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「っ、・・・」
「伊織?どうかしたの?」
「もしかして気分でも悪いのか?」
食堂を出ていつもアイといる空き教室に来たが、俺は一言も何もしゃべれないでいた。
「っ、アイ・・・」
「・・・うん。なにもできないで悔しかったね」
「っあいぃ・・・、」
「逃げるの嫌だったのもわかってるよ・・・でも、あの状況ではこの判断が一番正しかったんだよ。ごめんね、伊織」
「・・・ごめ、んっ・・・」
俺がアイの名前を呼ぶと、アイは全てを察してくれているかのように俺を抱き締めてゆっくり子供に言い聞かせるようにそう言った。
「大丈夫、伊織の気持ちは僕が知っててあげるから」
「・・・弱くてごめん、っ」
「そんなの今さらでしょ。僕はそんな伊織が好きなんだよ」
それからしばらく、俺は自分より小さいアイの腕の中で静かに泣いていて、そのまま意識を手放した。
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