15

[side.榎並 伊織]


目が覚めると、知らない場所にいた。
そして、目の前には如何にも怖そうな男。
もちろん、俺の頭の中はパニック状態だ。


「おう、起きたか」

「・・・だれ、」


男は俺が目を覚ましたことに気がつくと、そう微笑んで俺の頭を撫でた。
その瞬間、俺は先程のことを思いだして男の手を払った。


「っ、てめぇ、俺に触んな!」

「ははっ、気持ち良さそうにヨガッてたくせに」

「うっ、うるさい!」


男はそんな俺の反応が面白いのか、ケタケタと笑っていた。


「・・・、」

「あ、オマエ名前は?」

「誰が教えるか」

「俺は荒木 狼(あらき ろう)だ」


俺が教えるものかとそっぽを向くと、男は自分の名を伝えてきた。こうなったら俺も言わないといけない雰囲気だ。


「・・・榎並 伊織」


俺がしぶしぶ名前を伝えると、荒木は驚いたような顔をしていた。


「オマエ、会計だったのかよ」

「はあっ!?気づいてなかったのかよ!」

「まあ、いい。伊織だな」


荒木はなぜか嬉しそうに俺の名前を言うと、俺の頭を撫でた。



 


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