気分を余計に滅入らせた。

最近サスケはよく笑う。見たこともないような顔をして、ふっと笑うのだ。カカシも前からよく笑ってはいたが、それとは違う笑顔を見せるようになった。そう、二人に固い絆が出来ていて、ただそれに自分が入っていないだけだ。それが無性に悔しいなんて、二人の知ったことではないのだ。
ぽたり、ぽたり、と"悲しい"がこぼれた。流すというよりこぼれるといった方が相応しいそれだった。

「あれ?ナルトじゃない?」

大好きな声が、大嫌いなタイミングで聞こえた。反射的に顔をあげてしまった先に立っていたのは勿論サクラで、目が合った瞬間彼女の感情に従順な目が、大きく見開かれた。

「ナルト…アンタ泣いて」

気付かれてしまったが、男だから、好きな子の前で、しかもこんなくだらない理由で泣いているなんて知られたくなくて、今更どうしようもないのに顔を見られないないように、証拠を消すため、痛いぐらい乱暴に顔を拭った。赤くなった目元も全部、夕日のせいにして、大好きなサクラに精一杯の顔で笑ってみせた。

「サクラちゃん!俺を見つけて会いにきてくれるなんて嬉しいってばよ!」

聞かないで、触れないで、と体全部で示したつもりが、サクラは一瞬泣きそうに眉をすぼめただけで、すぐに綺麗に笑った。

「ばかね…」
「アンタ作り笑い下手すぎ。私に感情を隠そうなんてまだまだ早いんだから。辛いことがあるなら泣きなさい」
「別に俺辛いことなんか…」
「うそつき」

笑った顔に見とれていると、手が伸びてきて、優しく目元をなぞられた。その仕種に、伝う温もりに、ナルトはぐっと目に力をこめた。熱くなる目尻を男の意地で堪えて、サクラから目を背けた。

「サスケくんのこと?」
「え?」
「構ってくれなくて寂しい?」

瞳が揺らいだのが自分でもわかった。
図星ね。花が綻びるように笑ったサクラに、何でもお見通しなのだと匙を投げた。そして首を左右にに大きく振った。

「サスケだけじゃない。カカシ先生も、俺の相手してくれないし。…俺は」
「……」
「俺は二人の大事な人になりたい」

俯き、風で舞う砂に焦点を合わせた。くすくすと笑う声が耳を独占した。何事かと顔をあげると、はにかむサクラが真っ直ぐナルトを見ていた。

「欲張り」

伸びてきた手に咄嗟に目をつむると、額に可愛くない痛みが訪れた。

「い゛っ!…え?」
「二人に伝えてきなさい。アンタの言葉でそのまま」
「え?」
「ほら、早く」
「う、うんっ。分かったってばよ!」

有無を言わせないサクラの申し出に、否と言えるはずもなく、訳も分からないまま立ち上がった。

「あ、ありがとう。サクラちゃん」
「はいはい」

犬を追い払うように、しっしっと手で追い払われ、もう一度お礼を言って走り出した。
だからその後サクラが、分からず屋。と呟いていたのには気付くはずもなかった。



忍務が終わってから時間が経っているし、二人共家にいるのだろうか。とりあえず走る足は止めず、前へ前へと進んで行った。すると向こうにサスケとカカシが並んで歩く姿を見付けた。

「サスケ!カカシ先生!」

息が切れていたから、言葉はとぎれとぎれになったが二人には伝わっていたようで、同時に振り返った。それさえも息がぴったりで、少し泣きそうになった。

「どうしたの?そんなに息きらして」

膝に手をつき肩で息をするナルトに、歩みよってきた二人は不可思議な視線を向けているだろう。
伝えなきゃ、伝えなくては。足りない頭はポキャブラリーが少ない。それでも必死に今の自分の気持ちを伝えようと顔を上げた。

「俺さ、俺さ、サスケとカカシ先生が好きだ」
「え?」
「は?」
「だからさ、俺さ、二人が仲良くしてんのとか嬉しいはずなのに、そこに俺が居ないのが悔しくてさ。俺ってばすっげぇ嫌な奴なんだろうけど、悔しかったんだ」
「…俺も二人の大事な人になりた――」

突然サスケに額を撫でられた。白くて細い指先にも、確かに温度があって、意志を持って動いている。

「サスケ?」

伝えることに必死で、サスケの口先が上がっていることに気付かなかった。皮肉気でもなく、ただ純粋に笑っている。

「赤くなってる」
「あ…さっきサクラちゃんにデコピンされて」
「目もデコピンされたとか?」

ふっと笑ったカカシが、からかうように顔を覗き込んできた。全てを見透かしたその瞳は、先程泣いていたことにも気付いているだろう。

「いや、それは…」
「ナルト、お前はとっくに俺の大事な人だよ。それはサスケにとっても同じことだと思うよ?な、サスケ」
「……っ…俺に振るな」

ほんのり頬を染めたサスケの顔がすべてを語っていた。穏やかに笑ったままのカカシの大きな手が、ナルトの頭を覆うようにゆっくり撫でた。

「よし、じゃ行こうか」
「行くってどこに?」
「お前の家だ、ウスラトンカチ」
「俺の家?」
「ほらこれ」

そう言って上げたカカシの手には、葱に豆腐にうどんに豚肉など鍋の材料とおぼしき具材が入っていた。

「これ?俺ん家で食うの?」
「ああ、サクラも誘ってな」
「俺ん家ってばすっげぇ狭いってばよ?」
「知ってるさ」
「なんでまた急に?」
「サスケがな、ラーメンばかりのお前の食が心配だっ「うわああああ!」
「カカシてめぇ!余計なこと言うな!殺すぞ!」
「お前じゃまだまだ俺に敵わないよ」
「くそ!殺す!絶対殺す!」

必死なサスケがおかしくて込み上げる気持ちに任せて笑った。ここでありがとうなんて言おうもんなら千鳥を食らわされるのが関の山だと喉まででかかった言葉を飲み込んだ。

「俺ってば、サクラちゃん呼んでくるってばよ!」

空気いっぱいを腹にすいこんだ。腹の虫が歓喜の声をあげた。



あとがき
サスケ空気ww
おめでとう、今年も祝えてよかった
七班好きです、やっぱ
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