It is pitiful.【N/忍/ナルサス+水月+α/完】 | ナノ
It is pitiful.



※大学生ナルト×高校生サスケ+水月+α
水月視点
こちらと設定同様









サスケは世間で俗に言うツンデレってやつだ。







「サースケッ」


登校中、見つけたツンツン頭に駆け寄って背後から抱き着く。走りながら抱き着いたから、飛びつくとも言うかもしれない。──何にせよ、急に僕から抱き着かれた(飛びつかれた)サスケは、急な衝撃に(決して僕が重いわけじゃない)前のめりになる。転ぶギリギリのところで踏ん張ったサスケは体勢を戻して、僕の手を払いのけた。何気痛かった。


「おはよー」


何事もなかったかのように笑顔で言えば、予想通りのサスケの不機嫌そうな顔が向けられる。あーあ、綺麗な顔が怖いことになってるよ。
そんなこと言った日には八つ裂きにされるから言わないし、これからも言うことはないけど。
僕は未だに笑顔をつくったまま、もう一度おはようと言葉を紡いだ。


「……テメェ、いっつも飛びついてくんなっつってんだろ」
「ああ。飛びつくなんだ」
「…は?」
「いや、こっちの話」


不可思議そうなサスケの表情も無視して、早く行こうよ、遅刻するよ。と急かせばまた睨まれた。


「朝から目疲れない?そんなに睨んで」
「……誰のせいだ」
「え、僕?」


呆れたように息を吐いたサスケは、僕と登校する気もないかのようにスタスタと先に行ってしまう。
それもいつものことだから気にせず小走りで追いかける。
横に並んで歩いても、サスケは何も言わないのだから、それはつまり一緒に登校してもいいってことで。それから学校まで一方的に僕が話かけて、サスケが時々相槌を打ち、時々沈黙。それも居心地がわるいものじゃない、むしろ心地好い沈黙。少なくとも僕は。これが僕等のいつもの朝。





「おはよー!」


ふぃ、と一息ついて中身空っぽの鞄を机に置く。隣の席のガタイのでかい(正直学生に見えない)重吾は、口元を綻ばしておはよう、とこたえてくれた。
一方、前の席の長髪で赤毛の女──カリンは僕が席に座るなりチッと心地好いほどハッキリと聞こえる舌打ちをしてくれた。アハハー、ムカツクー。


「くたばれカリン」
「テメェがくたばりやがれ」


ちなみに今のが朝のあいさつ。おはよう、の代わりにカリンに暴言を吐くのが僕の日課となっている。


「サスケェ、おはよう」


先まで僕に向けていた憎たらしい表情と変わって、カリンは表情を幾分か柔らかく、それでもどこか緊張しているような笑みを浮かべてサスケに声をかけた。
僕と重吾もカリンにつられるように、後ろの席のサスケに目をくばると、サスケは鞄から教科書やら筆箱やらを出していたところらしく、素っ気なくああ、と答えた。
まあ、この素っ気ない返事も慣れたもので気にする者は誰一人いない。


「今日一限目なにー?」
「あー…科学…?」
「げっ…死ねる」
「なら死ね」
「君が死ね」
「いやお前が死ね」
「…朝からうるせぇ」
「まあまあ。二人共落ち着いて」
「だってカリンが!」「だって水月が!」
「「むっ!」」
「ほんと仲良いなお前等」
「「よくない!」」
「だからうっせぇ……」


カリンとの取っ組み合いが始まる前に重吾に止められた。
サスケは相変わらず頬杖ついて窓の外を見てたけど。





「んーっ。やっと終わった」


腕を上に向かって力いっぱい伸ばす。漏れる溜息も仕方のないのことで。一日授業を頑張った(僕なりに)のだから、溜息くらいついても怒られないだろう。


「つっかれたー」
「…ずっと寝てた奴がよく言うぜ」


机に突っ伏した時、上から降ってきた声に思わず顔をあげた。
見上げるとそこには僕を見下ろすサスケが口元に不敵な笑みを浮かべていた。
僕は苦笑混じりに、えー気付いてたあ?と眉をさげた。


「嫌でも目に入るからな」


サスケが楽しそうに目を細める。そんなさりげない表情が嬉しくて、僕も思わず笑顔になる。


「そりゃそうだね。サスケは僕の席の後ろだもんね」


鞄を持って僕を見下ろすサスケは、多分一緒に帰ってくれるつもりなんだろう。
サスケは自分から一緒に帰ろうなんて言わないから、僕が察してあげないと一人で帰ってしまう。
だから僕は空っぽの鞄に筆箱だけいれて、立ち上がった。


「よし、帰ろっか」


ニッコリ笑うとサスケは無言で頷いた。あ、ちなみに重吾は生徒会で、カリンは女の子の友達と先に帰った。これはよくあることで、僕とサスケが二人で帰るのは珍しくない。──それから、適当にクラスメイトに挨拶をして、靴箱まで歩いてきた僕等だけど、学校の玄関を出た辺りで、急にサスケが立ち止まった。


「ん?」


どうしたの?と声をかける前に、サスケが走り出してしまった。伸ばした手は既に届かず、サスケの背中を見つめていると、ふと校門前に一つの車が止まっているのをみつける。
───ああ、なるほど。
サスケが走り出した理由を分かった時、溜息にも似た息が出た。

サスケが車まで走り寄ると、助手席の窓があく。

その拍子に運転手に座る──金色の髪に、青い目を持つ──男の姿があらわになる。彼は確か……うずまきナルト、という名だった気がする。何にせよ、初めて見る顔でもなく、校門の前でみつけたのも初めてじゃない。


「……ト!迎えにきてくれたのか?」
「ああ」
「そ、れならメールでもくれたら…俺もっと早く…」
「こっちに来たのに?」
「…!…うん。だってナルト待っただろ?」
「いや、それが全くなんだってばよ。ちょっとここらで用事があったから、ついでにサスケの学校寄ってみたんだけど、そしたらちょうどサスケが出てくるとこでさ。だから、な?俺待ってねぇってばよ」
「……うん」


僕が歩み寄れば少しずつ聞こえてくるサスケとナルト"さん"の声。何こいつ等、恥ずかしい。……なーんて思ったのは最初の内だけ。
サスケは僕が後ろにいることも気付かず、普段の彼からは想像がつかないくらいの甘く柔らかい声を出して、ナルトさんと何度か会話を交わしたあと、助手席に乗り込んだ。

閉まっていく助手席の窓を、無心で見つめていた。ナルトさんにサスケがお熱なのは分かっていることだし、別に一緒に帰れなくても構わない。──ただ、ただ何となく寂しい気がするのは、サスケが僕のことを無視ぶっこいてるからに決まってる。溜息一つ漏れた時、閉まったはずの助手席の窓が再び開いていくのに気付いた。
不思議に思って見ていたら現れたのはサスケの顔で。何だと瞬きをくり返せば、サスケが申し訳なさそうに眉をさげ、笑ってこちらを見ていた。


「明日、一緒に帰ろうな」
「…え?」
「また明日」
「サス……」


僕が返事をする前に、車はいってしまった。最後に見えたのは少し顔を赤くしたサスケ。明日一緒に帰ろうなんて、いつもなら絶対言わないくせに、今日の償いのつもりだろうか。また明日なんて…あんな顔して…ああもう!
嬉しくて、それだけの言葉が嬉しくて嬉しくて、誰もいなくなった道路を見ながら「また明日」とだけ呟いた。


サスケは世間で俗に言うツンデレってやつだ。

僕等に『ツン』を発動したあと、ナルトさんに余すことなく『デレ』を発動する。どっちが彼の本当なのかわからないけど。多分どっちもサスケなわけで。

ナルトさんに『デレ』を繋ぐために、僕(等)が『ツン』を受けているわけだけど、たまぁーにおすそ分けしてくれる『デレ』が堪らなく愛しいんだ。






─PS.

水月と周りが可哀相な話

つまりですね…
サスケのツンデレは一応健在ですよ!ってことでして。はい
自己満企画第二弾でした。
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