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柄じゃないでしょう








走り出したい衝動を抑え、一歩一歩の歩幅を大きくして部屋に入った。何も考えたくなくて、すぐに寝てしまおうとせっせと敷き布団を用意する。生憎同室のあいつの布団を用意してやる余裕はない。布団を敷き終えた時、がちゃりと部屋の扉が開いた。
誰か、なんて見るまでもない。
俺と同室になったサスケだ。目もくれず俺は早々に布団に潜り込んだ。何も見たくも聞きたくもなくて、外を拒絶するように頭まで布団を被った。

「もう寝るのか」

低く安定した声が少し遠く聞こえた。返事はしない。俺の機嫌とサスケは関係ないけど今は誰とも話したくない。ああ早く俺の意識飛ばないかな。
サスケは端から返事なんて期待してなかったのか、それ以上何も言わずただ布団を引きずる音が聞こえた。布団を敷いているのだろう。

今日は忍務があった。Cランク忍務だっただろうか。どっかの国の侍を護衛する、そんな忍務だった。途中、山賊が現れた。ヘマをした。散々に言われた。俺をたくさん否定された。悔しくてそいつを殴ってやろうとしたらカカシ先生に止められた。何も言わないカカシの目が俺を咎める。

今日中に木の葉に帰れそうにないから、泊まって行こうとカカシ先生は知り合いの宿を借りた。日付が変わっても構わないのに、カカシ先生はきっと俺に頭を冷やさせるつもりだったのだろう。

宿への移動中、誰も一言も話さなかった。皆俺に気を遣っているのだと苛ついた。関係ない皆に苛ついた。

お前みたいな低能な奴が人を死なせる。
確かに、俺はいつも皆の足を引っ張ってきた。役立たずと言われても唸るしかなかった。居ても居なくてもいいんじゃないか。むしろ居た方が皆を危険にさらしてる。俺は皆の傍に居てもいいのだろうか。いつか皆に見捨てられるなら早い内の方がいい。一人は嫌だ。俺は一人だ。俺が、俺は、

その時、布団をぽんぽんと叩かれた。驚いて一瞬体が強張ったか、一定のリズムを刻んで止まないそれに段々と体の力が抜けていった。こんなことサスケ以外出来るやつがいない。だってこの部屋には俺とサスケしか居ないのだ。だがサスケはこんなことしない。何だ何だと思いつつも布団から顔を出せない俺は臆病で頑固だ。
ぽんぽんとまるで子供をあやすように優しく布団を叩かれる。

「馬鹿なくせに色々考えてんじゃねぇよ」

聞いたことないくらい優しい声が僅かな笑みを含んで空気を震わす。布団越しであるのが惜しいと思わせるほどだった。何だよ急に、サスケのくせに。

「今のままでいーんだよ。ウスラトンカチ」

不器用にも一生懸命俺を慰めてくれようとするサスケが、布団越しに俺の頭を撫でた。体温が感じられないのは寂しいが、俺の頭の上にある重みは確かなものだ。そう思うと急にサスケの顔が見たくなって、口を利きたいと思った。

サスケの手の重みが引いた時、俺はおずおずと布団から顔を出した。それより少し早くカチッと音が聞こえて、部屋は真っ暗になっていた。ごそごそと目の前の布団が動くのが見える。

いつか第七班でこうして宿に泊まったことがあった。その時も俺とサスケは同室だった。俺が夜テンションが上がってサスケと話そうとすると、サスケは心底嫌そうな顔してもう寝ろ。明日も忍務がある。と淡々と言った。つまんねぇと思ったけど、確かに俺も疲れていたから言われるままに布団に入った。ふとサスケを見ると、俺に背中を向けて眠っていた。

今そのサスケがこちらに体を向けて眠ろうとしている。どこまでも俺を甘やかす気らしいサスケに胸がむずむずした。こんなのお前らしくねぇってば。今日の俺がらしくなかったように、こいつも相当らしくない。

「…サスケ」
「…何だ」

すぐに眠りにつくはずもないので、そう間も開かずサスケが返事をした。暗闇で顔は見えないが、サスケもこちらを見ているのだろう。

「おやすみ…だってばよ」
「…ん、おやすみ」

サスケが笑うのが空気でわかった。





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