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[side.榎並 伊織]
目が覚めると、知らない場所にいた。
そして、目の前には如何にも怖そうな男。
もちろん、俺の頭の中はパニック状態だ。
「おう、起きたか」
「・・・だれ、」
男は俺が目を覚ましたことに気がつくと、そう微笑んで俺の頭を撫でた。
その瞬間、俺は先程のことを思いだして男の手を払った。
「っ、てめぇ、俺に触んな!」
「ははっ、気持ち良さそうにヨガッてたくせに」
「うっ、うるさい!」
男はそんな俺の反応が面白いのか、ケタケタと笑っていた。
「・・・、」
「あ、オマエ名前は?」
「誰が教えるか」
「俺は荒木 狼(あらき ろう)だ」
俺が教えるものかとそっぽを向くと、男は自分の名を伝えてきた。こうなったら俺も言わないといけない雰囲気だ。
「・・・榎並 伊織」
俺がしぶしぶ名前を伝えると、荒木は驚いたような顔をしていた。
「オマエ、会計だったのかよ」
「はあっ!?気づいてなかったのかよ!」
「まあ、いい。伊織だな」
荒木はなぜか嬉しそうに俺の名前を言うと、俺の頭を撫でた。
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