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伊織はとにかく目立たなかった。顔は間違いなく綺麗なのだが、暗い印象がそれを打ち消していたのだろう。
それに、どちらかというと僕の方が目立っていたくらいだった。
「...伊織、いい加減にしなよ。このままでいいの?」
「だって...」
「いつまでもウジウジしてないの!ほら、こっち向いて!」
「わっ...!?藍、何するのっ?」
高校に入る前に、僕はさすがにこのままじゃダメだと思い伊織のイメチェンをした。 イメチェンといっても長く伸ばしていた髪を切って顔がはっきり見えるようにしただけ。
だが、それだけで伊織はしっかり人気を掴んだ。
そのおかげと、僕が推したのもあり、伊織は生徒会に入った。そこで会長と付き合うようになったことには驚いたが、伊織が少しでも変わるいい機会だと僕は喜んだ。
「伊織」
「あっ、かいちょー。どうしたのぉ?」
「疲れてんなら寝ろ。おい、親衛隊」
「はい、なんですか?」
「こいつ、部屋で寝かしとけ」
「えー、大丈夫だよー?」
「フラフラしてんだから大人しく寝とけ」
「...はぁい、」
もともと、少し緩い話し方だった伊織は会長と付き合うようになってからあの話し方になった。
あの頃の伊織は嬉しそうだったけど、何か物足りない顔をしていた。
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