違和感。彼はこんなに弱かった? 気のせいに違いない。だけど確かに生じている違和感。止めておけと胸のサイレンが鳴り響いた。 踏み込むな、誰かが忠告する。始まりは小さなことだった。ただ頭が痛かった。 久しぶりにイギリスが会いに来た。彼にしては珍しくアポなしだ。特に問題はなかったけど、少し頭が痛かった。久しぶりに会ったイギリスは、早速食生活が乱れてる。最近金遣いが荒い。などと、そんな小言を言いはじめる始末。反論するのも面倒でアメリカは適当に相槌を打ってやり過ごそうとしていた為「はいはい」とやる気のない返事をしていた。それに苛立ちを覚えたのか。イギリスは不機嫌そうな声色で「聞いてんのか」と言った。それさえも「はいはい」で済ましたアメリカにイギリスの顔は歪められていた。内心、聞くわけないだろ。と確かに返事をしながら。 「…………ねぇ、君何で来たの」 普通に言ったつもりだった。だけど歪められたイギリスの顔を見る限り、アメリカの顔にも不機嫌さが表れてしまっていたのだろう。 「用が無いなら来ちゃいけねぇのか」 その小言さえなけりゃあ、いつでもどうぞ。なんて言えるはずがなく「別に」とだけ伝えた。 コーヒーでも飲もうかと腰を上げた時、胸がちくり、と痛んだ。 (俺はいつイギリスの背をこしてしまったんだ) 立ち上がったアメリカの背はイギリスを見下ろせるくらい、伸びていた。それが無償に、無償に寂しい気がした。 「君も何か飲むかい?」 「紅茶。コーヒーなんかいらねぇから」 間髪入れずにそう言われ、苛、とした。どこまでも我を通すイギリスに。自分を否定されている気がして。 分かってるよ。と言った顔は確かに引き攣っていただろう。 「はい、紅茶」 「……ああ」 ソファーに腰をかけて足を組むイギリスの前に紅茶をいれる。品定めするかのように紅茶に視線を注ぐイギリスに本日何度目かの苛、とした感情が芽生えた。 「いらないのかい?」 「……いるさ」 どんなに入れ方が下手でも、喉が渇いてちゃあ仕方ないからな いつもの皮肉を言われて、いつものことなのに、確かにアメリカは僅かな―意を覚えていた。 どうかしている。イギリスを――してしまおうなんて。 アメリカは頭を冷やす為に熱いコーヒーを一気に流し込んだ。 舌がじりじりと熱いが、それよりも頭が痛かった。 |