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「・・・狼、あの人・・・五十嵐先輩だっけ?知ってるのぉ?」
俺が狼にそう聞くと、狼だけでなくそれを聞いていたらしい頼や楠木くんが驚いたような顔をしていた。
アイは何故か呆れ顔。
「いお、ほんとに知らないのっ?」
「え、うん・・・会ったことあるっけぇ?」
「会ったことなくても有名だよっ?」
「えー・・・うぅん?」
知らないものは知らない。有名って言われてもピンと来ないしなぁ・・・
「仕方ないですよ。榎並様は基本的に人に無頓着ですから。生徒会に入るまで会長様方のことも知らなかったですし、そこにいる荒木くんのことも出会うまで全く知りませんでしたからね」
「確かに・・・伊織、俺のことを知らなかったな」
「人の顔と名前覚えるの苦手なんだよぉ・・・」
親衛隊口調のアイの言葉を聞いたみんなは納得したように俺を見ていた。
なんか、みんな失礼じゃなぁい?
「俺は知っとったけどなぁ。生徒会会計の榎並伊織チャン?」
「あはっ、嬉しいですー」
「てめェ、伊織に触んな」
五十嵐先輩が俺に近づいてきて手のひらにキスをしようとした瞬間、狼がそれを阻止して俺を五十嵐先輩から離した。
「あらま、伊織チャンはもう彼氏おるんかいなぁ」
「伊織は俺のだ近寄んな」
何故か俺を挟んで睨みあいをしている二人。ほんとやめていただきたい。てか、俺狼のじゃないし。
「・・・まァ、俺諦めのとか嫌いやから覚悟しててや」
五十嵐先輩はふっと笑ってそう言うとその場を去っていった。楠木くんは慌てたようにそのあとを追っていった。
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