小説 のコピー | ナノ
それから多くない言葉を交わして、カカシとサスケは同じ方向に歩いていった。
それを落胆の色を交えた視線を送って、悩ましげに顎に手を添えた。

「なんかあの二人怪しいわね」

最近やけに共に行動する二人。師弟以外の間柄ではないだろうと分かってはいたから、深い意味はなかった。だが、ナルトを落胆させるには十分だったようだ。彼に犬猫のような獣耳が生えていたなら、間違いなく垂れ下がっていただろう。先程お昼を共にする約束を交わした時とは打って変わり、その顔は沈みきっている。あからさまに感情を剥き出しにするナルトを無性に愛おしく思った。もしかするとこれが母性ってやつかもしれない。

「冗談よ、冗談。ほら、行くわよ」
「…、了解だってばよ」

口先を尖らしていたナルトが、へらりと笑った。その笑顔があまりに寂しそうだったものだから、カカシとサスケを少しだけ責めたくなった。何もしていないのに、罪悪感に押し潰されてしまいそうだった。



クナイが頬すれすれのところで風を切った。ビュンッと音が聞こえるほどの距離の近さだった。急性の毒つきクナイが、あと少しで頬を掠っていたかと思うと、恐怖で身体が動かなくなった。足が震え、腰がひけ、奥歯がカタカタと音をたて、頭の片隅には戦意のカケラもなくなったことに気付いたのはサスケと抜け忍の者がほぼ同時のことで、砂埃を立て、先に地を蹴ったのは抜け忍の方で、印を結びながらこちらに向かってくる。体が言うことを聞かず、目を見開き震えることしか出来ないサクラに、舌打ちの音と共にサクラを庇うように抜け忍の前に回り込んできたのはサスケだった。

「っつ―…」
「…サスケくん!?」

突然サスケの顔が歪み、前に屈み込むように動きが止まった。くそっ、と唾を吐き捨てるように呟いたサスケは、足を押さえており、負傷していたのだろうか、痛みに耐えているような表情で、その額からは一筋の汗が輪郭をたどって流れ落ちた。助けなければ、そう思ったものの、実戦に弱いサクラではどうすることもできない。考えている暇などないのに。
そうこうしてる内に、抜け忍は目前で、せめてサスケだけでも、と庇うようにサスケを抱きしめた。

「はい、そこまで〜」

ドサッと重い音が周りの森林を揺らし、場に添わない緩い声が頭上から聞こえた。聞き覚えのある声に安堵を覚え、僅かにサスケを抱きしめる腕の力を緩めた。

「もう大丈夫だよ。サクラ、サスケ」

声に感情があるかのように、優しい声がふわりと風に乗った。サスケが突き放すでもなくやんわりとサクラの腕をのけた。慌てて身を引いたが、サスケは面白くなさそうに口を紡んでカカシを睨んでいた。
そこに慌ててナルトが駆けてきた。

「大丈夫だってばよ?サクラちゃん」
「…うん、平気。ありがとう、サスケくん」
「俺は何もしてねぇ。むしろ足を引っ張っただけだ」

目を伏せたサスケの頬に、睫毛の影が落ちる。足、と聞いてサスケの足が何かしら負傷していたことを思い出した。それはナルトも同じのようで、興味津々にサスケの足首を凝視している。

「サスケってば怪我してんのか?」
「…大したことじゃない」
「何が大したことじゃないよ。あれほど無茶はするなって言ったでしょ。お前はほんと言うこと聞かないね」

遮るように口を挟んだのはカカシで、反論を許さない物言いにバツが悪くなったのか、サスケはふいっと顔を反らした。カカシと関わるサスケは、いつもより幾分も幼く見えた。
サスケの態度に軽い溜息を漏らしたカカシは、ひょいっと擬態音をたて、サスケを肩に担いだ。

「なっ!自分で歩ける、降ろせ!」

チークで染めたように顔を赤くしたサスケが羞恥から逃れるため、じたばたと足で空を切った。けれど、その足の動きはどこか遠慮がちだ。

「無茶させたのは俺の責任でもあるからね。先生らしいことさして頂戴」

途端、サスケの動きが止まった。そして諦めたように、ぐにゃりと体の力が抜け、その手だけはカカシの服を力いっぱい握っていた。せめてもの抵抗に見てとれた。

「…勝手にしろ」
「そうするさ」

先生の顔をして笑うカカシに、二人の絆をかいま見た。反射的にナルトを見てしまうのは、先日の出来事からだろうか。
眉を下げて、どこかぎこちなく茶々を入れるナルトはきっと気付いていないのだろう。疎外感を感じていることを。
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