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そんなこんなで夏休みは始まり、俺は一先ずアイとともに地元に帰ってきた。
「伊織、どうする?」
「...このままアイん家行くよー。家ん中埃だらけだろうしねぇ」
「じゃ、早く行くよ」
学園から乗ってきた車はアイの家の前で止まり、車を降りると普通からしたら大きな屋敷のような家が見える。これがアイの家だ。
そして、その隣にある小さな一戸建ての家が俺の家なんだけど、俺はそこを一瞬だけ見てアイの家に入った。
「ただいま」
「お邪魔しまぁす」
「伊織ちゃぁぁぁあん!!会いたかったよぉぉお!!!」
「うわっ...!」
大きな門を開けて、それから少し先に歩くとある大きな扉を開けると長い廊下の向こうから誰かが走ってきた。
アイのおかげで避けれたんだけど、その人は思いっきり玄関の扉に突っ込んだ。
「ううっ...痛い、」
「何してるの、黎兄さん」
「...酷いぞ、藍。せっかく伊織ちゃんと熱い抱擁を...!」
「うるさいよ。僕が変態を伊織に抱きつかせると思うの?」
「ううっ...」
この扉にぶつけた額を痛そうに押さえてアイによって毒舌を浴びせられているのは、アイの兄である浪川 黎さん。
「伊織くん、おかえり」
「...あ、類さん。ただいまぁ」
そんな二人を困ったように見ていると、家の奥からもう一人、大人な雰囲気を纏った男の人がやって来て俺を優しく撫でた。
この人はアイの兄で浪川家の長男の浪川 類さん。
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