雨音の子守唄【N/忍/イタサス/完】 | ナノ
雨音の子守唄


ザァザァと騒がしい演奏を奏でる雨に、無意識にも溜息がでてしまう。

これだと濡れるなあ

などと当たり前のことを考えながら。





イタチは失敗したと内心毒づいた。天気予報とはアテにならないな、と苦笑をも零れた。

『今日は一日中晴れマークです』

などと、朝の癒しである(と言われている)お天気お姉さんが言っていたのにも関わらず、今は見事に雨模様。お天気お姉さんは全く悪くないのかもしれないが、多少あの笑顔を恨めしく思った。

ホームルーム時はまだ曇り空なだけだった。だがそのあと手伝って欲しいと担任に頼まれたイタチは、思わぬ時間ロスをくってしまい、そうこうしている内に雨が降り出してしまった始末だ。
どうしたもんかと思考をめぐらせてはみたものの、良い案は見つからず靴箱から一歩も動けない現状だ。

しばらく止みそうにない雨と睨みっこしていた時、イタチは校門前に見知った人影を見つけた。思わず目を見開いたイタチは、無意識に叫んでいた。


「サスケ…っ!」


イタチの声に気付いたサスケは、先程まで不安で仕方なかったという表情を一変させると嬉しそうに笑うと、とてとてとイタチの方へと走ってきた。
きちんと着ている水色とも呼べる青いレインコートに、彼にぴったりなサイズの小さな傘をさして、満面の笑みで近付いてくるサスケにイタチもたまらず走り出す。この際濡れるのなんてどうだって良かった。下校中の生徒の視線が飛び交う中でも、イタチとサスケの瞳には互いの姿しかうつっていなかった。


「どうしたんだ、サスケ」


サスケを心配そうに見下ろすイタチに、途端にサスケはあわあわと焦ったようにあわてだす。


「に、兄さん!ぬれちゃうよ!」


ぐいぐいと兄のズボンの服のすそを引っ張るサスケは、精一杯腕を伸ばして自身が持っていた傘を差し出す。
イタチはきょとん、とした様子でサスケを見るが、すぐにサスケの意図を察したようでその傘を受けとった。それから、きちんとサスケに雨の雫があたらないようなところで傘を持った。多少自分が濡れるのは小さい傘だから仕方ない。


「迎えに来てくれたのか?」


雨の音で掻き消されないように少々声を荒げて言う。サスケは素直に大きく首を上下に振った。

何で傘一つなんだ。とは聞かずともわかる。最近忙しくて一緒にいてやれることがなかったから、少しでも傍にいたかった、とかそういうことだろう。

そうか、ありがとう。
イタチがそう伝えれば照れ臭そうにサスケが頬を染めた。それが可愛くて、イタチはサスケの髪をくしゃくしゃと撫でた。


「わ、兄さん!」


甲高い声が響く。
サスケは慌てた様子で周りを見渡した。サスケは自身がもう子供じゃないと自負しているのだから、子供扱いを受けてる様子を他人に見られたくなかったのだ。それでも兄に撫でられたいしと、幼いながらに能内では激しいバトルが繰り広げられていた。
そして周りを見渡したサスケだったが、案の定下校中の者の視線が二人だけにそそがれていた。
きゃあきゃあと黄色い声をあげる女子が大半だった。

イタチは表面上の付き合いはうまく、常日頃から他人には笑顔を向けていた。だがそれも所詮作られたもの。
なのに今の彼は、見たこともないような綺麗な笑みを浮かべていると誰もが驚いていた。

あれが噂の弟君?可愛いなあ。
などと声も聞こえてくる。それにサスケはなんだかいたたまれなくなって、むぎゅ、とイタチの足にしがみついた。

イタチは動じることなく、優しい笑みを浮かべたままサスケを見下ろした。


「……抱っこ」


かろうじて聞こえた小さな声に、可愛くて可愛くてイタチは返事をする前に片手でサスケを抱き上げた。その炊き上げる際も彼が雨に濡れないように細心の注意を払って。

サスケは甘えるようにイタチの首に手を回し、肩に顔を埋めていた。
頭撫でてやりたい衝動にかられるが、片手には鞄と傘、もう片方の手には愛しい弟、と生憎にも両手はふさがっていた。

なのでイタチは、頬をサスケの頭に擦り付けるように、まるで甘える猫のように頬を寄せた。それにぴく、と反応したサスケは、更に力を加えてイタチにしがみついた。

イタチの足音は一定のもので心地好く、雨音だって心地好いBGMになる。幸せな音に耳を傾けながら、サスケはその瞼をそっと閉じた。
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