ナル誕 2010 【N+S+S+K】 | ナノ
夢から覚めたら抱きしめて

※現パロ,高校生



ふぁ〜と声にならない息をはきだして、口元に手をそえた。生理的に出てきた涙は微々たるもので、決して零れる程ではない。だが三回続けての欠伸だったならば、話は別だ。右目からポロッと雫がこぼれた。


「どんだけ眠たいんだよ、お前」


そう言って笑ったキバも、ナルトの欠伸が移ったのか同じように口元に手をそえていた。んあ〜眠い。涙で濡れた瞳をパタつかせながら、ナルトはもう一度だけ欠伸を繰り返した。





「遅ぇ」


ナルトとキバが屋上に着けば、不機嫌そうなサスケとぼーっと空を眺めてるシカマルの姿があった。
ナルトはサスケの抗議に対し、いやいや聞いてくれよ。と言葉を紡いだ。


「あんなに早く行ったのにさぁ、既に超並んでてさぁ。そしたらやっぱり焼きそばパンは売り切れ。俺ってば可哀相…慰めてもいいってばよ」


よく回る舌でそう言うナルトに、サスケはするか、とだけ答えた。


「つーかよぉ」


ふと口を開いたのはシカマルで、何となしに皆の視線がそちらに向く。シカマルは未だにに、座ったままの体制で両手をやや後ろに置きつつ空を見上げた状態のまま続けた。


「お前等授業中寝てっからチャイム鳴っても気付いてねぇじゃん。んで、ざわざわし始めてから起きるだろ?その時点で出遅れてんだよ」
「うぐ…っ…お、お前だって寝てんだろ?」
「俺は寝てねぇよ。ぼーっと空見てるだけ」
「あはっタチ悪ぃ」
「お前等一回真面目に授業を受けることを覚えろ」
「はははっ。いいんだよ。俺等ノートはサスケに写さして貰うから」
「俺は貸さねぇぞ」
「でたよツンデレ」
「うんうん。こんなこと言ってどうせ、今回きりだからな。とか言って貸してくれんだよなぁ。サスケちゃんはよぉ」


殺す、と言ったサスケにナルトとキバが制裁を受けている間、シカマルは現実逃避した空間に身を置いていた。

よっこらしょ、と爺くさいことを言いながら地面に腰かけたナルトは焼きそばパンの代わりに買ってきたメロンパンを食べはじめた。外側のクッキー生地で出来た部分がぼろぼろと下に落ちる。それを横目に嫌そうな顔をしながらもサスケは何も言わない。言ったところでどうしようもないことを理解しているからだ。

食べ終えたナルトは、手についたメロンパンのカスをぱん、ぱん、一定の音をたてて払った。メロンパンだけでは成長期の男子の空腹は満たせない。ナルトはうなだれるように床に転がった。


「腹減った!!」
「やかましい」


ナルトが次いで何か言おうと口を開いた時、間髪入れずナルトの元に何かが投げられた。しかも三人一斉に。


「……え……と」


手元を見下ろしたナルトは、状況が読めないらしく顔に手をそえた。
手元にあるのは、一つはおしるこの缶ジュース、一つはコンビニのおにぎり、一つは──買えなかった焼きそばパン。


「何…ですかね、えと」


動揺を隠しきれないナルトがキバ、サスケ、シカマル、三人の顔を順番に見ていく。けらけらと笑ったのはキバで、次いでお前誕生日だろ。と言った。


「え、何で知って…」
「何でってお前水くせぇだろ。誕生日くらい教えろバカ」
「………」


だってそんなの、
ナルトは喉まででかかった言葉を飲み込んだ。小さい頃から友達が出来ず、ずっと一人だったナルトに出来た唯一の友達。いつもふざけあって、一緒に笑って、時には喧嘩だってした大事な友達。皆が友達で居てくれているから今の自分がある──とナルトは思っている。これ以上望むものがあるか?誕生日を祝って欲しくないなんて言ったら嘘になるが、もう十分なのだ。十分すぎるくらい色んなものをもらったのだ。それだけで満足だったから、誕生日が何時かなんて言う必要はないとナルトは思っていた。


「お前の為に焼きそばパン一つ置いといて貰えるように頼んで、面倒くせぇのに取りに行ってやったんだぜ」
「んで、俺がお前を引き付ける役!」
「口滑らすんじゃねぇかとハラハラしたがな」
「………」


それなのに、こいつらは、まだ俺に与えてくれるんだ。そう思ったら泣きそうになった。


「なんつー顔してんだ」
「遠慮してんのか?」
「貰えるもんは貰っとけ」


今更謙虚ぶったって無駄だぜ!なんて言われて、ナルトは泣き笑い声でるせえっと反論した。視線は彼等からのプレゼントに落として。だって彼等を見ると、うっかり涙を零してしまいそうだったから。


「誕生日おめでとう、ナルト」


三人同時に発せられた言葉がくすぐったくて心地好くて、どうしようもなく嬉しくて、それなのに泣きそうで。
ありがとう、と小さく言った言葉は彼等に届いているだろうか。







HAPPY BIRTHDAY
(嗚呼泣いてしまいそう)




#おまけ ナルサス要素あり


「これ……」


ナルトは言葉を途切らせ、薄い笑みを口元に浮かべた。目線の先には先貰ったコンビニのおにぎり。


「これ、サスケからだろ」
「……は?」


何で分かった、とでも言いたそうなサスケの瞳がナルトに向いた。
ナルトは呆れたように笑い、手のうちにあるおにぎりのラベルをサスケに見せた。


「…おかか、だってばよ」
「…ああ、おかかだな。おにぎりの中で一番上手い」
「お前が好きな具材ですよね〜」
「ん、ああ」


歯切れの悪い返事をしたサスケは、逃げるようにふいと視線を逸らした。


「見てみなさい、サスケ君」


そう言ってナルトは焼きそばパンを包んであったサランラップと空になったおしるこが入っていた空カンをサスケの視界に無理矢理入れた。


「おしるこに焼きそばパンは俺の好物。俺のこと考えてくれてるよな。でもこれはお前の好物。どゆこと?」
「何だよ……俺が自分の為にそれ買ったとでも言いてぇのか…」


むす、と彼にしては珍し拗ねた様子に幼さが感じられて不覚にも可愛いと思ってしまった。


「俺は……」


一旦言葉を切ったサスケは、鋭い瞳でナルトを見つめながら、もう一度俺は…と言葉を紡いだ。


「俺の美味しいと思うものをお前にも食べて欲しくて…」


そこまで言ったサスケは、いらねぇなら返せ!とナルトからおかかおにぎりを奪いとり、そっぽを向いてしまった。あーあ拗ねちまった、とナルトは可笑しそうに笑って、後ろからそっとサスケの頭を撫でた。


「ごめん、サスケ。ほんとは嬉しかった」
「……そ…か」
「なのに俺ってば照れ臭いからからかっちまったんだよ」
「……うん」
「お詫びに一緒におにぎり食おう?」
「…え、でも…」
「サスケが美味そうに食ってるの見るの好きだから、な?」
「……ふん…なら仕方ねぇな」


そろそろと振り返ったサスケは頬をほんのり紅色に染め、上目遣いにナルトを見詰めた。
ナルトはくすりと笑って、サスケの前髪をそっとかきあげた。


「なぁ、俺等いること分かってんのかね」
「誕生日だから。許してやろうぜ」
「こいつらの場合何時もだろうが」
「………まあ、な」


こいつら、今は無自覚だけどお互い気持ちに気づいたらどうなるんだろうか。と遠い目をした二人であった。




─PS.
焼きそばパン好きかは知りません。私んとこのナルトは好きってことでお願いします
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