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「伊織、荒木が来るまでここから動くんじゃないよ」

「はぁい、」


しばらくの間そうしていると、アイの携帯に親衛隊の子たちからメールが来て、アイは苦い顔をしてから俺にそう言って走っていった。


「伊織ちゃーん」


アイが出ていってすぐにやって来たのはお目当ての人物ではなく、蓮だった。


「蓮、どうしたのー?狼は?」

「狼は今イライラしてるから頭冷やしてこいっておいて来たんだよ」

「ふぅん、」

「伊織ちゃん、狼じゃないと不満?」

「はっ、そ、そんなことないしぃ」


蓮が何とも意地の悪そうな顔で質問してきたが、焦った俺は蓮のそんな表情に気づくことができずに素で返した。
それを見た蓮がさらに楽しそうにしていたので思いっきり頭を叩いておいた。


「さて、伊織ちゃん。狼のとこ行く?」

「へ?」

「伊織ちゃんが狼に会いたいなら連れてってあげるよ?」


空き教室を出てしばらく歩いていると、唐突に蓮がそんな質問をしてきた。
どうやら、これは俺で遊んでいるわけではないらしい。


「行かないって言ったらぁ?」

「そしたら教室まで送っていくよ」

「・・・狼んとこ行く」

「ふはっ、了解」


蓮はどうやら俺の答えがわかっていたようで、よく考えると端から俺の教室の方へ向かっていなかった。



 


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