小説本文 | ナノ









あっついなあ。と、誰もが口煩く騒ぐので、「ジュースでも飲んで涼もうぜ」と言い出したのは誰だったか。
150円のジュースを一人それぞれ買うよりも、1.5Lのカルピスを四人で割り勘する方が得なのではないかということで、1.5Lで197円のカルピスをスーパーに立ち寄り購入した。197円だから一人あたり20円だな。とはにかむキバに冷たい視線を送って。
此処で起きた問題はコップがないこと。ラッパ飲みと云われる、所謂回し飲みはむさ苦しいので満場一致で却下された。さて、どうするか。手の甲や、よれよれのTシャツの裾でそれぞれ汗を拭いやって、顔を見合わせた。容赦なく降り注ぐ太陽の光が、後頭部を熱くさせる。すっかり一同の服の裾は、色が変わっていた。
「じゃー、俺の家に来る?」
しぶしぶといった風に提案したのは、ナルトだった。一斉にナルトに視線が集まる中、一同が思ったのは、クーラーねぇじゃん。ということであった。
移動中、日の光からジュースを守るべく、腕にぎゅっとジュースを抱き込むサスケの頭には、自身の体温がジュースを温めていることなど毛頭なかった。

「ただいま」
「「「おじゃましまーす」」」
返事が無いことは百も承知。靴を脱ぎ散らかす者もいれば、靴をきちんとそろえる者もいた。どたどたと決して新しくない家の中を走り、どしんと勢いよく座るナルト。
「あっ、おいナルト!占領すんなよっ」
「だって俺ん家のだもーん」
「ばっか!なんでもオキャクサマからに決まってんだろ」
取り合うは、風。扇風機の前で取っ組み合いを始めるキバとナルトの二人を視界に入れることもなく、シカマルは床に落ちていた二つの団扇を拾い上げ、一つをサスケに渡した。
「あぁ、悪い」
胡座をかいてシカマルの隣に座ったサスケは、汗でべったりと張り付いた前髪を鬱陶しそうに掻き上げた。その横で、無駄な揚力を使ったキバとナルトは、息を乱しながらぐったりと横たわっていた。

からん。
コップに入るだけいっぱいの氷が入れられ、テーブルの上に置かれた。一同が見守る中、先程手を洗ってこいと叱られ、きちんと石鹸で洗い終えたナルトがコップへとカルピスを注ぐ。
「おら、飲め」
家とコップと氷を提供した者の態度は大きい。顎で飲むように指し示せば、いただきます。と手を合わせたサスケがコップに口づけた。シカマルも扇ぐ手を止め、いざ冷えたコップに触れようとした時「待った」とキバによる制止の声がかかった。
「…?」
何事かと顔をあげれば、声を発した主の視線はシカマルでなく、ナルトの方に向いていた。関係ないと分かった途端、コップの表面につく水滴に手を濡らした。
「なんだってばよ?」
ナルトも今に飲もうとしていた所のようで、コップと唇との距離は近い。それを再び遠退けて、テーブルの上に起き直した。
「お前のコップ貸せ」
有無を言わせないキバの表情に、思わずごくりと唾を飲むナルト。
「なんで」
すっと懐にコップを隠すように手前に引いた。キバは表情を変えることなく、「いいから貸せ」とテーブルを指先でトントンと叩いた。
「…じゃあ、ちょっとの間だけだからな」
拗ねたように口元を尖らせ、そろりそろりとコップを差し出す。キバは無言でそれを受け取れば、自身に用意されたコップにくっつけるようにそれを並べた。それを見たナルトの表情が僅かであるが、ぎくりと引き攣った。
「なにして…」
「あああああああ!!!」
突然、大声を上げたキバに、内心ビクっとした一同であるが、顔には出さなかった。小さな男のプライドだ。
「なに?もういいだろ。俺ってば飲むから…」
「待て待て待て」
この状況を打開すべく、早々にカルピスを飲んでしまい逃げようとするナルトであったが、それも虚しくキバに阻止された。
「なあ、ナルト。おい、ナルト」
「な、なに」
「お前さ、明らかに、このジュースの分配の仕方、おかしいよな?」
にっこり、正にその表現がぴったりくる笑顔を浮かべるキバ。指摘された通り、ナルトとキバ含む三人のジュースの分量は、横に並べてみて差5センチはあった。図星です。と言わんばかりに、だらだらと夏の暑さの所為だけでない汗がナルトの頬を伝う。一方、涼しげな顔で、扇風機の前で互いのコップにカルピスのおかわりを注ぎ合いつつ、談笑をするサスケとシカマルが居た。
「いや、だってだって俺ってばさ、家とコップと氷提供してるわけだし、これくらい…」
「40円」
「え?」
「お前40円しか払ってねぇだろ」
そうである。197円を四人で割り勘すれば、一人辺りおおよそ49円。しかし、ナルトは今日は40円しか持ってないと言った為、残り三人で52円、52円、53円を支払ったのであった。
「分かるか?お前の家とコップと氷提供しました作戦は、金を支払った時点で終了してんだよ」
にやりと笑ったキバに、がくんとテーブルに伏したナルト。ナルトの完敗であった。キバは上機嫌に鼻歌を口ずさみながら、ナルトのコップからキバのコップへとカルピスを少量移した。
「では、いっただきます」
「…いただきます」
念願の冷たいカルピスだ。ナルトもテンションは低いもの、段々と期待は膨らんでいく。二人は、ごくん、と喉を鳴らし冷えたカルピスを流し込んだ。
「………」
「………」
「薄」
「え、薄いこれ。なにこれ薄い」
「あー!氷溶けてんじゃん!ナルトが馬鹿みたいに入れた氷溶けてんじゃん!」
「そして妙にぬるい!」
うすい、ぬるいと騒ぎ出す二人に、おかわりという術はない。
「あ、カルピスなくなった」
「べっつにいいだろ」
「いっか。つーかあっつい。かき氷食いたい」
「えーめんどくせぇ」
「お前そればっか」
「サスケ俺の分も買って来て」
「むーり」
カルピスを飲み干したサスケとシカマルが呑気な会話を交わす中、蝉に対抗するかのように叫び声が響いた。


「あっ!カルピス無くなってる!」
「あー悪い全部飲んだ」
「はあ!?これ俺ら四人で分けるんだろ!?」
「かき氷買いに行ってきまーす」



―PS.
現パロ…なのかな?←
年は小4くらいです。
遅くなりました。
こんなので良ければ、お持ち帰り下さいませ。
リクして下さり、ありがとうございました。
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