蒼と淡紅のコントラスト | ナノ


※学パロ/後輩×先輩










淡紅のコントラスト







青色を桃色で彩る。
ひらひら、ひらひら
風に吹かれては舞い上がる。
漂う雲は気まぐれで、
少し肌寒くはあるが、
本日、好天。



桜舞う今日は卒業式









ぐすぐすと鼻を鳴らす音が聞こえる。カシャカシャと写真を撮る音が聞こえる。「ありがとうございました!」と野太い声が響くのが聞こえる。時折女子の在校生の「〜先輩に第二ボタン貰いに行こう」という会話も聞こえた。

どれも遠い世界の音のようで、ナルトはぼんやりと立ち尽くし雑音に耳を傾けていた。


「ナルト」


唯一ハッキリ聞こえた声に現実に引き戻された。
振り返ることは気が重く感じた。だが体は自然と後ろを向いた。


「………サスケ…先、輩」


発した音が聞こえにくかったのは決して声が震えていたからではない。周りの雑音が煩かったから。

サスケは整った眉を少し下げ、切れ長の瞳に長い睫毛をゆっくり伏せて、綺麗に微笑んだ。
その笑みはどこか哀しそうにも見えた。

サスケの左手へと握られる筒を見て、ああ本当に卒業してしまうんだ、と何故だか鼻先がつんと痛くなった。









「サスケ先輩!」


サスケは返事をする代わりに勉強中にだけ掛ける眼鏡を外して振り返った。
ナルトはにこっと人好きな笑みを浮かべ、一枚の紙をサスケの前へと差し出した。


「これ、もうすぐ行われる冬の大会のトーナメント表」


ナルトの少し焼けた手が、紙の一部を指差す。


「前にサスケ先輩さ、こいつと一回戦(や)ってみたいって言ってたじゃん?」
「ああ…」
「でもそのまま戦らず仕舞いで引退しちゃったじゃんか。んで俺ってば次こいつと当たんの!だから先輩に見に来てくんないかなって」
「…………」


サスケの表情は変わらなかった。ただ聞き流すように「ああ」と答えた。
ナルトは気にする様もなく、やった!と小さくガッツポーズをしていた。





****************

ナルトとサスケは一学年違いの同じ剣道部のメンバーであった。人なつっこいナルトの性格からか人付き合いの苦手なサスケともすぐに親しくなった。ナルトは事あるごとに「サスケ先輩、サスケ先輩」と慕ってくれる可愛い後輩であった。

高校で初めて始めた剣道も始めは下手くそで、部内でもドベであったナルトだが日がたつにつれ少しずつ上達していった。それは部内でトップの成績を誇るサスケと同等に競えるくらいに。
ナルトはサスケと一度真剣に試合をしてみたいと思っていたし、それはサスケとて同じことだった。

そして三年にとって最後の夏の大会が終わった日、ナルトとサスケは試合をした。勝者は――サスケであったわけだが。それもギリギリであった。

そしてサスケの学年は引退を迎えた。

部活を終えた後は受験シーズンに入る。それからは勉強三昧であった。
サスケの目指す大学のレベルは相当高い。つまりいくら優秀なサスケでも必死で勉強しなければ難しくあった。
部活を辞めてから剣道の腕は勿論落ちている。それにつれて耳に入ってくるナルトの好成績。嫉妬をしていたのかもしれない。

サスケにとってナルトと話すことは苦痛となっていた。

****************





そして試合当日―

会場にサスケの姿はなかった。

落ち込みながらも何かあったのではないかと心配したナルトは試合帰りの足でサスケの家へと寄った。

家からは兄らしき人が出てきて、「今日サスケ先輩何かありましたか?」と聞いたナルトに兄らしき人はきょとんと首を傾げて「今日はずっと家に居て勉強していた」と。

翌日ナルトはサスケに詰め寄った。
何で来てくれなかった?来てくれるの待ってたのに。

サスケは教科書に視線を下ろしたまま言った。聞いたこともないような冷たい声で。


「…お前と話してるとイライラする。」





それからサスケとナルトが言葉を交わすことはなくなった。
だが決してナルトはサスケに怒りの感情を抱くことはなかった。

ナルトにとて分かる。受験生の精神的状況を。ナルト自身中学受験で嫌というほど味わってきた。
何事にもイラついた。

それはサスケとて例外でないはずなのに、ナルトは追い詰めた。自己満足の為に人のことも考えず、サスケを追い詰めた。言うはずがない冷たい台詞をサスケに言わせたのだ。

苦しめたのだ、大好きな人を。

それから風の噂でサスケが志望校に推薦で受かったと聞いた。









そうして迎えた卒業式

ナルトは思わぬ人に声をかけられ内心どぎまぎしていた。

サスケは風に吹かれて乱れた横髪を耳にかけ、「あの、さ」とバツが悪そうに切り出した。

ナルトの胸がずきりと痛んだ。
そんな顔をさしたくはないのに。
今の二人の距離ではふざけた冗談さえ言えない。
ナルトは自身が上手く笑えないことを判断し、表情を隠す様に頭を下げた。


「先輩、卒業おめでとうございます」


今度は普通に喋れた。
地面の一点をじっと見つめた。目尻が熱くなっているのなんて認めない。


「…ありがとう」


ナルトが頭を上げれずにいると、サスケから声がかかった。優しい声色で。

その時ぽたりと雫が下へと零れてしまった。雫は地面の一点を濃く彩った。ああ、やばい。
一度溢れ出したものはナルトの意志とは裏腹にぽたぽたとナルトの下にだけ雨を降らす。
手足が震えた。どうか気付かないで。


「………ナルト」
「…………はい」
「俺、お前に酷いこと言ったよな」
「…………」
「謝っても許されないって分かってる」
「………」
「でもナルト、これだけ言いたかった」
「……」
「好きだった。ずっと」


サスケの声が段々と小さくなっていくのが聞こえた。
それはきっと照れていたからではないだろう。
声が震えていた。言葉がとぎれとぎれだった。

ナルトが涙でぐしゃぐしゃの顔をあげると、同じように顔を濡らしたサスケと目があった。


「…何でナルト…お前が泣いてンだよ…ぉ」


そのままサスケはその場にしゃがみ込み、膝に顔を埋めて「ごめん」と繰り返しながら嗚咽を漏らしていた。
ナルトは同じ様にサスケの前にしゃがみ込み、サスケが謝罪の言葉を繰り返す度に「ううん」と応えた。



泣き止んだサスケにナルトがキスを落とすまで後もう少し。


――桜咲ク、君ニ幸アレ







―PS.

やっと一つ書き終えました(本当にな)

リクして下さった匿名様、素敵なリクありがとうございました。
出来はこのようなものになっておりますが、よろしければお持ち帰り下さいませ!勿論返品結構です!苦情も受け付けます^^;

では、ありがとうございました。
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