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それから、庵兄と章太郎さんもスーツに着替え、俺たちはパーティー会場に向かった。
「めぐみ、父さんに挨拶してきなよ」
会場に入ると庵兄は、会場の中にいるくそ親父を指差してそう言った。
「行きたくない」
「後からどやされるより今行った方がいいだろ」
「・・・わかったよ」
章太郎さんにも言われ、おれはしぶしぶくそ親父のもとにむかった。
「・・・父様」
「めぐみか。なんだ」
「お久しぶりです」
「・・・ああ。今日はあの変な格好してないようだな。その調子で花家の自覚を持って行動しなさい」
「・・・わかりました」
くそ親父め・・・会うたびに小言を言ってくるこの親父が俺は大嫌いだ。
俺は適当に話をきりあげて、壁際にもたれ掛かった。
庵兄たちを探すと、昔からの知り合いの人たちといるようだった。
「なぁに、しけた面してんだよ」
「・・・充!」
声をかけられてその方向を見ると、片手に料理を持った充が立っていた。
「食わねぇのか?お前の好きな和食もあんぞ」
「気分じゃない」
「んなこと言わずに食っとけよ」
「んむ・・・美味しい」
充は俺の口に無理矢理料理を突っ込み、俺がそう言うと満足そうに笑った。
「で?ここにそのみーくんとやらは来てねぇのか?」
「・・・さあ?来てても俺がこの格好じゃ気づかないんじゃない?」
「いつもの自信はどうした?今日のお前おかしいぞ?」
充は心配そうにそう言うと、俺の頭をポンポンと優しく撫でた。
たぶん、こんな格好をして親父に会ったから気が滅入っているのだろう。
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