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「...伊織、」
「アイ、謝んないでよ?あれは完璧に俺の不注意だったんだからぁ」
「でもっ...!」
アイが俺に謝ろうとしていることなんてすぐわかった。だから、俺はそれを遮った。
アイは納得いかないのか、あの後悔したような悲しそうな顔で俯いている。
「アイ、ありがとう。俺大丈夫だよ、ね?」
「...ちょっとくらい僕に頼ること覚えてよ」
「頼ってるよ?むしろ俺アイに頼りすぎなんだけどなぁ...」
俯いているアイの顔を覗き込むと、アイはいつもの調子でそう言ってきた。
...ほんと、いつかアイには恩返ししなきゃいけないかも。
「...もういいか?こいつ連れてくぞ」
「え?...うわっ、ちょ、狼!」
ほんわかしたムードをぶち壊したのはなにやら機嫌の悪い狼だった。
狼は俺をここに連れてきたときのように姫抱っこすると部屋を出た。
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