「ふふっ、かわいいー」


少し人が減ったこともあり、近くでイルカを見ていること数十分。
普通の人なら絶対飽きてるだろうけど、レイ兄はそんな俺を好きにさせてくれる。


「...レイ兄、ほんとは大事な仕事あるんじゃないのー?」


チラリと水槽からレイ兄に視線を移すと、レイ兄は今日何度目かわからないくらい携帯を開いて時間を見ていた。


「え?...いや、大丈夫。伊織ちゃんは気にしなくていいよ!」

「...気になるしぃ。俺はレイ兄がモデルの仕事好きなの知ってるよー?」

「...わかった」


俺がそう言うとレイ兄は一瞬俯いて、何か決めたように顔を上げた。


「仕事行くから伊織ちゃんもついてきて」

「...は?」

「伊織ちゃんが一緒じゃなきゃ行かない!」


...子供かこの人は。
こうなったレイ兄は意地でも俺を連れていこうとするだろう。
俺は仕方なく頷き、水族館を後にした。



 


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