traceのけりriちゃんから頂きました。
※BASARA、小十郎夢(ドリーム小説)となっております。
最近私は、おかしな夢をよく見る。毎晩毎晩、という訳ではないけれど、とある条件を満たした日だけ見ることが出来るようだ。
まず、夢の内容はこうだ。大きなお屋敷に私は居て、自然と足が向かうのは一つの道場で。そこには着物を着た片倉先生が竹刀を握り何か声を上げている。そしてそこに伊達先輩も着物を着て笑っているのだ。場所は毎回変わるが、出演人物は変わらず。そして不思議なことに、私はそこが夢だと理解しているくせにどか懐かしく感じているのだ。―夢とは記憶を整理している場所だと言ったのは誰であったか―
次に条件である。それは学校で片倉先生の授業があったときだ。初めて夢を見たときも片倉先生に出会ってその夜だった。初めて授業を受けた日も先生の広い背中を見ていると何か懐かしさを感じた気がする。本当に不思議だ。もちろん、私達は初対面の筈だろうし、先生も私に対して何か言ってくれた訳ではなかったのだ。今から考えると他の生徒より目が合う回数が多かったような気がする。
そして私は一つの実験をすることに決めた。決行は本日の先生の授業中。今から始めるのである。何をするかと言うと、まあ、寝るのである。先生の声を聞きながら寝た場合どんな夢を見るのだろうか。大人らしい低めの声が耳に心地よく、すぐに微睡み始めた。
ふわふわとした感覚。これはいつものこと。そして夢を見るのだ。予想通り今回の夢はいつもと違った。
いつも私は遠くから先生を眺めているだけだったのに今はすごく近い。先生は笑顔で私に笑いかけてくれて。私も笑顔で名前を呼んだ。
「こ、じゅう…ろう様…」
―え?小十郎様…?
私は自分の呟いた声に目が覚めた。小十郎、と言えば先生の名前だ。片倉、小十郎。やはり、彼が私の夢の中に出てきた人だったのだ。何故、先生が…。―夢は記憶を整理している場所だと言ったのは誰であったか―
私はここで一つの仮定を起てた。あの夢は、ずっと昔の、前世の記憶ではないのだろうか。ならばあの不思議な懐かしさに納得が出来るのだ。
「小十郎、様……」
「なんだ。」
「うわあっ!!」
確かめるように呟いた声にまさか返事が来るとは。しかも、振り返るとそこには片倉先生がいた。もしかして、もしかしなくても。
「…聞いていらっしゃいましたか?」
「ああ。」
「げ…あ、あのこれはですね!!」
「放課後、準備室な。」
「へ?」
一言言い残した先生はそのまま教室を出ていった。隣の席の友人は何かやらかしたのか?と心配そうに尋ねてきたが私には全く思い当たる節がない。私は今から放課後までいつもより心拍数の高いまま授業を受けることになった。
そして、放課後。
深く息を吸い準備室のドアをノックすると、中から「入れ」と低い声が聞こえた。
「…失礼しまーす。」
「よく来たな、まあそこ座れ。」
はーい、とパイプ椅子に腰かけた。キィと古びた音がドキドキと鳴る心臓の音を消してくれればいいのに。
「何で呼び出されたかわかるよな。」
「……下の名前で呼んでしまい申し訳ありませんでした。」
私がそう言って頭を下げるとキョトンとした顔をされた。何か間違っていたのだろうか。でも、あのタイミングで呼び出されたのだから原因はこれだけであろう。他に思い浮かばない。
「……覚えてねえのか?」
「覚えてる、とは?」
「……先に言っておく。俺の頭は正常だ。」
はあ、と返して先生の話を促す。どんな話をされるのだろうか。
「前世の話だ。」
「え…」
何故だか知らないが先生の"前世"という単語は思っていたより私の中にきれいに収まり、頭の中がスッキリした。そうか、私の考えは合っていたんだな。
「……お会いしとうございました、小十郎様。」
気付くとそんな言葉が口から零れた。これが前世の私か。言葉遣いが今と違い面白い。
「そんな畏まらなくて大丈夫だ。」
そう言いながら私の頭を撫でる先生の手は優しく、笑った顔は夢で見たものと同じであった。私の表情も緩む。
「……お慕いしております。」
私は目を閉じて手の暖かさを享受した。まるでこれは、1000年越しの恋。なんて、ね。
巡り巡る物語
後から聞いた話によると、先生は私が入学したときから気付いていたらしい。だが、私が思い出していないことがわかった先生は思い出すまで待つことに決めたそうだ。そしてもし思い出さない場合はどうするのかと尋ねれば「高校卒業と同時に教えてやった。」そうで。私は驚いた。まさか先生が結婚までを考えていたとは思わなかったのだ。
とりあえず、残りの高校生活は楽しいものになるだろう。
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琴音ちゃんにプレゼンツ★
あんまりこじゅ出てなくてごめんね(´・ω・`)けいriの愛でカバーしといたから←