「夏だ!海だ!バカンスだ!」
両の手を上に向けて、うんと伸ばした。清々しいその顔の横で、陰鬱な顔が一つ。対照的なそれは、二人の性格をも表しているかのように見えた。 叫ぶ男の横で、鬱陶しそうに髪をかきあげ、溜息にも似た息をはきだした。 「今は冬だし、森だし、忍務中だ」 的確な答えに、むっと眉を寄せるも直ぐに開き直ったような明るい笑顔を浮かべた男に、冷たい風が吹き荒れた。 「へっへーん。忍務は終了したじゃん」 「ばっかじゃねぇの、死ね。忍務は報告し終えるまでが忍務なんだよ死ね馬鹿」 「…あれ、何でここまで傷付けられてんの」 泣きそう。と呟いた男に、泣け馬鹿死ねと間髪入れず返した男だが、実際泣かれればそれはそれで慌てるのだ。このポジティブな男がこのくらいの暴言で泣くことは、皆無に等しいのであるが。 男曰く、暴言は愛情の裏返しらしい。 「でもさーでもさー海いきたくね?水着ギャルみたくね?こんがり焼けたくね?バカンスでバカーンしたくね?」 「後半はもう出来てると思うがな」 「え?何?」 「いや。馬鹿は死ねばいいのにって思っただけだ」 「それも結構酷いから。…なに俺のこと?ねぇ、俺のこと?」 綺麗に笑う顔は肯定の証。造形だけなら完璧なのに、捻くれた男の性格に同情した。途端に、察したらしい男に腹に肘鉄砲を食らわされた。 「…げ、元気ですね…サスケさん」 「ああ、千鳥だってまだまだ出せるぜ。食らうか?」 口元に孤を描いて、手をわきわきと動かした男に、「遠慮しとく」と顔を青くした男が居た。 |