prrr...prrr...


そろそろ寝ようかと電気を消して寝る準備に入った頃、俺の携帯がベッドの横にあるローテーブルの上で震えた。


「狼、離してよぉ」

「ほっとけ」

「アイからだったら怒られるんだけどぉ...」


俺がアイの名前を出してそう言うと、狼はあっさりと手を離してくれた。

狼ってばどんだけアイのこと怖いのさ...

それは口に出さずに心の中だけで思うことにして、俺は携帯を取って耳にあてた。


「もしもしぃ?」

『いおちゃん!......かなちゃん、いおちゃんおでんわでた!』


携帯の向こうから聞こえてくるのは可愛らしい女の子の嬉しそうな声。
俺はその声を聞いた瞬間に自然と頬が緩んだのがわかった。


「ひなちゃん、こんばんはぁ。どうしたのぉ?」


俺がひなちゃんの名前を呼んだ瞬間、後ろにいる狼がピクリと反応したのがわかったが無視だ。


『あのね、ひないおちゃんとおでかけしたいの!』

「お出かけぇ?どこ行くの?」

『おかいものして、ごはんたべるの!』

「ふふっ...デートだねぇ」

『でーとお?』


ひなちゃんはデートと言う言葉を聞いたことがないのか不思議そうな声でそう言った。


「いいよぉ。じゃあ、奏くんに代わってくれる?」

『うん!...かなちゃん、いおちゃんかわってって!』


今電話の向こうではひなちゃんが携帯を奏くんに渡しているのだろう。きっと奏くんは戸惑っているはずだ


「伊織」

「わっ...なぁに、狼」

「誰だ」

「ひなちゃんと奏くんだよぉ。あとでちゃんと説明するから待ってて」


俺がそう言うと狼は何も言わずに俺を後ろから抱きしめた。
納得はしていないが俺の話をちゃんと聞いてくれるということなのだろう

俺はもう一度携帯を耳にあてた。



 


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