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「・・・離してよぉ。仕事しに部屋に戻るんだからぁ」

「何があった」

「何にもないよぉ。伊織ちゃんは愛されたい年頃なんですー」


狼に言いたくなかった。言えなかった。
自分が嫌われているんだというマリモの言葉が真実なのか否かを聞くのが怖かった。

俺は狼に顔が見られてないのを良いことに、平然とした口調で答えていた。


「伊織」

「もう、ほんとになんにもないの。狼は心配しすぎぃ」

「好きだ」


狼の顔を見ることをせず、俯いたまま狼から離れると、いきなり狼が俺に向けてそう言った。

それはいつもの挨拶のような軽いものではなく真剣そのもので、俺は思わず顔をあげてしまった。


「伊織、好きだ。愛してる」

「っ、・・・なにぃ?いきなり告白とか俺照れちゃうよぉ」


我ながら最低だとは思うが、狼が真剣なのがひしひしと伝わってきて、泣くのを堪えるのにはそう言うことしかできなかった。


「誤魔化すな。ちゃんと聞け」

「・・・やだ、」

「伊織」

「やだっ、・・・」

「好きだ」

「っ、やだってばぁ・・・」

「愛してる」

「ふっ、う・・・ろう、のばかぁっ、」



堪えきれず泣き出してしまった俺を狼は壊れ物を扱うかのように抱き締めた。


「俺のモンになれよ。俺はお前のこと裏切らねェから」

「っ・・・、」


首を立てに振ることができないのは狼が嫌いだからとかじゃなくて、ただ怖いだけ。
今の関係を崩すのが怖い。付き合ってしまえばいつか終わりが来るもので、終わりが来るのが怖い。



 


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