26
「狼」
生徒会室を出たその足取りのまま、俺は狼の部屋に来ていた。
突然やって来た俺に狼も蓮も驚いたような顔をしていた。
「どうした、伊織」
「・・・狼、俺のこと好き?」
「は?伊織、マジで何かあったのか?」
不思議そうに訪ねてくる狼に俺は近寄ると、いつもは絶対しないが、自分から狼に抱きついてそう問いかけた。
もちろん、狼も蓮も訝しげに俺を見ている。
「いいから答えてよぉ。俺のこと好き?」
「・・・当たり前だろ」
「じゃあ、抱いて?」
「・・・は?お前自分が何言ってんのかわかってんのか?」
「わかってるよぉ・・・ね、狼。シよ?」
俺の誘いに狼は一切答えず、眉間に寄っているシワをさらに深くして俺を力強く抱き締めた。
「そんなお前とヤりたくねェよ」
「っ、あは、だよねぇ。ごめんごめん。さっきの嘘だからぁ・・・ちょっといたずらしたくてぇ」
狼が真剣な声色でそう言ったのを聞き、正気に戻った俺はいつもの笑みを貼り付けて狼から離れた。
「伊織」
「ほんとごめんねぇ。お邪魔しましたぁ」
「伊織!」
早く狼から離れようと立ち上がって部屋を出ようとしたが、そんな俺の願いは虚しく、狼に抱き止められてしまった。
[ 75/157 ]
[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
top