***



「...ん、...」


目が覚めると知らない部屋のベッドで寝かされていた。


「.....ねむいぃ...」


寝起きで頭が回らず、俺はもう一度ベッドに身を倒した。
その瞬間、ふんわりと香ったの嗅ぎ覚えのある匂いだった。


「...伊織、起きたのか」


その匂いに自然と頬を緩ませていると、今まさに頭のなかに浮かんでいた人物が部屋に入ってきた。


「ろー、おはよぉ」

「阿呆か。もう夜だ」

「嘘ぉ。俺、寝すぎぃ」

「飯食うだろ。行くぞ」

「おわっ...!自分で歩けるからぁ」


狼は俺のいたベッドに近づいてくると軽々と俺を抱き上げて部屋を出た。
部屋を出ると長い廊下が続いていて、狼は俺を担いだまま廊下を歩いている。


「狼の家広いんだねぇ」

「ああ」

「いっぱいおいかけっこできるねぇ」

「ククッ...そんな発想すんのオマエぐれェだ」

「えー、そんなことないと思うけどなぁ」

「オマエぐれェだよ。...ほら、着いたぞ」


やっと狼に下ろされた場所は大きな襖の前。
俺はそこを開けていいのかわからず、上にある狼の顔を伺った。


「何してんだ、早く入れ」

「はぁい」


狼にそう言われ、俺は今度は戸惑うことなく襖を開けた。



 


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